日産の人気ミニバンであるセレナ。昨年11月にフルモデルチェンジして新型モデルが発売されています。今回は、セレナと、そのライバルを比較してみます。ライバルとなるのは、トヨタのノア/ヴォクシーの兄弟車と、ホンダのステップワゴンです。文・鈴木ケンイチ/写真・PBKK
セレナのライバルとなるのはノア/ヴォクシーとステップワゴン
日産のセレナは、排気量2リッター・クラスのエンジンを搭載する、両側スライドドアを持った3列シートのミニバンです。そのライバルとなるのが、トヨタではノアとヴォクシーの兄弟車、そしてホンダのステップワゴンです。現在では、3モデルそれぞれにエンジン車とハイブリッドが用意されています。
昨年は、これらの3モデルがすべてフルモデルチェンジを行いました。1月にノア/ヴォクシー、5月にステップワゴン、そして11月のセレナです。セレナに関しては、11月にエンジン車が投入され、ハイブリッドは2023年春からの発売となります。
つまり、3モデルの本格的な販売合戦は2023年春以降にスタートすることになります。
3モデルのコンセプトと新型車の特徴
セレナ、ノア/ヴォクシー、ステップワゴンは、同じカテゴリーの車となりますが、当然、それぞれ固有のコンセプトがあり、それぞれに新型モデルのトピックがあります。
セレナの伝統とも言えるコンセプトは「BIG」「EASY」「FUN」です。広さ、使いやすさ、楽しさを追求するというのが歴代セレナの守る方針であり、新型モデルも、当然、そのコンセプトを踏襲しています。そして、新型セレナのトピックは、他グレードよりも100万円以上も高い最上級グレード「LUXION(ルキシオン)」の追加と、そこに日産の最先端技術である「プロパイロット2.0」を採用したこととなります。「プロパイロット2.0」は、高速道路などの一定条件下で、運転手が手離しを可能とする運転支援技術のこと。ゴージャスさと先進性を売りにしています。
ノア/ヴォクシーのコンセプトは「ミニバンならではの嬉しさの追求」です。快適さ、便利さ、安心感を高めてきました。新型のトピックは、車の骨格となるプラットフォームをTNGAプラットフォーム(GA-C)に刷新。優れたパッケージングによって使い勝手の良さを向上させ、また、最新の運転支援システムも採用しました。オプションとして高速道路の渋滞時などの一定条件下で、運転手の手離し運転を可能とする「アドバンストドライブ」を用意しています。
ステップワゴンは、1996年に「ファミリー・ムーバー」として誕生。初代モデルから現在まで常に家族にこだわって開発が続けられてきました。最新モデルでは「素敵な暮らし」がコンセプトに掲げられ、暮らしを豊かにするアイテムを目指して開発されています。新型モデルの特徴は、初代に戻ったようなシンプルですっきりとしたルックスです。サイズも全長4800mmとライバル3モデル中、最も長くなっています。
それぞれ異なるデザインが用意されている
セレナ、ノア/ヴォクシー、ステップワゴンには、それぞれ2種類以上のエクステリア・デザインが用意されています。
セレナは、スタンダードなデザインと、ドレスアップされたダイナミックな「ハイウェイスター」の2種類。追加された最上級グレード「LUXION(ルキシオン)」は「ハイウェイスター」と同じエクステリアとなります。
ノア/ヴォクシーには3つのデザインが用意されています。ノアが「堂々・モダン・上質」をキーワードにするデザインと、「王道・アグレッシブ」のデザイン。そしてヴォクシーは「先鋭・独走」がキーワード。それぞれに、異なるグリルとヘッドライト、バンパーが採用されています。
ステップワゴンのデザインは、プレーンな「AIR」と、精悍な「スパーダ」の2つ。今回は、より上質さをプラスした「スパーダプレミアムライン」も用意されています。
パワートレイン/走行性能の違い
3モデルのパワートレインは、エンジン車とハイブリッドがそれぞれ用意されているのも特徴です。
セレナのパワートレインは2リッターのエンジン車と、1.4リッター・エンジンを使うハイブリッド「e-POWER」。エンジン車はFFと4WDで、「e-POWER」はFFのみ。「e-POWER」は、エンジンが発電に徹し、モーターは駆動に徹するというシリーズ式ハイブリッドになります。
そのパワートレインのスペックは、2リッター・エンジンで、最高出力110kW(150PS)・最大トルク200Nm。燃費性能はFFが最高13.4km/l(WLTCモード)、4WDが11.6km/l(WLTCモード)となります。ハイブリッドの「e-POWER」は駆動用モーターの最高出力が120kW(163PS)・最大トルク315Nm、燃費が最高20.6km/l(WLTモード)となります。
ノア/ヴォクシーのパワートレインも、2リッターのエンジンと1.8リッターを使うハイブリッド。共にFFと4WDを用意します。ハイブリッドは、プリウスと同じシリーズ・パラレル式。エンジンとモーターの2つの力をミックスして走行します。ハイブリッドの4WDは、後輪をモーター駆動するE-Fourという方式です。
2リッター・エンジンのスペックは、最高出力125kW(170PS)・最大トルク202Nm、燃費はFFで最高15.1km/l(WLTCモード)、4WDで最高14.4km/l(WLTCモード)となります。ハイブリッドのスペックは、システム最高出力103kW(140PS)、燃費性能はFFで最高23.4km/l(WLTCモード)、4WDで22.0km/l(WLTCモード)となります。
ステップワゴンのパワートレインは、エンジン車が1.5.リッター・ターボで、ハイブリッドが2リッター・エンジンを使う「e:HEV」となります。駆動方式はエンジン車がFFと4WDで、ハイブリッドはFFのみとなります。ホンダのハイブリッド「e:HEV」は、基本的にモーター駆動優先のシリーズ式ですが、高速道路の一部だけエンジン力を使うパラレル式になります。いわゆるシリーズパラレル式ですが、フィーリングはシリーズ式に近いというのが特徴となります。
スペックは、エンジン車で最高出力110kW(150PS)・最大トルク203Nm、燃費がFFで最高13.9km/l(WLTCモード)、4WDが13.3km/l(WLTCモード)となります。ハイブリッドはモーターが最高135kW(184PS)・最大トルク315Nm、エンジンが最高出力107kW(145PS)・最大トルク175Nm。燃費は最高20.0km/l(WLTCモード)となります。
3列目シートとラゲッジ
ミニバンの利便性で重要度が高いのが3列目シートの格納方法でしょう。セレナの場合は、3列目シートは左右に引き上げる方式です。床下に収納スペースが用意されています。また、セレナはバックドアが窓だけで開閉できるデュアルバックドアであることが特徴です。
セレナ、ノア/ヴォクシー、ステップワゴンは、ライバルと呼ばれるようにパワートレインやデザイン面では、それぞれ、同じようなメニューを用意しています。デザインや細かなスペックの差はありますが、個性という意味では、どれも魅力的と言えるでしょう。やはり、車を実際に選ぶときは、実車に触れて考慮するのがおすすめです。