本記事は、芳月健太郎氏の著書『時間デザイン』(同友館)の中から一部を抜粋・編集しています。
時間を描くことに時間を割くと、新たな時間が生まれる!
あなたは自分の時間について、ベストな配分を考えたことはありますか?
ただ漠然と「時間がない」と思いつつ時が過ぎるに任せてしまう人も多いと思いますが、望む未来にするためには、まず今の時間配分を把握することが大事です。
そこでさっそく、自分の時間を思うようにデザインするために、次の時間について考えてみましょう。
まず、1つ目は「今の生活のために使う時間」です。
具体的には、睡眠、食事、家族との時間など、まさに生活の基本に使う時間です。
一般的に言うと、睡眠は1日6〜8時間程度、食事は朝と夜で2時間程度、さらに家族団らんや子どもと接する時間など、1日24時間のうち10時間くらいは使っていると思います。
次は、「今の仕事に使う時間」です。
これは会社勤めの人であれば平日朝から夜まで、通勤時間も入れれば10時間、残業が多い人は12時間以上、働いている人もいると思います。
その次は、「趣味やリラックスに使う時間」です。
会社勤めの人であれば土日などの休日や夜の読書など、生活と仕事の時間の残りを充てるはずです。すると、
- (1)今の生活に使う時間
(2)今の仕事に使う時間
(3)趣味やリラックスに使う時間
で1日が全て埋まってしまう人も少なくないのではないでしょうか。
もちろん、今の仕事や生活に満足していればこれで十分です。
しかし実際、多くの人は「もっと勉強したい」「スキルアップしたい」「起業準備をはじめたい」など、“今の時間”の中に、「次の成長のための時間(4)」を組み込もうとします。
そして、この(4)の時間が思うようにいかないから悩ましいわけですが、私がここで提案したいのは、「時間を描くことに使う時間(5)」を加えることです。
今すでに時間がないのに、もう1つ加えるの? と思われるかもしれませんが、多くの人がスケジュール倒れになってしまうのは、(1)〜(4)の時間が、パズルのようにピッタリはまる予定の立て方をしていないからです。だから、ムダな隙間だらけになってしまうのです。
また、そのムダのない時間を見積もるには、慣れないうちはそれ相応の時間が要ります。そして、その時間を取らなければ、予定通りにいかないのは当然なのです。
ところが、ほとんどの人が、この時間を見積もる時間そのものを取るという発想がないため、(1)〜(3)の時間と次の成長のための(4)の時間がごちゃついてしまったり、目標までの見通しが立てられなかったり、不要なことを惰性で続けたままになってしまうわけです。
●まず週に1回、20分程度を「時間デザインのための時間」に充てよう
時間を描くための時間、つまり時間デザインに使う時間はそれほど多くを必要としません。
週に1回、20分程度を時間デザインのために充てるだけです。
私はこの時間を毎週日曜日に取っています。
日曜日は、1週間の動きを見通すちょうど良い区切りの日です。この日に今週を見通した予定をしっかりつくっておくわけです。
これをやっておくと、今週のやることが明確になるばかりでなく、気持ちもスッキリして、やる気が出てきます。
大体、仕事のスピードが落ちてしまうのは、頭の中で次のような混乱が起こり、それを整理するために無意識に時間を取られているからです。
たとえば、あなたも頭の中でこんなセリフが飛び交ったことはありませんか?
- 「あれ? あの企画書はいつまでに終わらせるんだっけ?」
⇒(これを思い出したり、確認するのに3分経過) - 「あ、○○さんに連絡しなきゃいけないんだった!」
⇒(企画書の手を止めて連絡した後、企画書の続きをうっかり忘れて5分経過) - 「えーと。次は何をしたらいいんだっけ?」
⇒(次に何をすべきかを「んー」と考えてまた5分経過) - 「あー、なんか落ち着かないなぁ」
⇒(ちょっと休憩してさらに30分経過)
こんなふうに頭の中がごちゃついていると、その都度整理するための時間が発生し、その積み重ねは1週間、1ヶ月と経つにつれ相当な時間量になります。また、不要な思考と感情もどんどん積み重なってしまい、結果、何事もスピードが落ちてしまいます。
この不要な時間や感情を無くすため、まずは週に1回20分、翌週の(1)〜(4)の時間を組み立てる「時間デザインのための時間」をつくると良いわけです。
ちなみに、時間デザインのための時間は、向こう3ヶ月の見通しや1年以上の計画を立てるために費やすことなどもあります。ただ、時間のスパンが長いほど、見通しを立てるのは難しく、慣れないと最初はかなりの時間がかかります。したがって、まずはこの週1回20分程度を確保することからはじめると良いわけです。
●ワークライフシナジーの時間配分が理想的
ワークライフバランスとは、仕事も生活も双方のバランスが取れた働き方のことです。
あなたが会社勤めだったら、きっと理想的な働き方に見えるのではないでしょうか? ただ、あなたが心から求めることと会社が要求することが一致することは、実際は、それほど多くはないはずです。
『働き方の哲学』(村山昇著)によると、仕事はお金のためだけ…耐えてこなすだけになって、仕事と生活が分離すると、「ワークライフスプリット(分離)」状態になり、さらに仕事が忙しくなり過ぎて生活とごちゃ混ぜになると「ワークライフメシー(ごちゃごちゃ)」になってしまう恐れもあります。
では、理想は何かというと、私は「ワークライフシナジー(相乗効果)」だと思っています。これは仕事で得たことが生活にも生かされ、生活の中で得たヒントが仕事に生きる、最も生産的なワークスタイルです。相乗効果というくらいですから、ワークライフバランスに比べても、よりヒントやアイデアが出やすい働き方です。
こうなってくれば、「アイデアが浮かばない」「次に何をすべきかわからない」といった、時の浪費を大幅に防ぐことができます。そしてその分の時間が生まれるのです。
これを実現しやすいのは、私のような個人起業家やフリーランス、経営者、あるいは芸術家などですが、会社勤めの人でも、ワークライフシナジーで仕事が出来ている人もいます。
いずれにしても、そうなるために大事なことは、「自分にとっての真の成功」がハッキリしていることです。その実現のために仕事も生活もフル動員するほど、一日一日を密度濃く生きようという気持ちになります。その集中力が、自分にとっての最適な時間配分を生み出そうとする原動力になるわけです。
もし、あなたがまだ「ワークライフシナジー」にはほど遠い働き方をしていたとしても、ぜひ、週に1回、20分だけ翌週の時間を描くようにしてみてください。
段々とやることが効率的になり、そこにシナジーを生み出せるようになると思います。