年収1,000万円の単身者が「どのような住宅に住んでいるのかイメージがわかない」という人もいるかもしれない。年収1,000万円の適正な家賃の水準や、家賃を払い続けた場合の総額はどれくらい支払うことになるのだろうか?本稿では、年収1,000万円の単身者の適正家賃や支払う家賃総額について解説する。
年収1,000万円単身者の適正家賃はいくら?
年収が1,000万円ある単身者の適正家賃は、いったいどれくらいなのだろうか。賃貸住宅の適正家賃と住宅ローンを組む場合の返済負担率は、基準が異なるため注意したい。一般的に家賃については、手取り年収の3分の1を超えないことが目安といわれている。年収1,000万円の単身者の手取り年収は720万円程度となるため、月収にすると約60万円だ。
つまり月収の3分の1という基準に合わせると約20万円の家賃が適正といえるだろう。間取りの目安として、一般的な不動産ポータルサイトに掲載されている東京都23区の家賃20万円の物件を見ると1LDKまたは1DKの間取りが多い傾向だ。ワンルームよりも多少ゆとりのある間取りで、都心の利便性が高いマンション生活を送っているのが年収1,000万円単身者のイメージとして浮かんでくる。
家賃以外にかかる経費とは
持ち家でもかかる経費はあるが、賃貸のみかかる経費があり、全体的に賃貸住宅のほうがコストは多い傾向だ。賃貸住宅に住むと家賃以外にも以下のような経費がかかる。
賃貸・持ち家共通でかかる経費
管理費や共益費、駐車場使用料(利用する場合)、自治会費(町内会費)、火災保険料といった経費は、持ち家マンションでもかかる経費である。
賃貸の場合のみかかる経費
賃貸の場合は、持ち家と異なり更新時や退去時に費用が必要になるため、長期間住む予定であれば考慮しておきたい経費の一つだ。ただし以下の経費は、賃貸住宅に住んだ場合のみかかる経費であるが、毎月かかるものではない。
更新料
更新料は、2年ごとにかかるのが一般的だ。更新時の家賃1ヵ月分が相場といわれている。ただし更新料は、オーナーの裁量次第となるため、更新料をとらない物件もある点は押さえておきたい。保証料更新費用
賃貸借契約時に連帯保証人を頼める人がいない場合、保証会社に連帯保証人となってもらい入居できるケースもある。入居時に保証会社を利用した場合、更新時にも支払いが必要な場合が多い。ただし「入居時は連帯保証人を頼める人がいなかったが、更新時は頼める人がいる」というケースもある。保証会社との契約更新が不要な場合は、不動産会社に更新前に申し出たほうがよいだろう。原状回復費用
賃貸住宅から退去する際に入居者の使用方法が原因で発生した損耗や毀損に対しては、原状回復費用を負担する必要がある。損耗や毀損が軽ければ契約時に支払った敷金から差し引かれて清算される場合もあるため、必ずしも新たな出費が必要になるとは限らない。
持ち家の場合のみかかる費用
持ち家の場合は、1月1日時点の物件所有者に固定資産税・都市計画税がかかる。また、外壁塗装や設備に関するメンテナンスや買い替え費用は定期的にかかることになる。賃貸住宅の場合、これらの費用はオーナーが基本的に支払うので入居者の負担はない。
※経費は一例であり、物件や入居条件によって記載の項目以外に経費がかかる場合がある。
家賃を払い続けると総額いくらになるのか
ローンで購入した不動産は、毎月返済金を支払い続ける必要があるが完済すれば資産となる。しかし賃貸の場合、家賃は住んでいる限り出費していく一方だ。払い続ける家賃は、総額どのぐらいになるのだろうか。年収1,000万円の単身者の適正家賃である月額20万円をベースに考えてみよう。
5年払い続けた場合
月額家賃20万円を5年払い続けた場合、家賃の支払総額は1,200万円(20万円×60ヵ月)だ。1年以内の短期で住むならともかく、5年になるとマイホームの頭金になる程度の家賃を払うことになる。頭金を20%と仮定すると6,000万円の物件を購入できる計算だ。なお2年経過時と4年経過時には更新料の支払いも発生する。
10年払い続けた場合
同じく10年払い続けた場合、家賃の支払総額は2,400万円(20万円×120ヵ月)となる。この金額になると中古マンションを現金一括で買うことも可能だ。さらに10年という長期になると途中で家賃の値上げも考えられるだけでなく、複数回にわたって更新料も支払わなければならない。
20年払い続けた場合
