東京都が2025年4月から新築一戸建てに太陽光発電パネル設置を義務化することを発表しました。設置が義務化されると一戸建てを建てる場合、どのような影響があるのでしょうか。太陽光発電設置義務化の疑問点や不動産市場への影響について考えます。

2025年から新築一戸建てに太陽光発電パネル設置が義務化

東京都の太陽光発電パネル設置義務化スタートが不動産市場に与える影響は?
(画像=oka/stock.adobe.com)

東京都の小池百合子都知事は2022年9月9日の記者会見で、2025年4月から新築一戸建てに太陽光発電パネルの設置を義務化する方針を発表しました。東京都では2030年までに温室効果ガスの排出量を半減させる「カーボンハーフ」の目標を掲げており、今回の太陽光発電パネル設置義務化も実現に向けた方策の1つとみられます。

東京都では太陽光発電パネル設置の義務化が実現すると、義務化の効果を含め都内の家庭から出る温室効果ガスの排出量を2030年時点で43%削減できるとしています。

東京都は新制度の円滑な実施に向け、2023年1月4日から新制度についての問い合わせや、下記内容に関する相談窓口を設置していますので、利用するとよいでしょう。

【相談受付内容】
・新築建築物制度及び支援策の概要
・太陽光発電に係る一般的な内容
・住宅の断熱・省エネや再エネ設備に係る各種補助制度 など

相談窓口:東京都地球温暖化防止活動推進センター(クール・ネット東京)
TEL 03-5990-5236(受付時間:平日9:00~17:00)

太陽光発電パネル設置義務化の対象は?

2022年12月15日、東京都議会本会議で太陽光発電パネル設置を義務化するための条例が成立しました。全国の自治体で初の成立となります。

太陽光発電パネルの設置義務は、具体的に誰が負うのか不安に思う人も多いでしょう。まず大きなポイントは、太陽光発電パネルの設置を義務付けられるのは施主ではなく住宅メーカーであることです。

ただし、すべての住宅メーカーが義務を負うわけではなく、対象になるのは都内で供給する住宅の延べ床面積が合計で年間2万平方メートル以上の大手住宅メーカーです。東京都は約50社が対象になると見込んでいます。棟数としては都内での年間新築棟数の半数程度の規模を想定しています。

対象となる住宅メーカーは施主に太陽光発電パネルの設置をお願いすることになりますが、施主に義務はないため設置を了承しないケースも考えられます。また、日照条件が悪い理由で設置できない場合もあるでしょう。したがって、再エネ設置基準は年間の総量に応じて事業者ごとに達成基準が定められています。

・再エネ設置基準の例(都内で供給する住宅が500棟ある住宅供給事業者の場合)
設置可能棟数500棟×算定基準率85%×棟当たり基準量2kW/棟=再エネ設置基準850kW

制度施行までの今後のスケジュールは、2022年12月に条例案が可決・成立してから2年間程度の準備・周知期間を設け、2025年4月から施行されます。

コスト増で住宅価格に影響は出るのか?

太陽光発電パネルの設置義務は住宅メーカーが負うとはいえ、太陽光発電パネルの設置コストが増えることで、住宅価格にも影響を与えることが懸念されます。太陽光発電パネルの設置費用は東京都環境局によると4kWのパネルで98万円程度かかります。加えて、太陽光発電パネルは20~30年程度の寿命といわれているので、ローン返済中に交換で追加投資が必要になる場合があります。

現時点では、太陽光発電パネルの設置で住宅価格がどの程度上がるのかは未知数です。注文住宅の場合は建築費の見積もりを出すので、太陽光発電パネル設置のコストが明記される可能性があります。しかし、建売住宅の場合は完成された住宅が売り出されるので、コストがどの程度販売価格に転嫁されたのか不明ということも考えられます。

一方で設置コストはかかるものの、太陽光発電パネルによる発電で、ある程度電気料金を抑えられるので、大きな負担にはならないという見方もあります。東京都環境局ではコストの回収にかかる期間を4kWのパネルで6年程度(現行の補助金を活用した場合)と見込んでいます。コストを回収できる可能性は高いでしょう。

売電収入の確定申告はどうなる?

太陽光で発電した電気を電力会社に買取ってもらった場合、売電収入は条件によって確定申告が必要です。事業ではなく家庭で電力を売電した場合の収入は「雑所得」になります。雑所得は売電収入と他の雑所得を合わせて年間20万円を超える場合は確定申告が必要です。

例えば、売電収入による雑所得が15万円のケースで他に雑所得がない場合、確定申告は不要ですが、他の雑所得が6万円あり、雑所得の合計が21万円の場合は確定申告が必要になります。

ただし、雑所得は売電収入からランニングコストを差し引いて計算しますので、売電収入が20万円以上あってもランニングコストを引いて20万円以下になれば確定申告が不要になるケースがあります。

また、発電容量が10kw未満の場合は、自家消費した後の余剰電力しか売電できないため、固定価格買取制度(FIT制度)による買取価格で計算すると20万円以上の所得になる可能性は低く、確定申告する必要はないケースがほとんどです。

一方で、個人であってもフリーランスや個人事業主、年収2,000万円以上のサラリーマン、不動産所得がある人などは雑収入に加算しなければならないケースがあります。

太陽光発電パネル設置義務化が不動産市場に与える影響は?

現状では太陽光発電パネル設置による不動産市場への影響はあまりないとみられています。前述したように設置義務があるのは一部の大手住宅メーカーのみのため、対象が限定されているからです。さらに東京都による補助金などの支援策で負担はそれほど大きくならないと考えられます。

影響があるとするならば、一戸建てを新築することで太陽光発電システムの管理や売電収入を確定申告することが煩わしいと感じる人の一部が、マンションの購入にシフトする可能性があるくらいです。

分譲マンションであれば管理組合があるので、太陽光発電パネルで発電して得た電気を共用部の電気代に充て、区分所有オーナーが支払う共益費が抑えられるメリットがあります。売電収入があった場合は管理組合の収益事業となり、管理組合が確定申告を行うことになります。

管理や確定申告の手間を考えると新築一戸建てより新築分譲マンションを選ぶ人が増える可能性はあります。

太陽光発電が当たり前の時代は来るか?

小池百合子東京都知事が記者会見のなかで、「屋根が発電するのが当たり前の機運を醸成したい」と語りましたが、地球温暖化防止に協力するためにも今後一戸建て・マンション・オフィス・商業施設などあらゆる建物に太陽光発電パネルを設置する時代が来ることが予想されます。

2021年6月からは、先行して国や自治体の公共施設への太陽光発電パネルの設置義務化が始まっています。また、商業施設では流通最大手イオングループが、再生可能エネルギーを利用して電気とガスの両方でCO2排出量を実質ゼロにする「イオンモール川口」を開業するなど、社会全体が再生可能エネルギーへの転換に傾いています。

マンションオーナーも、今後太陽光発電への取り組みは避けて通れない課題となりそうです。土地活用でこれから一棟マンションを建築する計画のあるオーナーは、太陽光発電パネル設置について、開発と販売を兼ねた総合不動産会社に相談してみるとよいでしょう。

※本記事は2023年1月15日現在の情報を基に構成しています。新制度に関する動きは流動的ですので、最新の情報は「クール・ネット東京」等の公式サイトでご確認ください。

(提供:Incomepress



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