不動産投資では、金融機関の融資を利用して物件を取得するのが一般的だ。融資を申し込みする際は、さまざまな書類を準備しなくてはならない。金融機関によって必要になる書類は異なるが、今回は不動産投資で融資を受ける際に準備しておくとよい必要書類を紹介する。
融資申込者に関する必要書類
まずは、融資申込者に関する必要書類を確認していこう。
身分証明書、住民票、印鑑証明書
マイナンバーカード
健康保険証
住民票の写し
印鑑証明書
本人確認書類として運転免許証やマイナンバーカード、健康保険証などの身分証明書の準備が必要だ。基本的に顔写真付きの証明書を求められる。
また住民票の写し(申込時3カ月以内のもの)や契約時に使用する実印の印鑑証明書(借入日3カ月以内のもの)も必要だ。住民票と印鑑証明書は、市区町村の窓口やコンビニに設置されているマルチコピー機(※)などで取得できる。 ※自治体によってはコンビニで証明書交付ができないところもある
職務経歴書、勤務先の会社概要
勤務先の会社概要
経歴や仕事内容を説明するために職務経歴書や勤務先の会社概要書を準備する。金融機関によっては、これら書類の提出に代えて、金融機関が用意した書類に経歴や勤務先の概要を記入するケースもある。
所得を証明する書類
住民税課税証明書
納税証明書
確定申告書
決算書(法人の場合)
法人納税証明書(法人の場合)
所得を証明する書類として源泉徴収票や住民税課税証明書、納税証明書、確定申告書などを準備する。給与所得者(会社員)の場合、源泉徴収票は勤務先から入手できる。住民税課税証明書は、住民票のある市区町村、納税証明書は税務署で取得しよう。確定申告書は、青色申告決算書や収支内訳書などを含む一式を提出する。
法人経営者の場合は、上記に加えて法人の決算書や法人納税証明書も必要だ。何年分の書類が必要なのかは金融機関によって異なるので確認して準備しよう。
金融資産を確認できる書類
金融資産の残高証明書
保険の解約返戻金がわかる書類など
登記事項証明書(不動産の登記簿謄本)
固定資産税評価証明書
預貯金や有価証券、生命保険などの金融資産が確認できる書類を提出する。申込者名義で直近の残高がわかるものを用意しておきたい。
具体的には、預金通帳や残高証明書などを準備する。不動産を所有している場合は、所有不動産の所在がわかる資料として登記事項証明書(不動産の登記簿謄本)や固定資産税評価証明書などを準備しよう。
借入状況がわかる書類
すでに他の金融機関から融資を受けている場合は、借入状況がわかる書類が必要だ。通常は、住宅ローンや他の不動産投資ローンだけでなくカードローンやキャッシングなどの小口融資も含まれる。借り入れ中のローン償還予定表や返済明細書などを準備しよう。
健康診断書(団体信用生命保険加入時)
ローン利用に際し団体信用生命保険に加入する場合に保険会社から健康診断書を求められる場合がある。健康診断書は毎年企業で受けているものでよい場合や所定書式に沿って病院で健康診断を受ける必要があるものまでさまざまだ。ローンを受ける金融機関に問い合わせて健康診断書の要否を確認し、必要に応じて用意するとよいだろう。
投資対象不動産に関する必要書類
不動産投資で融資を受けるには、投資対象不動産に関する以下の書類も必要になる。
購入物件が区分マンションなのかアパートなのか、一棟マンションなのか、新築なのか中古なのかによって必要書類が変わるため、あらかじめ金融機関に問い合わせるのがよいだろう。
物件パンフレットやチラシ
販売図面
レントロール
賃貸契約書(入居者がいる物件の場合)
売買契約書
重要事項説明書
登記事項証明書(登記簿謄本)
公図
建築確認済証
検査済証
事業計画書
物件概要書
物件概況書とは、不動産の基本情報が記載された書類のことだ。決まった形式はないが、物件名や所在地、面積、法律上の規制などがまとめられているものを指す。通常は、不動産会社が物件紹介時や売買契約時の資料として作成するため、不動産会社に確認するといいだろう。物件概況書とあわせて物件パンフレットやチラシ、販売図面なども準備しておくと安心だ。
レントロール、賃貸契約書
レントロールとは、投資対象不動産の賃貸契約の状況をまとめた書類のことだ。部屋ごとに家賃や敷金、契約日、契約期間などの契約条件、入居者の属性などを記載する。こちらも物件概要書と同様に決まった形式はないが、物件の収益力を判断する資料として必要だ。通常は、不動産会社に依頼すれば作成してもらえる。
すでに入居者がいる物件を取得する場合は、賃貸契約書も不動産会社経由で入手しておこう。
売買契約書
