本記事は、田中耕比古氏の著書『一番伝わる説明の順番』(フォレスト出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

長くてもしっかり伝わる説明の条件

長くてもしっかり伝わる説明の条件
(画像=DragonImages/stock.adobe.com)

短くて伝わらない説明よりは、長いけれどしっかりと伝わる説明のほうが、何十倍、何百倍もマシです。

ここでは、話の長さをいったん度外視し、それ以外に気をつけるべき3つのことを解説します。

1:優先順位をつけて、捨てる
2:本編と補足情報に二分し、本編以外は後ろに回す
3:不要な情報とわかれば、途中で省く

これらをひとつずつ見ていきましょう。

1:優先順位をつけて、捨てる

「40秒で支度しな!」

これはアニメ『天空の城ラピュタ』に登場する有名なセリフです。

空中海賊の首領・ドーラに捕まっていた主人公・パズーが、ムスカに捕まったヒロイン・シータを助けるために一緒に連れて行ってほしいと懇願したときにドーラから言われるセリフです。

パズーは、おそらく、瞬時にいろんなことに優先順位をつけたはずです。

物語の最初のあたりで、シータと一緒に逃げたときには、用意していた朝食をカバンにつめ込むことを優先事項に入れたパズーですが、海賊と共にシータを救出に行く際には、食べ物を持って行くことの優先度は極めて低くなります。

こういう〝絞り込み〞の技術を身につけないと、ドーラが連れて行ってくれません。それでは、シータを助け出すことができなくなってしまいます。

説明における、優先順位の最上位は「相手が知りたいこと」です。

その次は、「自分が伝えたいことと、相手が知りたいこととのギャップを埋める情報」ですね。

そして、その次に「(相手が知りたいことに関連した)自分が伝えたいこと」が位置づけられます。

「相手が知りたいこと」に関係しない情報、特に伝える必要がない情報は、容赦なく切り捨ててしまいましょう。

2:本編と補足情報に二分し、本編以外は後ろに回す

優先順位をつけたら、大事なことから話す、ということに気をつけましょう。

項目ごとの優先順位は、すでにご説明したように「相手の思考に合わせる」ということを意識すべきですが、大きく「本編」と「補足情報」に分けて、補足は後ろに回す、を徹底してください。

説明しようとすると、あれもこれも言いたくなるものです。

しかし、聞き手にとっては情報が少ないほうが、理解しやすいことを忘れてはいけません。本編は、できる限りシンプルに、余計な情報を削ぎ落として、わき道にそれない一本道のストーリーを作りましょう。

たとえば、「所属部門の業績を報告する」という場であれば、

「前年と比較してどうか」
「計画と比較してどうか」
「増減の理由は何か」
「改善策は何か」

というあたりが、本編に相当します。

ここで「他部門はどうか」、「競合他社はどうか」、あるいは、「ここ数年のトレンドはどうなっているか」といった情報を伝えたい、と思った場合には、一度立ち止まって「本当に、それは本編に必要な情報か」と、自分に問いましょう。

多くの場合、それらは、補足情報もしくは、参考情報として、後ろに回されるべき情報です。

なお、補足情報は「説明したほうが、細かい部分まで正確に伝わるが、それを途中にはさむと、説明の流れが滞るリスクがあるもの」です。分析の途中計算や、売上げを細かなセグメントに分類した詳細情報などが該当します。

参考情報は、「なくても話は通るが、知っておいてもらったほうが全体の理解が進むもの」です。

先ほどの例であれば、他部門や、競合他社、業界のトレンドなどは、物事の背景を理解するのに役立つ情報、すなわち参考情報だといっていいでしょう。

しかしながら、補足か参考かにこだわる必要はありません。

大切なのは、本編に入れるか、入れないかです。本編に入れる必要がなければ、すべて後ろに回してしまいましょう。

3:不要な情報とわかれば、途中で省く

何かを説明するときに、可能な限り伝える情報を絞り込み、ストーリーをシンプルにしても、「要否を判断しかねる情報」が含まれることもあります。

たとえば、「前提情報」の取り扱いはケースバイケースになります。

先ほど、まずは前提をそろえる、というお話をしました。

前提情報は、「相手が知らない可能性があること」や、「相手が覚えていない可能性があること」を、しっかり伝えることで、スタート地点をそろえる役割を担っています。

逆をいえば、相手が知っていたら飛ばしてしまってよい情報にほかなりません。

ですので、しっかり説明できるように準備はするものの、もし相手が知っていたり、覚えていたりした場合には、スキップできるようにしておくと、時間の無駄を省け、より説明が伝わりやすくなります。

あらかじめ、前提情報をひとまとまりの情報のカタマリとして用意しておき、

「前回のお打ち合わせで合意したとおり……」
「すでにメールでお送りさせていただいたのですが……」
「〇〇様から事前にご説明があったかと思うのですが……」

というような枕詞を使って、相手が知っているかどうかを推し量りながら進めるといいでしょう。

「ああ、読みましたよ」
「はい。聞いていますので、大丈夫ですよ」

などの回答を得られれば、その前提情報はスキップしてしまってかまいません。

前提情報のほかにも、たとえば営業トークの中で、顧客の興味がなさそうなものについては、「今回の顧客には響かなさそうなセールスポイント群」として、ひとカタマリにしておくといいでしょう。

そして「ご興味がないかと思いますが……」と、まずは項目名を述べるくらいに留めて様子をうかがい、詳細説明を省くことを検討します(もちろん、相手が興味を示した場合は、詳しく説明していきましょう)。

ただし、自分がどうしても伝えたい内容、絶対に相手に認識しておいてもらわないと困る情報は、相手が知っていようが知っていまいが、興味があろうがなかろうが、「念のためにちゃんと伝える」ほうが賢明です。

商品・サービスの説明であれば、返品の可否や、契約解除の制限、割引が適用されるための条件などの契約内容にまつわることは、省略せず、伝えるべき情報として、正確に伝えましょう。

説明は長くてもいいが、説明する項目は厳選する

一番伝わる説明の順番
田中耕比古(たなか・たがひこ)
株式会社ギックス取締役CMSO。1977年生まれ。
2000年、関西学院大学総合政策学部卒業。商社系SI企業に入社。米国ソフトウェアベンチャーへの技術研修員派遣により、サンフランシスコ勤務。
2004年、アクセンチュア株式会社戦略グループ入社。通信業、製造業、流通・小売業などの多様な業界の事業戦略立案からSCM改革、業務改革に至るまで、幅広い領域での戦略コンサルティングプロジェクトに参画。
2011年、日本IBM株式会社入社。ビッグデータのビジネス活用を推進。
2012年、株式会社ギックス設立。取締役に就任。戦略コンサルティングとデータ分析を融合した、効率的且つ実効性のあるコンサルティング・サービスを提供。

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