本記事は、芳月健太郎氏の著書『時間デザイン』(同友館)の中から一部を抜粋・編集しています。
自分との約束を守るほど「道は拓ける」
ここまで「時間」という切り口で想いを現実にする方法を解説してきました。
あなたはこれまで「時間術」や「スケジューリング」というと「時間に追われる感じがして苦手」と思っていたかもしれません。
しかし、2週間タイムテーブルを中心とした時間をデザインしていく方法を聞いて、どのように思われたでしょうか?
「時間は追われるものではなく、あなた自身を成長させるツール」ということが少しでもご理解頂けたら、私もここまで書いてきた甲斐があったというものです。
目的は、時間というツールを上手に使って豊かになることであり、それが達成されている様は、時間的にも経済的にも「自立している状態」です。
ただ、どうか「私はまだ会社勤めだから自分には関係ない」と短絡的に考えないでください。私が今、時間的にも経済的にも「自立」している状態になれたのも、会社勤めの間に「自律」することを覚えたからです。
自律とは辞書によると「自分の気ままを抑えて、自分で立てた規範にしたがって自分のことは自分でやっていくこと」とあります。
そして、会社で仕事をしていようが、起業しようが、自律があってはじめて自立は成り立つものです。
あなたが制約の多い会社勤めだとしても、自律的に仕事をしていれば、周りの人は必ずあなたのやり方を尊重し、あなたはより自由に仕事ができるはずです。なぜならば、自律的に仕事をする人は、「周りが求める結果」にちゃんとフォーカスしているからです。
また、あなたが起業して自由な立場だとしても、自律的に仕事をしていれば、必ずあなたが望むような仕事や収入になるはずです。なぜならば、起業しても自律的に仕事をする人は「未来」にちゃんとフォーカスしているからです。
未来や結果にフォーカスするからこそ、そこに至る過程に意識が向き、その過程で時間の描き方の精度が磨かれ、物事が実現し、あなた自身が成長していくのです。
●多くの人は「決めない」から願いが叶わない
「時間に追われる感覚が苦手」という意識は、実は、あなたが無意識に「今を変えたくない」という抵抗感から来ている場合もあります。
あなたが普段、講演でもしていなければ、いきなり何千人の前で話せと言われてもプレッシャーがかかるというお話でしたが、あなたが10人の前でも緊張してしまう状態だとしたら、このような話が来てもおそらく断ってしまうと思います。
しかし、もしあなたが「今すぐはできないとしても、3ヶ月の準備があれば何とかできかも?」と思いさえすれば、このような話が来てももっと柔軟に対処できるはずです。
そして、もしあなたが“話が来る前から”「私は東京国際フォーラムでも武道館でも聴衆の前で堂々とスピーチできる講演家になる」と決めていれば、この話はビッグチャンスに変わります。つまり、最初に未来を「決める」ことが何事もスタートラインなのです。
そして、多くの人は、このような「決める」ことをしていません。
「起業できたら良いなぁ」
「MBAの資格があれば、憧れの経営戦略部に配属が叶うかもしれない」
「あの会社に転職したら、もっとやり甲斐のある仕事で給料も良いはずなのに」
といった淡い願望レベルで終わらせてしまいます。
もちろん、何となく良いと思ったとしても、それが自分の本当の望みなのか? を確かめることも必要ですから、今すぐ何かを決めろとは言いません。
しかし、もし良いと思う何かがあるのだったら、少なくとも「決める」までの工程はやってみても良いのではないでしょうか?
たとえば、
- その良いと思うことが自分にとって本物なのかを確かめる
- 起業でもMBAでも転職でも、そうなるためには何が必要かを調べる
- 現状からその到達点までどれ位の時間がかかりそうかシミュレーションする
ことです。
最後のシミュレーションが時間デザインに当りますが、少なくとも「本物なのかを確かめて」「何が必要かを調べる」までをすれば、それを決めることはできるはずです。
そして、「私はいくら願っても、その通りにならない」と嘆く前に、まず「決める」ことを試みて欲しいのです。
先述の通り、私は個人起業家のビジネスをサポートしていますが、起業を願って何百万円ものお金を投資したのに起業できなかったり、起業してもほとんど稼げない人は、この「決める」ということの意味を理解していません。
決めるということは自分との約束です。
もし、あなたが本当に欲しい未来があるのなら、まずその未来を選ぶことを本気で「決めて」ください。本当に本気で決めれば、その時から現実は動き出します。
さらに、もう1つ付け加えるなら、そこで時間をデザインしておけば、仮に途中経過が描いた通りでないとしても、別の予定と差替えるなどして帳尻を合わせることができます。帳尻さえあえば、自分との約束を破ったことにはなりません。
そうやって柔軟に未来を描きながら、時間というツールを使いこなしてください。
収入が増える「収入支出サイクル」に沿って時間を投資しよう
「お金で時間を買う」という言葉がある通り、時間とお金は密接な関係があります。
しかし、多くの人はただ漠然と「時間はお金くらいに大事なもの」程度にしか考えていないのではないでしょうか?