投資対象不動産の売買契約書だ。買主と売主の双方が契約内容に同意し、契約書に署名捺印することで売買契約が成立する。一般的に売買契約時に買主と売主の分を作成するため、紛失しないよう大切に保管しておこう。
なお、融資審査時点では、融資を受けられる確証はない。どの金融機関からも融資を受けられなければ、契約時に支払った仲介手数料や手付金を失うことになる。融資を利用して物件を購入する場合は、必ず「融資特約(ローン特約)」をつけて、融資審査に落ちた場合に無償で契約解除をできるようにしておこう。
重要事項説明書
重要事項説明書とは、売買契約に先駆けて物件の重要事項説明を受ける際に発行される書類だ。宅地建物取引法では、買主・売主が物件に関する重要事項を理解し十分な情報を得たうえで売買契約するか否かを判断できるよう宅地建物取引士による重要事項説明を義務付けている。
重要事項説明は、以下のような内容を宅地建物取引士が口頭で説明することが必要だ。
- 契約に関する事項(契約解除、契約不履行時の取り決め)
- 権利関係に問題がないこと
- 法令上の制限を受ける物件ではないこと など
先述したように、融資審査が完了する前に売買契約を締結すると、支払った仲介手数料や手付金を失うリスクがある。契約解除や契約不履行時の取り決めについては、特に注意して確認しておこう。
登記事項証明書(登記簿謄本)
登記事項証明書(登記簿謄本)とは、不動産の登記情報が記載された書類のことだ。大別すると「表題部」と「権利部(甲区、乙区)」で構成されている。
表題部 | 不動産の所在地や面積、建物の種類などが記載されている |
権利部 (甲区、乙区) |
甲区には所有者など所有権に関する情報、乙区には抵当権など所有権以外の権利関係が記載されている |
登記事項証明書は、法務局の窓口またはオンライン請求で取得できる。
公図
公図とは、法務局に備え付けられている「地図に準ずる図面」のことだ。地図に比べると土地の面積や距離についての正確性は低いが、土地のおおよその位置や形状を明らかにするために利用されている。公図は、法務局の窓口やオンライン(登記情報提供サービス)で取得できる。
建築確認済証、検査済証
建築確認済証とは、対象物件の建築計画が建築基準法の規定に適合していることを証明する書類のことだ。一方、検査済証は建築された建物が建築基準法の基準に適合していると認められたときに発行される。融資の申し込みでは、建築確認済証と検査済証の両方の提出が必要だ。さらに「建築図面」が必要になることもある。不動産会社に有無を確認のうえ入手しよう。
事業計画書
事業計画書とは、不動産投資の事業内容や長期の収益見込みなどを説明する書類である。特に新築アパートの場合は、融資を申し込みした時点で賃貸経営がスタートしていないため、事業計画書を提出して事業戦略や収益見通しを説明することが必要だ。事業計画書に決まった形式はないため、自作するか、インターネット上で提供されているテンプレートを活用するといいだろう。
まとめ
最後に改めて不動産投資で融資を受けるときの必要書類とポイントをまとめておく。
書類名称 | ポイント |
身分証明書、住民票、印鑑証明書 | 運転免許証、マイナンバーカードなど |
職務経歴書、勤務先の会社概要 | 必須ではないが、準備したほうがよい |
所得を証明する書類 | 源泉徴収票、納税証明書、確定申告書など(直近3年分) |
金融資産を確認できる書類 | 預金通帳、残高証明書、生命保険証券など |
借入状況がわかる書類 | ローン償還予定表、返済口座の預金通帳など |
団体信用生命保険申込兼告知書 | 融資申込時に記入(健康診断書を準備しておく) |
物件概況書 | 物件概要や法律上の規制などを記載した書類 |
レントロール(賃貸契約書) | 不動産の賃貸契約の状況を一覧にまとめた書類 |
売買契約書 | 不動産の売買契約書 |
重要事項説明書 | 不動産の重要事項が記載されている書類 |
登記事項証明書 | 不動産の登記情報が記載されている書類 |
公図 | 法務局に備え付けられている「地図に準ずる図面」 |
建築確認済証、検査済証 | 建物が建築基準法の基準に適合していることを証明する書類 |
事業計画書 | 不動産投資の収益見通しを説明する書類(新築アパートの場合は特に重要) |
金融機関から融資を受ける際の必要書類は、スムーズに物件を取得して不動産投資を始めるためにも余裕をもって準備しておこう。
(提供:manabu不動産投資 )
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