不動産クラウドファンディングは人気の高い投資先ですが、契約にあたっては重要書類をしっかりと確認する必要があります。本記事では、不動産クラウドファンディングに投資する際に確認すべき書類について、チェックすべきポイントや注意点などと併せて解説します。
目次
不動産クラウドファンディングに投資する前に確認すべきこと
不動産クラウドファンディングに投資する前に、きちんと確認する必要があるのがファンドの概要と各種契約書類の内容です。
ファンドの概要
運用成績が安定している不動産クラウドファンディングですが、ファンドによって投資対象や運用期間、予定利回りなど諸条件が異なるので、ファンドの概要を把握し、自分が納得できる条件のファンドを選ぶことが大切です。
不動産クラウドファンディングのファンドを選択する際は、組まれているスキームも確認する必要があります。不動産クラウドファンディングでは投資家保護の仕組みとして後述する「優先劣後スキーム」や「マスターリース契約」を導入しているファンドが多くあります。
また、不動産クラウドファンディング事業者と投資家が直接匿名組合契約を結ぶスキームの他、不動産の保有のみを行うSPC(特別目的会社)を中間に立てて事業スキームを組むファンドもあるので、確認が必要です。
契約書類各種
不動産クラウドファンディングの契約において確認すべき契約書類は、以下の3つです。
・契約成立前書面
・電子取引に係る重要事項説明書
・匿名組合契約書
契約成立前書面や電子取引に係る重要事項説明書が目論見書の役割を果たすのに対し、匿名組合契約書は条文化された正式な契約書といえます。
では、重要な3つの書類を確認する際のポイントを見てみましょう。
契約成立前書面を確認する時のポイント
契約前書面には法律や政令に基づく基本的な記載事項や、ファンドが目指す事業計画などが記載されています。
基本的な記載事項
契約成立前書面については、金融庁が金商業等府令82条に基づいて、記載すべき事項を以下のように定めています。
・法定事項(商号等・住所、登録番号等、契約概要、手数料等、元本損失・元本超過損が生ずるおそれがある旨)
・内閣府令(契約締結前交付書面の内容を十分に読むべき旨、委託証拠金等の額・計算方法、元本損失・超過損が生ずるおそれがある場合における原因となる指標等・理由、租税の概要、契約終了事由の内容、クーリング・オフ規定の適用の有無・内容、業者の業務概要、顧客が業者に連絡する方法、加入している金融商品取引業協会の名称、対象事業者となっている認定投資者保護団体の名称)
出典:金融庁「6.金融商品取引業者等の行為規制
契約成立前書面を確認する際は、法律で定められている項目がきちんと記載されているかをチェックする必要があります。特に手数料や元本損失・元本超過損は分配金の額にも影響するため、重要なチェックポイントといえます。
また、内閣府令では委託証拠金等の額・計算方法やクーリング・オフの有無等も追加されているので、記載されているかチェックしましょう。
ファンド独自の情報
基本的な記載事項の他に、ファンドを運営する事業者の財務状況や事業計画、資金使途もチェックする必要があります。
運営事業者が破綻することは稀ですが、分配金に影響することもあるので、財務内容が健全な事業者が運用するファンドを選んだほうがよいでしょう。
事業計画では、どのような不動産を購入するのか、契約方法は匿名組合契約か任意組合契約か、契約の相手方以外に利害関係者がいないかなどをチェックします。
資金使途については、目的以外のことに使われないかをチェックする必要があります。投資資金は不動産の購入に使われるのか、物件のリフォームに使われるのか、金額は妥当かなどがチェックポイントです。
電子取引に係る重要事項説明書を確認する時のポイント
契約成立前書面に続いて確認するのが、重要事項説明書です。店頭契約と同じように、インターネット上で不動産クラウドファンディングの契約締結を行う際にも確認する重要書類です。
電子取引に係る重要事項説明書を確認する際はインターネット上で書面を開くため、確認済みのチェックを入れないと先に進めないようになっています。ある程度ボリュームがある書面だと「事業者だからきちんとしているはず」と思って読み飛ばしたくなりますが、最後までしっかり読んで納得した上でチェックを入れることが大切です。
ただし、この書面が交付されるのはインターネット上で案内、説明、取引まですべての工程が完結する場合のみで、オフラインで取引を行う対面募集の場合は交付されません。