20年払い続けた場合は、家賃の支払総額が4,800万円(20万円×240ヵ月)にもなるため、新築マンションを現金一括で買える金額といってもよいだろう。10年払い続けた場合と同様に家賃の値上げも複数回考えられ、更新料と合わせて総支払額はさらに膨らむ。
▽家賃水準別総支払額
居住期間 | 家賃10万円 | 家賃15万円 | 家賃20万円 | 家賃25万円 | 家賃30万円 |
5年 | 600万円 | 900万円 | 1,200万円 | 1,500万円 | 1,800万円 |
10年 | 1,200万円 | 1,800万円 | 2,400万円 | 3,000万円 | 3,600万円 |
20年 | 2,400万円 | 3,600万円 | 4,800万円 | 6,000万円 | 7,200万円 |
このように見ると賃貸の場合、年数によってはマイホームの頭金やマンション購入費用に相当する程度の家賃を払うことになるものの手もとにはなにも残らない。
一方で住宅を購入した場合、固定資産税などの税金や修繕費用は発生するが、完済後は不動産という資産を得ることができる。20万円の家賃を払うのも20万円のローンを払うのも支出する金額は同じ場合、資産構築という観点で考えると資産になる分「購入のほうが有利」といえるだろう。
賃貸ではなくマイホームをローンで買った場合は?
年収1,000万円の単身者が賃貸ではなくマイホームをローンで買う場合の借入可能額と返済額は、どの程度になるのだろうか。
年収1,000万円はどれくらいのローンが組めるのか
年収に対しどれくらいのマイホームを購入できるかという目安として「年収倍率」という考え方がある。東京カンテイが調査した「2021年新築マンション価格の年収倍率」によると、首都圏の70平方メートル新築マンションの平均価格は5,926万円、購入者の平均年収は525万円で、年収倍率は11.29倍になる。このうちいくら頭金を入れたかまでは公表されていないが、収入に対してかなり高い物件を購入している印象だ。
年収1,000万円の人が同じ平均価格の物件を購入する場合、年収倍率は5.93倍と大幅に下がる。長期的なライフスタイルを考えると、独身前提で高い年収倍率の物件を購入するのはリスクが高い。身の丈に合った物件を購入することが何より大事だ。平均価格に近い6,000万円の物件なら年収倍率は6倍なので、フルローンでも無理なく返済できるだろう。
返済額はどれくらいになるかシミュレーションする
次に、ローン返済額を以下の条件でシミュレーションしてみよう。
元利均等払い
金利1.5%
返済期間35年
上記で計算すると、毎月の支払額は19万8,757円で年収1,000万円(平均月収約83万円)に対する返済負担率は23.94%となる。手取りで考えるならば年収1,000万円の手取り収入が概算で720万円である、月にならすと約60万円(ボーナスは考えないものとする)で返済負担率は33.12%となる。家賃の支払い金額について手取り収入の3分の1以内が適正と考えるのならば、おおよそ近似する形となる。
よって年収1,000万円の人が現実的に組めるローンの目安は6,000万円程度と考えればよいのではないだろうか。
年収1,000万円ならゆとりある返済計画でマイホームが持てる
年収1,000万円の単身者は、賃貸でも持ち家でもある程度質の高い住宅に住める理想的な年収といえるだろう。あとは「高い家賃を払い続けるか」「ローンを組んでマイホームを取得するか」の選択である。賃貸に住む理由の一つとして「転勤が多く居住地が安定しないから」という考えがあるだろう。そのケースでは、現役中賃貸に住みリタイア後にマイホームを購入するのも有効な方法だ。このためには現役である間に自宅を現金で購入できるほどの貯蓄が必要になる。
転勤が定期的にある人以外は、マイホームを購入して不動産資産を築いたほうが老後生活のゆとりにもつながる。老後に家賃を支払わないで住めるのは大きい。ただし、この場合は定年に近づくにつれて年収は下落傾向になることを見据えてローンの返済計画を立てることが重要である。
本稿でシミュレーションした通り、年収1,000万円であればゆとりある返済計画を立てることが可能だ。あとは「いくらの融資を受けられるか」だが、これは借り入れる人の属性によって異なる。希望する物件の購入が可能かどうか、まずは気軽に銀行の窓口を訪れて相談してみるとよいだろう。
(提供:manabu不動産投資 )
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