インフレ時には、株も債券も下落する可能性がある。主要金融商品の変動率(ボラティリティ)が上がり、値動きが通常時と大きく変わるからだ。インフレが高止まりで長期化するなら、これらの主要資産のみによる分散投資が効果を発揮しないこともありえる。今回はそういった事態に備えられるよう、インフレに強い資産について紹介する。

インフレに強い資産は?

インフレに強い資産とは? インフレからポートフォリオを守る投資先を紹介
(画像=Deemerwhastudio/stock.adobe.com)

インフレに強い資産として、一番に上げられるのは実物資産である。商品、貴金属、不動産など、それ自体に価値のある資産を実物資産という。債券や株のように金利や配当がつく資産ではないため、低金利のときに人気化することが多い資産だ。

インフレ時には実物が値上がりすることが多いので、実物資産はインフレに強い資産、インフレヘッジ用の投資資産として注目される。

また、実物資産は金融システムに不安が生じた際の安全資産としても注目される。市場が地政学リスクの発生などで危機回避(リスクオフ)に傾いたときにも買われることが多い。現に米地銀シリコンバレーバンクの破綻で海外では金価格が上昇しており、円ベースでは2023年3月に過去最高値をつけた。

通貨の価値が下がるインフレ時には、投資資金は金へ資金回避されることが多い。金はリターンが安定しており、リスク分散にも効果的なアセットとされている。

金の価格の長期チャートをみると、ゼロ金利のリーマンショック前後(2009年頃)やコロナショック前後(2020年頃)に強かった。インフレ時の1980年頃や2021年も上昇が顕著だ。足元でも金の価格は円ベースで過去最高水準に達している。

▽金の過去50年の価格

金の過去50年の価格
出典:米GOLDPRICE

不動産

物価が上昇することで、土地や建物の価値も上昇するため、不動産投資はインフレ対策としても人気がある。ただし、インフレが長期化すると、高金利政策が導入されるため、住宅ローンの金利が上昇し市場に悪影響を与えることがある。

株式

適度なインフレは、商品・サービス価格の上昇によって企業の収益が上昇するため、株式市場にも好影響が及ぶ可能性がある。適度なインフレは株価上昇のサポート要因である。

しかし、高インフレが長期化して企業のコストが上昇する場合、リセッション、企業業績悪化で株式市場に悪影響が及ぶ。特に、過去の経験から、スタグフレーションやハイパーインフレへの警戒心は大きい。

適切な投資判断を行うためには、市場の動向や経済情勢を注意深く観察する必要があるだろう。

外貨・外貨建て資産

インフレ時には通貨価値が下がる。インフレ率の高い国の通貨が売られるか、もしくはインフレ抑制のために利上げして金利の高い国の通貨が買われる。為替の変動率(ボラティリティ)も高まる。ハイパーインフレが起きるようなことがあると、その通貨での資産は大きく下落する。

その被害を避けるためには、投資を日本円やドルばかりにするのでなく、外貨・外貨建て資産などに投資することだ。通貨の分散投資もインフレ時には必要だろう。

その他商品

インフレが発生すると、原油や金属といった商品の価格も上昇するケースが多い。資源価格は、インフレが発生した場合、需要が高まることで上昇する傾向がある。

こうした商品への投資はインフレ対策の一つとしても有効だ。しかし、商品の値動きはボラティリティが高く、高リスクでもあることには留意しておくべきだろう。

以上のように、インフレ期には様々なアセットに投資することで、ポートフォリオのリスクを分散し、インフレによる影響を最小限に抑えることができる。市場のボラティリティが上がり、リスクも増加している昨今、年金など長期の投資家は安定的にリターンを上げるため、ここまで紹介したようなオルタナティブ投資の比率を上げている。

インフレに弱い資産

逆にインフレに弱い資産としては、現預金、保険などがその代表として挙げられる。また年金や債券もインフレでダメージを受ける可能性がある。債券は一般的に守りの資産とされているが、インフレに耐えられない場合もあり得ることには注意したい。

以下で紹介する商品に重点的に資産を割り当てている場合は、インフレに備えてリバランスを考えたほうがよさそうだ。

現預金(キャッシュ)

インフレが進行すると、必要な生活費や投資資金が増加するため、キャッシュを保有しているだけではインフレに対処できない。

相場のボラティリティが高いときには、キャッシュ比率を高めることも投資の損失を防ぐための一つの方向ではある。しかし、インフレ時にはキャッシュが相対的に価値を下げることを理解しておくべきだろう。