電子取引に係る重要事項説明書については、国土交通省が公表している「重要事項説明実施マニュアル」で詳しく説明されています。
匿名組合契約書(契約締結時書面)を確認する時のポイント
投資家と不動産クラウドファンディング事業者が結ぶ契約には、「匿名組合契約」と「任意組合契約」があります。
匿名組合契約は、投資家と不動産クラウドファンディング事業者が1対1で結ぶ契約です。他の投資家とは相互に契約関係がないため、投資家同士の情報は共有されません。それが匿名組合と呼ばれる理由です。匿名組合契約のファンドで得た収益は「雑所得」となります。
一方の任意組合契約は、複数の投資家が出資して共同で事業を行う契約です。出資する組合員の立場が対等であるため、利益を平等に分配する代わりに、債務も連帯して返済義務を負うことになります。任意組合契約は、基本的に不動産クラウドファンディングのファンドにはなじまない形式です。任意組合契約の不動産クラウドファンディングで得た収益は「不動産所得」となります。
確認時の注意点
契約成立前書面や電子取引に係る重要事項説明書と異なり、匿名組合契約書はファンドに応募する段階では確認できないケースが多いので注意が必要です。
契約成立前書面や電子取引に係る重要事項説明書が投資信託における目論見書のようにファンドの条件や事業計画、投資対象などが詳しく書かれているのに対し、匿名組合契約書は「第1条#### #### 」のように条文化されているのが大きな特徴です。
契約成立前書面や電子取引に係る重要事項説明書に了承していることが前提であるため、ファンドの詳細などは原則として書かれていません。条文のみが淡々と続くので、疑問点や不明点があれば契約成立前書面や電子取引に係る重要事項説明書を読み返して、再確認することが大切です。
匿名組合契約書は契約締結時書面なので、3つの書類の中で最も慎重に確認しなければなりません。
クーリング・オフの起点日は契約時締結書面公布日
不動産クラウドファンディングでもクーリング・オフはできます。クーリング・オフは、契約しても8日以内なら申し込みの撤回や契約の取り消しができる制度です。クーリング・オフを行う場合、起点日となるのは契約時締結書面が交付された日です。
なお、クラウドファンディングの中でも、融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)や株式型クラウドファンディングは匿名組合契約であってもインターネットによる電子申込型のみクーリング・オフが可能とされています。
不動産クラウドファンディングは特定共同事業法の規制対象であるため、書面交付から8日以内なら無条件にクーリング・オフができる点で有利といえます。
3つの契約書を確認する際に注意すべきポイントを見てきましたが、書類を読み飛ばさないコツは印刷してから読むことです。インターネットの画面上で長文を読むのは、疲れるものです。不動産クラウドファンディングに関する書面を印刷してファイリングしておけば、再確認したい時に探しやすいでしょう。
書類をしっかり確認すれば不動産クラウドファンディングはリスクが低い投資先
不動産クラウドファンディングは優先劣後スキームによって損失が出た場合、劣後出資者であるクラウドファンディング事業者が出資枠を限度として損失を負担します。そのため、劣後出資の範囲を超える損失が出ない限り、優先出資者である投資家は損失を被りません。
また、サブリース事業者とクラウドファンディング事業者がマスターリース契約を結ぶことによって、サブリース事業者からクラウドファンディング事業者に支払われる家賃収入が保証されます。収益は分配金という形で優先出資者である投資家に優先して分配される仕組みになっているため、予定利回りのとおりに償還されるファンドがほとんどです。
損失は不動産クラウドファンディング事業者が優先して負担し、利益は投資家に優先して分配される不動産クラウドファンディングは、書類をしっかり確認して契約すればリスクの低い投資先として検討する価値があるでしょう。
※本記事は不動産クラウドファンディングへ投資する際に確認すべき書類について解説したものです。各書類の書式や記載内容は運営事業者によって異なりますので、参考程度にお考えください。
(提供:YANUSY)
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