ところで私は、起業を志したときもそうでしたが、ビジネススクールに通うと決めたときも、独立してプロモーション方法を学ぶ講座に通うことを決めたときも、それがきっかけとなって、その後に人生の飛躍があり、人脈も増え、また収入も大きく上がる経験をしています。
これは私だけでなく全ての人に当てはまりますが、「現状を変えようとして」あるいは「自然とそこに引かれて」、人はお金を払ってでも何かを学びたいという「時」が訪れるものです。
そして、投資によって、決して自分1人ではできなかった何かを得て、そこから人生が本当に変わりはじめます。
私は起業を考えはじめたとき、最初に投資したのは「コーチングスクール」でした。
当時の私としては大きな決断でした。受講料も高かったし、子供も3歳だったので月に3日も4日も家を空けることに妻は良い顔をしませんでした。
それでもそこに投資し、コーチングのスキルを得て、ブログを発信しはじめ、そして、それを見た人が「お金を払うからぜひセッションして欲しい」とクライアントになり、そして、起業という人生最大の転機を乗り越えることができました。
また、ビジネススクールに投資した後、私のつくる企画書の内容は大きく進化し、それを評価してくれた役員に掛け合って、念願だった商品開発の仕事をすることになりました。
あるプロモーション方法を学ぶ講座に投資した後、その方法を取り入れ、私の売上は何倍にもなり、受講生さんも優秀な人が集まるようになりました。
そして、私だけでなく周りを見渡しても、人生がステージアップするとき、次のようなサイクルで変わっていきます。それは、
- まず必要と思う何かに投資をして知恵をインプットする
- そのインプットを元に何かを創造する
- その創造を実際にアウトプットする。
- そのアウトプットに触れた誰かがチャンスやお金を運んでくる
です。
●何かを変えたいときは必ず投資から始めよ
この収入支出サイクルを理解して人生をステージアップさせたいと思ったら、次の点に注意して活用してみてください。
- 何かを変えたい! と思ったら、必ず投資から始めること
- 投資して何かをインプットしたら、必ず何らかの創造を加えてアウトプットすること
- 早く次に行きたいのなら、サイクルのスピードを上げ、多くを同時に回すこと
まず、「投資から始めること」から解説します。
自分の何かを変えたいと思うとき、自分1人だけで自分を変化させるのは極めて難しいものです。また、時間という軸で考えると、これほど非効率なことはありません。
人は1人で生きていけないように、全てを自分だけで完結させようとしてはいけません。上手に他人の力を借りながら、知恵、情報、新しい考え方、そして経験を取り入れた方が圧倒的に効率的で効果的です。
自分が変われば現実も変わります。
このようにして、まず投資からはじめることによって、自分で自分を望ましい方向に変化させることができます。
次に、「インプットしたらアウトプットすること」ですが、よく目にする光景は、「学んだら学びっぱなし」にする人が多いことです。
ただ先生の話を聞くだけ、ただノートに取るだけでは、あなたに変化は起こりません。
私がコーチングスクールに通いながらブログを発信し始めたり、ビジネススクールで学んだことを企画書に取り入れるなど、学んだことを自分なりに解釈し、創造を加えてアウトプットしたからこそ、誰かの目に留まってお金やチャンスがやって来たわけです。
お金やチャンスは、必ず人が運んで来ます。
そんな幸運を呼び込むには、あなたが「先に」働きかけておかなければ、何も起こらないのです。
これを理解すると、あなたの学び方も行動パターンも大いに変わり、身の回りにいる人全てが学ぶべき対象に変わっていきます。
●経営は収入支出サイクルを同時並行で早く回している
そして最後の、「サイクルのスピードを上げ多くを同時に回すこと」ですが、これは企業を考えると当たり前の活動ということがわかります。
企業は株主や金融機関から調達した資金で、まず何かに投資します。それは工場であったり、新規事業の組織の編成だったり、あるいは企業買収だったりします。
そして、その投資で得たインプットで新たな価値を創造し、市場に発信します。その結果、その企業には新たな収益が生まれます。
個人と違って、組織はこのサイクルを素早く、同時並行で回している点です。これによって企業は倍々ゲームで売上を伸ばすことが可能になるわけです。
今度は、これを個人に置き換えてみましょう。
もし、あなたが現状を変えたいとしたら、たとえば、1年のうちに3つ4つ新しい何かに投資し、そこで得た知恵や情報をあなたなりに変換して、新しい何かを立ち上げることです。
その投資先は、新しいやり方を学ぶ講座やコンサルティングかもしれないし、あるいは、1人で非効率だったことをアウトソースして時間を生み出すことかもしれません。
新しい何かとは、新しいサービスだったり、新しい売り方、あるいはビジネスパートナーとの協業かもしれません。
いずれにしても、どんどん成長していく人は、このような投資して収入になるまでのサイクルを素早く複数以上回すことによって、それを現実にしていくのです。
ただ、もちろん、最初から素早く複数を回す資金も体力もないかもしれません。
実際、私もコーチングスクールに投資したときは、この収入支出サイクルを1年で一回転させるのが精一杯でした。
しかし、仕事に慣れてきたり、一回転した後に得た収入を再投資するなどして、個人でも素早く同時にサイクルを回せるようになっていくわけです。
このように収入支出サイクルを理解して、実際に行動に移していくと、収入を増やすという目的に向けて、お金も時間も効果的に投資できるようになります。
そして、時間をお金で買いながら、買った以上のリターンを得るサイクルをどんどん回せるようになるのです。