本記事は、芳月健太郎氏の著書『時間デザイン』(同友館)の中から一部を抜粋・編集しています。

選択
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

時間の使い方が上手な人は「選択と集中」をしている

「成果をあげる秘訣を1つだけあげるならば、それは集中である。成果をあげる人は最も重要なことから始め、しかも1つのことに集中する」という名言をご存じですか? これは「マネジメント」という言葉を生み出した経営学者P.F.ドラッカーの言葉です。

現代のように次々と新しい情報やノウハウが飛び込んでくる時代は、それを追いかけることより、自分にとって必要なことを見出すことの方が難しいかもしれません。

また、それを見つけようと来るもの全てに手を出していくと、今度は自分の時間がどんどん無くなってしまいます。

そして、ドラッカーの言葉の通り、起業しても思うようにクライアントが獲れない、勉強しても思うような結果が出ないのは、大体、この選択と集中ができていないことが原因です。また、その多くが、選択と集中が出来ていないこと自体に気づけないのです。

●選択と集中で年商1,000万を決めて独立。しかも会社員時代の1/3の労働時間!

私の講座を受けてくれたある受講生さんの事例です。

中小企業診断士の谷頭大輔さんは、以前からコンサルタントとして独立することを希望し、私の講座に参加されました。

谷頭さんは、中小企業診断士の他、社会保険労務士の資格も持つ勉強家です。

しかし、私の講座に参加された当初、ある自己啓発セミナーにお金をつぎ込んでしまい、それを辞めるべきか? 本当に起業が正しい選択なのか? を明らかにすることからのスタートでした。

私はまず、選択と集中の法則に則って、目標に不要なお金と時間はできる限り節約することを提案。コンサルタントになりたいのなら、何のコンサルティングができるのか? を現わした「商品開発」にまず取り組み、エネルギーが分散してしまう自己啓発セミナーは辞めることをお勧めしました。

また、負担の大きい手続き系の業務も最低限にすること、SNSなどのオンライン集客より既存の人脈を生かすことで、商品開発の時間確保とコンサルタントに必要なスキル確保に時間を割くようにしてもらいました。

彼はもともと素直で実直な性格の持ち主です。これは経営者などリーダーから好かれるだろうなと、私は思っていましたが、その予想を遥かに超えて、彼はどんどん契約を獲ってくるようになりました。私が会うたびに成果報告が連続し、気づいたら年商1,000万円を確定させてからの独立となったのです。

そして、晴れて独立した結果、彼の労働時間は以前のなんと1/3。

余った残りの時間は、家族の時間や更なるスキルアップに費やせる現実を生み出したのです。

●忙しくて月100万 vs 時間に余裕で月100万では、天と地ほどの差がある

谷頭さんの事例の成功要因が選択と集中だったことは前述の通りですが、もう1つのポイントは、時間の余白です。

同じ年商を上げるにしても、目一杯時間を詰めて、やっと目標の売上を上げるのと、時間に余白をもって目標の売上を上げるのとでは、天と地ほどの差があります。

その差は何かというと、未来に対する準備ができるかどうか? ということです。

個人起業、とくにコンサルティングやカウンセリングなどの“対人支援”の仕事というのは、クライアントに接する時間が必ず発生します。

しかしもし、クライアントに接する時間だけでいっぱいになってしまったら、いつ、次の準備をすればよいでしょうか?

対人支援の仕事において、次の準備とは、

  • 次のセミナーなどのフロント施策の開発
  • 自分自身のスキルアップ
  • 集客活動(SNSで発信する、見込み顧客に会うなど)

など、たくさんのやることがあります。

つまり、限界まで忙しくして目標の収入を上げるよりは、次に備える時間を確保しながら仕事をするようにしないと、未来の伸びしろがなくなってしまのです。

このような選択と集中が出来ていないケースは非常に多いです。

たとえば、

  • 一時期の間にあれもこれも一度に勉強しようとする
  • 体ひとつの個人起業なのに、サービスがズラッとホームページに並んでいるなどです。

そして、このようにあれこれ手を出して、結局どれも中途半端になってしまう原因は、自分に対する「不足の観念」です。

つまり、「私は人に誇れるような知識も経験もない。でも、だからといって、周りに遅れを取ってしまったり、立場が悪くなってしまうのはどうしてもイヤだ。せめて最低限のことは学んで答えられるようにしておこう」という不安を埋めようとする心理なのです。

そして、この考え方自体が、何かに追われてしまう自分をつくり出し、結果、時間にも追われる現実をつくり出すわけです。

複数のことを同時に広く浅く進めて、どれも中途半端になるのだったら、他のことは一旦脇に置いてでも、1つのことを集中的に進めてから、次に進めた方が圧倒的に効率的です。また、その時、手がつけられなかったことも、ほとんどのことが、後で取り組んでも十分間に合うものばかりのはずなのです。

選択と集中をできるようにするには、その時、手がつけられなくても、「遅れても後で必ず取り戻せる」というふうに、自分を信じられるかどうかです。

時間効率の良いアウトプットのためにも、あれこれ手を出さないと遅れてしまう不安がある自分をまず、受け入れてみましょう。

そして、その時できなくても、後で取り組む時間をデザインさえしておけば、落ち着いて「今、やるべきこと」に集中できるようになるはずです。

時間デザイン
芳月健太郎
博報堂グループなどでプランナー、プロデューサー、マーケティング部門責任者を歴任しながら23年の広告業界を経て現職。株式会社ライフワーカー&アソシエイツ代表取締役。グロービスMBA1プログラム修了。著書には「企画で勝負をしている人のアイデアのワザ(明日香出版社)」「最強コンセプトで独立起業をラクラク軌道に乗せる方法(セルバ出版)」などがある。

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