この記事は2022年09月21日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「低年齢層ほどテレワークで生産性が向上したと感じた傾向-テレワークで生産性が上がった人/下がった人(2)-」を一部編集し、転載したものです。
はじめに
本稿を含めて全8回の基礎研レターでは、ニッセイ基礎研究所が独自に行ったアンケート調査のデータを用いて、テレワーク拡大によってどのような人は生産性が向上したと感じ、どのような人は生産性が低下したと感じたのかを分析した結果を紹介していく。本稿ではそのうち、年齢層よる違いに注目した分析結果を紹介する。結果を先取りしてお伝えすれば、低年齢層ほど、テレワークによって生産性が向上したと感じた人が多い傾向が見られた。
低年齢層ほど、テレワークによって生産性が向上したと感じた人は多い傾向
日本で新型コロナ拡大が始まって以降(2020年1月以降)テレワークを行った人へ、「在宅勤務・テレワークで仕事をする時、勤め先に出社して仕事をする場合と比べて、仕事の生産性をどう感じましたか。」という質問をした際の回答の年齢層別の分布を示したのが図1、さらに男女別に示したのが図2である(*1)。
図1からは、「生産性が向上した」もしくは「生産性がやや向上した」と回答した人の割合は、20代以下で最も大きく、50代以上で最も小さくなっている。図2で男女別に見た場合も、同様の傾向が見られる。この図からは、年齢層が低いほど、テレワークによって生産性が上がったと感じた人の割合が大きい傾向が示唆される。
*1:ニッセイ基礎研究所が実施した独自の被用者を対象とした調査の回答者計5,653名のうち、本質問の対象者となる、日本で新型コロナ拡大が始まって以降(2020年1月以降)一番テレワークを利用した時期に、月1回以上のテレワークを行ったと回答した人は、1,985名。
本調査は、全国の18~64歳の被用者(公務員もしくは会社に雇用されている人)の男女を対象に、全国6地区、性別、年齢階層別(10歳ごと)の分布を、2020年の国勢調査の分布に合わせて収集した(株式会社クロス・マーケティングのモニター会員)。調査の概要は以下の基礎研レター参照。
岩﨑敬子(2022年9月13日)「会社員/公務員がテレワークによって感じた生産性の変化概況-テレワークで生産性が上がった人/下がった人(1)―」(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=72366?site=nli)
年収や管理職であるかどうかを考慮しても、年齢層が低い人の方がテレワークによって生産性が高まった人が多い
低年齢層と高年齢層で、テレワークによる生産性の感じ方が異なる理由として、年収の違いや、職種の違いが考えられる。特に高年齢層の方が管理職についている可能性が高く、管理職の場合は、テレワークによって生産性が高まったと感じにくいといった可能性が考えられる。そうした要因を考慮するため、年収別、管理職であるかどうか別に年齢層ごとの生産性の感じ方の分布を確認したのが、図3と、図4である。
図3からは、年収別にみても、年齢層が低いほどテレワークで「生産性が向上した」/「生産性がやや向上した」と感じた人の割合が大きいことが確認できる。特に、年収700万円以上の人の間でその傾向は顕著である。また、図4からは、管理職であるかどうかにかかわらず、低年齢層ほど、「生産性が向上した」/「生産性がやや向上した」と感じた人の割合が大きいことが確認できる。
おわりに
本稿では、ニッセイ基礎研究所の独自のデータを元に、新型コロナ拡大以降テレワークを行った人の間では、低年齢層ほど、テレワークによって生産性が上がったと感じた人の割合が大きい傾向を確認した結果を紹介した。
管理職とそうでない人を分けた分析でも、低年齢層の方が、生産性が上がったと感じた人の割合が大きかった。この要因については今後の検討課題であるが、低年齢層の方がテレワークで用いられるデジタル機器の利用に慣れているといったことが考えられるかもしれない。
会社の方針の決定に関わる人は、低年齢層ではなく高年齢層であることが多いことが予想される。本調査の分析結果からは、テレワークを会社全体の生産性を高めることにつなげていくためには、低年齢層から積極的なテレワーク活用アイディアを取り入れていくことが有効な可能性が示唆されるかもしれない。
岩﨑 敬子(いわさき けいこ)
ニッセイ基礎研究所 保険研究部 准主任研究員
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