本記事は、田中耕比古氏の著書『一番伝わる説明の順番』(フォレスト出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

説明上手は、「要約」と「本質の見極め」がうまい

説明上手は、「要約」と「本質の見極め」がうまい
(画像=Arcurs Co-op/peopleimages.com/stock.adobe.com)

繰り返しになりますが、サマライズとは「要約する(要点だけに約する)」という意味で、クリスタライズとは「結晶化する(本質だけを抽出して昇華する)」という意味です。コンサル業界では、サマライズすることを「サマる」と言ったりもします。

説明がうまい人は、このサマライズ、クリスタライズに長けています。

非常によくあるサマリー(要約)の失敗として「情報を薄っぺらなものにしてしまう」というものがあります。これは、「要約」の「約」というところだけに注目した結果なのではないかと思います。少し具体的に考えてみましょう。

週末に彼女と新宿駅で待ち合わせして、白いロマンスカー(VSE)に乗って、ガンダムみたいだね、と盛り上がったあとで、車内で景色を見ながら生ビールで乾杯して、箱根湯本で川沿いを10分ほど上流に歩いた店で蕎麦を食べてから、ケーブルカーで強羅に行く途中、彫刻の森美術館で足湯に入りながらシャンパン飲んでから、強羅温泉で一泊し、翌日はロープウェイで大涌谷を経由して芦ノ湖の海賊船に乗り、その後、バスで箱根湯本に移動し、ロマンスカーで帰ってきました。

この話を要約してくださいと言うと、「週末に旅行に行った」という感じにしてしまうわけですね。

これでは、具体性がなくなり、抽象的な情報になってしまっています。これは、サマリーとしては最悪です。

仮に、同じ文章量でサマライズするとしたら「彼女と箱根旅行」とか、あるいはもっと思い切るなら「ロマンスカーで生ビール」とかにすべきです。

うまいまとめ方のポイントとは?

ポイントは「具体的な状況をイメージさせるキーワードを選んだまとめを作る」ことです。

具体的な情景が思い浮かぶキーワードを選んで、相手にイメージを想起させる「サマリー」でないと何も伝わりません。

仕事の例でいうと、サマライズした結果の文章が「発注業務の効率性が向上します」とか「在庫量を最適化します」とかの場合は要注意です。

もちろん、世の中には「結果だけが聞きたい」というケースもあります。しかし、それは「サマライズしてください」というオーダーではありませんよね。

「結論は何?」という質問に対する答えです。

こういう仕事の改善活動のサマリーであれば具体的な「HOW」に踏み込んで説明することが望ましいです。

たとえば、

「推奨発注量が表示されるから」
「十分な店内在庫があるものは、グレーに表示されて発注しなくていいとわかるから」

などという具体的な手段(HOW)によって、発注業務が効率化されるのであれば、「推奨値の提示、発注対象外商品の非表示機能等により、高効率な発注業務を実現」くらいまでは説明すべきでしょう。

とことんまで具体的に考えて、その中で、一番伝えるべき内容・伝えたい内容(=要点)を厳選して抽出して、端的に伝えることが説明上手のコツだといえます。

一番の伝えるべきポイントを抽出しよう

一番伝わる説明の順番
田中耕比古(たなか・たがひこ)
株式会社ギックス取締役CMSO。1977年生まれ。
2000年、関西学院大学総合政策学部卒業。商社系SI企業に入社。米国ソフトウェアベンチャーへの技術研修員派遣により、サンフランシスコ勤務。
2004年、アクセンチュア株式会社戦略グループ入社。通信業、製造業、流通・小売業などの多様な業界の事業戦略立案からSCM改革、業務改革に至るまで、幅広い領域での戦略コンサルティングプロジェクトに参画。
2011年、日本IBM株式会社入社。ビッグデータのビジネス活用を推進。
2012年、株式会社ギックス設立。取締役に就任。戦略コンサルティングとデータ分析を融合した、効率的且つ実効性のあるコンサルティング・サービスを提供。

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