本記事は、ロッド・ジャドキンス氏の著書『天才はしつこい』(CCCメディアハウス)の中から一部を抜粋・編集しています。

アドバイス
(画像=Jacob Lund/stock.adobe.com)

キャリアについてのピカソからの助言

若者やスタートアップ企業、新しい道に進もうとしている人が抱える共通の問題がある。どうすれば好きなことをして生計を立てられるのだろう?

あらゆる業界のクリエイティブな人にとって何よりも大切なステップとは、支持者を得ること。作品やプロジェクトを世に送り出そう。見てもらおう。あなたの作品を目にする人が増えるほど、支持者を早く得られる。支持者が増えれば、あなたが得る報酬も上がる。

だが、最初から自分や作品に高すぎる値をつけて、もしも売れなかったら、土台ができあがらず支持者も増えない。クリエイティブな人でありたい、つくり手でありたい、という熱意を燃え立たせるのは自我で、このおかげですばらしいものを創作できる。だが気をつけなければ、自我のせいで自分を買いかぶることもある。

1944年、写真家のブラッサイは、何年も前に描いた絵をピカソに見せた。ピカソはブラッサイが絵を描くのをやめたことに対して激怒し、展覧会に絵を出せと言って折れず、こう話した。「人は天職に就く勇気をもち、その天職で生計を立てる勇気をもたねばならない。『第二の人生』なんてものは幻想だ! 私もしょっちゅう無一文になったし、絵を描く以外の道で生きる誘惑には常に抵抗していた。(中略)はじめは高い値はつけずに、とにかく売ったものだ」

ピカソは、自分の作品を信じていないブラッサイの姿勢にひどく腹を立てたのだ。自分の作品に自信をもてなければ、ほかに誰がもつというのだ。

自分が作品や仕事を信じてやれば、他人もついてくる。若いアーティスト、創業したてのスタートアップや組織には、必ずたくさんの欠陥や失敗がある。すべてが完璧なレベルになるまで待つわけにはいかない。作品や仕事を世に送り出し、どんな反応を得られるか見てみなければ。プランBは用意しない。プランAに集中しきれなくなるから。

ピカソはこうも言った。

「芸術家は自分のためか、『芸術への愛』のために働き、成功は卑しいものと軽蔑するべきだ、と言う人は多い。だが、そんなのは間違いだ! 芸術家には成功が必要だ」

芸術を生業なりわいとする人々が、商業的な戦略についていかに現実的な考え方をしているかには、いつも驚かされる。非現実的で高尚な考えをもつのはアマチュアで、プロは日々の作業を淡々とこなす。ピカソはブラッサイにこう助言した。

「高すぎる値をつけるな。大切なのは、数を売ることだ。君の絵は世に出て行かなければならない」

高値をつけるのは、クリエイティブな職の若い人によく見られる過ちだ。ピカソが何年間もしたように、最初は安く売る必要がある。そうしてゆっくりと支持者を増やすのだ。できる限り多くの人の目に留まるよう努力し、収入をいちばんに考えないこと。


1 自分の作品や仕事を信頼する。第二の人生を考えない。いちばんやりたいと思うただひとつの仕事に、もてる時間と労力をすべて注ぎ込もう。最初は生計を立てるのに苦労するかもしれないが、その苦労も、価値あることをしているという実感につながるだろう。あなたが自分の仕事を100%信じなくて、ほかの誰が信じてくれるだろう。

2 サービスや製品を最初は安く売る。関心と支持者を得るのだ。売り上げることで認知度が高まり、徐々に生計を立てられるようになる。

3 ピカソによれば、儲けと誠実さを両立できない、というのは誤った考えだ。誠実とはつまり、全力で最善を尽くすこと。人々は卓越したものにお金を払う。自分の天職に忠義を尽くすために儲けを諦める必要はない。
天才はしつこい
ロッド・ジャドキンス
世界的名門美術学校であるロンドンの芸術学校のカレッジのひとつ、セントラル・セントマーティンズ講師、アーティスト。ロイヤル・カレッジ・オブ・アートで修士号取得。
世界中の大学や企業・組織でクリエイティビティに関するセミナーを主宰する他、テート・ブリテン、ナショナル・ポートレートギャラリー、ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツに作品を出展するなどアーティストとしても活躍。
世界的ベストセラー『「クリエイティブ」の処方箋』(フィルムアート社)は15か国語に翻訳されている。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)