本記事は、芳月健太郎氏の著書『時間デザイン』(同友館)の中から一部を抜粋・編集しています。

ゴール,ステップ
(画像=LunaKate/stock.adobe.com)

予定通りに進む人は必ずゴールから考える

仕事をしていれば、完了しなければいけない期日があります。

制作物の納品日、広告の掲載日、イベントなどの開催日など、どんな仕事でも必ず「ゴール」となる日時があります。

また、起業しても同様に、キャンペーンの開始日、セミナーの開催日などがあります。

そして、これらの「ゴール」に常に間に合う人と、いつもギリギリになったり遅れたりする人がいます。

また、個人で仕事をしていると、特に起業したての頃は仕事も少なく納品日に追われることもあまりありません。すると、どうしても「いつまでに終わらせる!」という緊張感が抜け落ちてしまうのです。

ところであなたは、スケジュールを埋めるときゴールから予定を逆算していきますか? それとも、現在から未来に向けて予定を埋めていきますか?

前者のことを「逆算思考」、後者は「積上げ思考」と一般的に言われますが、物事がズルズル遅れがちになる人は、大体、積上げ思考をしています。

私はこの質問を受講生に聞いてみたのですが、約半数が現在から未来に向けて予定を埋めていると答えました。

また、積上げ思考で未来を見通すことのできる時間的範囲は、大体、1週間〜2週間程度。

それ以降のことになると「わからない」と答える人が多いようです。

●ビジョン型と価値観型

この逆算思考・積上げ思考と少し似ていますが、人間のタイプには「ビジョン型」と「価値観型」があることをご存じでしょうか?

オリンピック選手を金メダルに導いたコーチングの第一人者、平本あきお氏によると、

  • ビジョン型は未来の夢をありありと描いて成功するタイプ
  • 価値観型は日々「何を大事にすることが自分らしいか?」を大切にするタイプ

に分けられるそうで、日本人の約8割が価値観型だそうです。

つまり、ビジョンに向けて逆算して行動していく人は、実は日本人には少なく、多くは日々自分らしく仕事をすることに充実感を見出すということです。

これが実際、予定を立てる際の逆算思考や積上げ思考にどれだけ影響しているかはわかりません。しかし、少なくとも予定を立てるのであれば、納品日などのゴールから逆算して考えないと、納期ギリギリになって焦ってしまったり、自分だけの仕事となると、ついズルズルと後ろ倒しになってしまうわけです。

では、もしあなたが、現在から未来に向けて予定を立てる人たとしたら、これをどうやって未来から現在の逆算思考に変えていけば良いでしょうか?

ここで少し簡単なトレーニングをやってみましょう。

●カンタン! 逆算思考トレーニング

あなたは自分の未来をどれくらい先まで描いていますか?

もし、1〜2週間程度だとしたら、それは積上げ思考である可能性が非常に高いので、時間デザインに慣れて頂くためにも、ここでカンタンな逆算思考トレーニングをしてみましょう。

(1)未来の時間軸をストレッチする

描いた時間通りに物事を進めるには、未来が鮮明であればあるほど、その通りになっていきます。

しかし、ほとんどの人は未来といっても1〜2週間先くらいしかイメージしていません。

そこで、カレンダーを使いながら、3ヶ月先くらいの行事から埋めていくことをやってみましょう。

もし、お手元にカレンダーがあればそれを使ってください。適当なものが無ければ、ネットでカレンダーと検索すれば出てくるのでそれを使いましょう。

仮に現在が11月1日だとします。すると、3ヶ月先は1月末日になります。

ではまず、1月末日から現在にかけての主な行事を逆算して考えてみてください。あなたの向こう3ヶ月の主な行事は何になりそうですか?

  • 正月は帰省しますか? 旅行に行きますか? 誰と一緒に過ごしますか?
  • 年末はどこで過ごしますか?
  • クリスマスは誰とどこで過ごしますか?
  • 12月中に片付けておきたいことは何ですか?
  • 12月が忙しいとしたら、11月には何をやっておきましょうか?

