この記事は2023年3月2日(木)配信されたメールマガジンの記事「クレディ・アグリコル会田・大藤 アンダースロー『ESGマクロ指数は高水準だが鉱物性燃料への依存が重しに』を一部編集し、転載したものです。

ESGマクロ指数
(画像=PIXTA)

目次

  1. シンカー
  2. 日本経済のESGマクロ指数が高水準で推移
    1. E(環境)のマクロ指数
    2. S(社会)のマクロ指数
    3. G(ガバナンス)のマクロ指数
  3. アベノミクス前の平均の―0.23から大幅に改善

シンカー

  • 日本経済のESGマクロ指数が高水準で推移していることがわかった。
  • 2022年7-9月期のESGマクロ指数は0.84と、アベノミクス前の平均の―0.23から大幅に改善している。
  • 企業の経営効率と女性の就業率の向上が大きい。
  • ただ、鉱物性燃料への依存が大きいことで、2021年1-3月期のピークの1.22からは低下してしまっている。
  • ESGマクロ指数は、E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)のそれぞれを代表する二つのマクロ指数を総合したものである。

日本経済のESGマクロ指数が高水準で推移

日本経済のESGマクロ指数が高水準で推移していることがわかった。2022年7-9月期のESGマクロ指数は0.84と、アベノミクス前(1997年4-6月期から2012年10-12月期)の平均の―0.23から大幅に改善している。ただ、鉱物性燃料への依存が大きいことで、2021年1-3月期のピークの1.22からは低下してしまっている。ESGマクロ指数は、E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)のそれぞれを代表する二つのマクロ指数を総合したものである。

E(環境)のマクロ指数

E(環境)のマクロ指数は、鉱物性燃料への依存度とテクノロジーの進歩をとられる。一つ目は、鉱物性燃料輸入のGDP比率を使う。二つ目は、貿易統計の輸出物価と企業物価統計の輸出物価の比率を使う。企業物価統計では、品質調整を行っている一方で、貿易統計は行っていない。日本の輸出品の品質が向上すれば、比率は上昇することになる。

S(社会)のマクロ指数

S(社会)のマクロ指数は、家計のファンダメンタルズと女性の社会進出をとらえる。一つ目は、資金循環統計ベースの家計貯蓄率(GDP比)を使う。家計の所得が伸びず、中間層の疲弊と、相対的貧困率が上昇してしまってきた。家計がしっかりとした資産を形成できることが、社会の安定につながると考える。二つ目は、女性の就業率を使う。女性の社会進出への動きは遅れていた。近年、機会平等への意識の変化と働き方改革などが進むことで、女性の社会進出が促進されている。

G(ガバナンス)のマクロ指数

G(ガバナンス)のマクロ指数は、企業の資本効率と利益率をとらえる。一つ目は、資金循環統計ベースの企業貯蓄率を使う。デフレ構造不況の原因は、企業の支出不足による過剰貯蓄にあると考えられる。企業は借入れや株式で資金を調達して事業を行う主体なので、企業の貯蓄率はマイナスであるべきだ。しかし、日本ではバブル崩壊後、企業が後ろ向きになり、リストラと債務削減を続けた結果、異常なプラスの企業貯蓄率が続いてしまっている。リターンが0%に近い資本を積む行為で、プラスの企業貯蓄率は資本効率が悪いことも示す。二つ目は、企業の売上高経常利益率を使う。利益よりマーケット・シェアの拡大を目指すことで、経営が歪んでしまっていた。利益率の改善は、経営効率の改善を示すとともに、企業の付加価値の向上も示す。

アベノミクス前の平均の―0.23から大幅に改善

寄与度でみると、E(環境)は、アベノミクス前の平均の―0.04から、-0.09へほとんど変化がない。鉱物性燃料への依存が、原発の停止や価格の燃料高騰で重しになっている。テクノロジーの改善で負荷を軽減している。S(社会)は、アベノミクス前の平均の―0.10から、+0.39へ大きく改善している。女性の就業率の上昇が著しい。G(ガバナンス)も、アベノミクス前の平均の―0.17から、+0.54へ大きく改善している。デフレ構造不況に苦しむ中、民間企業が構造改革をしっかり進めて、売上高経常利益率を改善させてきたことを表す。

図:日本経済のESGマクロ指数

日本経済のESGマクロ指数
出所:財務省、内閣府、日銀、総務省、クレディ・アグリコル証券
会田 卓司
クレディ・アグリコル証券会社 チーフエコノミスト
大藤 新
クレディ・アグリコル証券会社 マクロストラテジスト

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