日本酒は、いまや日本国内だけでなく、海外でも「SAKE」の愛称で強い人気を誇っている。世代や人種をこえて、人々を惹きつけてやまない日本酒の魅力とはいったい何だろうか。経営者やビジネスエリートが嗜むべき、日本酒の魅力や基礎知識をあわせて解説する。
日本酒の魅力
肥沃な大地と清らかな水が生み出した日本酒は、種類や銘柄の豊富さに加えて、温度や酒器などさまざまな飲み方があるのが特徴だ。最大の魅力は何といっても「美味しい」ということである。口にふくんだ瞬間の米本来の芳醇な香りと味わいは、他の酒にはない特有の風味として愛されている。
日本酒が文化として「深い」ことも魅力の一つだ。歴史だけでなく、その土地の風土によって個性が出ることや、酒蔵ごとに味わいが異なることなど、底知れぬ奥深さを兼ね備えている。一度日本酒に魅了されれば、交友関係や世界が「広がる」という点が経営者やビジネスエリートにおススメする理由だ。
「美味しい」という日本酒の魅力
日本酒といえば、米のふくよかな甘みや、キリっと引き締まる爽やかな口当たり、フルーティーで芳醇な香りなど、個性豊かな味わいが特徴だ。たとえ同じ銘柄であっても、原料や製造方法、米を磨く割合(精米歩合)によって甘口や辛口、端麗や濃厚など味が異なる。
日本酒の美味しさは、基本の原料である国産米と米麴、水が織りなす複雑なうま味にある。日本酒は、麹菌と酵母といった微生物の働きを利用して発酵させて造る。この過程で生み出されるアミノ酸が、「第5の味覚」として甘みや酸味などと並ぶ「うま味」の主体になっている。
味わいを左右する工程の一つが、日本酒の種類分けに用いられる精米歩合だ。磨く割合が多いほどこの数値は低くなる。一般的に、精米歩合が高い純米酒はアミノ酸が多く濃厚に、少ない大吟醸酒ほど端麗になる傾向だ。ただし、アミノ酸は雑味や苦みのもとにもなる。
このバランスをうまく取る要素が、発酵の過程で生じる甘みの成分であるグルコース濃度や、エタノールなどの辛み、有機酸の酸味などだ。この複雑な掛け合わせが、人それぞれの好みに合った美味しさの秘訣ともいえよう。
「深い」という日本酒の魅力
日本酒の起源は、縄文時代や弥生時代の西日本にあるとされる。奈良朝時代に編さんされた播磨風土記には日本酒独特の製法が記され、平安初期には現代とほぼ同じ製法で造られるようになったという。江戸時代には量産化で庶民にも流通し、地方で造り酒屋が増えていく。技術の発展で製法は多様化し、時代とともにブームを巻き起こしてきた。
現代の日本酒の多様性をけん引するのは、地方ごとに異なる独特の味わいだろう。南北に長く寒暖差のある日本では、気候や自然環境、日本酒に使用する米や水の種類は地方により異なる。その土地の食材に合った酒造りがなされているともいえる。
醸造元である酒蔵も奥深さの一つだ。その醸造元でしか販売していない限定酒を購入できたり、酒造りの見学で酒職人や杜氏自ら説明してくれたり、試飲できたりと楽しみ方も多い。これらの知識は、ビジネスに役立つこともあるだろう。