いかがでしょう?

多分、あなたの頭の中に、「あれもやろうかな? これを片付けておかないとな……」というイメージが沸いてきたのではないでしょうか?

ハイ。まずはこれでOKです。

このようにして少し先の未来をイメージすることが、時間デザインの基本です。

多分、このようにイメージすると、すでにあなたの頭の中には、この間にやっておきたいことが出てくるはずです。

(2)やりたいことのゴールを決める

では、次に、1月末日までの間に何かやっておきたいことを1つ決めます。

今回は練習なので何でも構いませんが、たとえば、あなたが学生時代の仲間と久々に集まって飲み会をやろうと思ったとします。

まず、何からはじめますか? ほとんどの人が「いつ?」「誰と?」と考えるはずです。具体的な場所やレストランでやるとしたらどんなお店が良いか? は、この段階では決められないので、まずは「いつ?」が最初ですね。また、友人を誘うにしても、「いつやるの?」と言われるに決まってますから、開催日(あるいはその候補日)がまずゴールです。

(3)逆算する

仮に1月20日の開催に決めるとしましょう。カジュアルな集まりであれば、会いたい友人の顔はすでに浮かんでいるでしょうから、おおよその人数も想像できると思います。

そして、ここで逆算思考をするとしたらこんな感じです。

  • 開催日 ……レストランなどの開催場所に早めに到着して、段取りを確認
  • 前日  ……参加者へのリマインド
  • 人数決定……会場への連絡
  • 予約  ……レストランなどの場所の予約
  • 場所決定……出欠の再確認
  • お誘い ……友人への連絡や候補となるレストランのピックアップなど
時間デザイン
(画像=時間デザイン)

いかがでしょう?

すごく簡単な例ですが、ポイントは開催日(という未来)から、友人への最初の連絡(という現在)に逆算してやるべきことを考えていくことです。

これを、友人への連絡→予約→人数決定→前日のリマインド→開催日と考えていくのが積上げ思考です。このような簡単なことならそれでもダメとまでは言いませんが、年末年始の予定や12月にやっておきたいことなど、他の予定が複雑に絡み合ったらどうなるでしょう? もしかしたら、人数を会場に連絡することをうっかり忘れるなどの抜けが起こりやすいのではないでしょうか?

このような簡単な段取り“だけ”やるのは簡単ですが、他にも色々なことが同時並行で進むと、積上げ思考は抜け・漏れが出やすくなる考え方です。

逆算思考の場合は、ゴールだけでなく、「いつまでに会場に連絡するか?」「いつまでに予約しておかないと人気の会場が取れなくなってしまうか?」などのラップを刻むことができるので、抜け・漏れが無くなるわけです。

このように、1ヶ月先、3ヶ月先、あるいは半年先の未来から逆算して考えると、色々やりたいことが浮かんできたり、あるいは何かの仕事の完了日が鮮明になったりします。

同時に、具体的な納品日や開催日、あるいはそれまでに必要なことが曖昧だったり、他の予定とのバランスを考えねばならなかったり、決めておかなければいけない項目も見えてきます。

そして、それらをゴールから現在に並べていくと、次の具体的なアクションがわかるようになり、それが具体的であるほど行動もしやすくなるわけです。

結局、予定通りに進むということは、それまでのアクションを1つずつ確実にこなしているかどうか? です。そのためには、すぐに取り組むべきタスクを逆算思考で明らかにすることが大事というわけです。

時間デザイン
芳月健太郎
博報堂グループなどでプランナー、プロデューサー、マーケティング部門責任者を歴任しながら23年の広告業界を経て現職。株式会社ライフワーカー&アソシエイツ代表取締役。グロービスMBA1プログラム修了。著書には「企画で勝負をしている人のアイデアのワザ(明日香出版社)」「最強コンセプトで独立起業をラクラク軌道に乗せる方法(セルバ出版)」などがある。

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