保険

基本的に保険はインフレに弱い金融商品である。定額保険や定期保険は、契約時に決められた保険金額が満期時に支払われるが、契約時からインフレが進むと保険金額の価値が下がることになる。

ただ、必ずしも全ての保険がインフレに弱いわけではない。比較的インフレに強い保険商品として変額保険が挙げられる。変額保険は、保険料を投資に回しその運用益によって保険金を支払う保険商品だ。運用益が高ければ、保険金も多く支払われる。そのためインフレが進行した場合でも、株式や債券などの資産価値が上昇する可能性があり、運用益も高くなる可能性がある。

債券

債券は代表的な安全資産のアセットであり、必ずしもインフレに弱いわけではない。債券には基本的には満期があり、満期まで保有すれば額面で戻るからだ。

ただ、高インフレ時に中央銀行が利上げを急いだ場合に、金利が急騰し債券価格が急落すると、含み損は拡大する。何かの理由で資金が必要となり、債券を解約せざると得ない場合、評価損が出てしまう。またリセッション時に債券の発行体が倒産することもありうる。強烈なインフレ時やインフレによるリセッション時には、債券もボラティリティとリスクが高まるのだ。

しかし、債券にもインフレ連動債としてインフレをヘッジできる商品もある。

年金

年金もまたインフレーションに弱いとされている。

たとえば国民年金など従来型の確定給付年金は、老後の生活資金を長期で資産形成して将来受け取る仕組みだ。インフレが進むと、物価や生活費が上昇し、その分、年金の価値が相対的に低下する。

しかし現在は、確定拠出年金という、月々の積立額が決められ運用結果で年金の額が変わる制度が普及してきている。確定拠出年金やつみたてNISAなどは、運用次第でインフレがプラスにもなり得る。

インフレ時の主要アセットの値動き

ここで改めて、資産運用における主要アセットである株式と債券が、インフレによってどのような影響を受けるかまとめておこう。

基本的に株式は、リスクこそ高いが企業の成長にともなう高リターンが期待できる。債券は長期のリターンは株式に劣るがリスクは少ない。しかしインフレ下だと、これら主要なアセットクラスの値動きが通常時と違うものになることが多いため、適切なポートフォリオ管理が必要だ。

株式

物価の上昇で商品やサービスの価格が上昇するため、インフレは一般的に企業の収益にプラスの影響を与える。企業の売上高や利益が上昇するため株価も上昇し、株式市場にはプラスの影響を与える。しかしこれは、あくまでも国の成長率に応じた適度なインフレの場合だ。

仮に物価上昇が高止まりし、インフレが長期化すると、仕入れや賃料など企業のコストも上昇する。企業業績にマイナスの影響が出はじめ、株価にも悪影響を与える。

また、インフレが高止まりすると中央銀行は政策金利を上げざるを得ないが、利上げは市場への資金供給量が減るため株式市場にはネガティブにはたらく。

債券

中央銀行はインフレを抑制するために金利を上げる政策をとる。金利が上昇すると債券の価値が下落する。

これが適度な利上げなら大きな問題はない。しかし、利上げペースや利上げ幅が大きいと、通常安全資産である債券がリスクの高い投資となる。

債券は償還まで保有すれば額面で償還されるため、価格変動へのリスクは限定的だとされており、安全資産と考えられる。しかし、利上げペースや幅が大きいと、債券価格は急落する。

cool

そもそもインフレとは

インフレとは、物価水準の上昇によって通貨価値が低下する状況である。物価が上がると、同じお金で買えるものの量が減少することで通貨の価値が下がる。たとえば、現在1,000円で買える商品が1年後に物価上昇で2,000円になっていたとすると、現金1,000円の価値は1年後に半減することになる。これがインフレだ。

インフレが起こる最も一般的な原因は、商品の需給のバランスが崩れ需要が供給を上回ることだ。大きく分けて、需要の拡大で起こる(デマンドプル)インフレと、企業の生産コスト上昇で起こる(コストプッシュ)インフレがある。

デマンドプルインフレ

デマンドプルインフレとは、商品やサービスの需要が増加することによって、価格が引き上げられて物価が上昇する現象である。たとえば、人口が増加しそれに伴って住宅需要が増加すると、住宅価格が上昇することで物価が上昇する。これがデマンドプル型のインフレだ。

コストプッシュインフレ

コストプッシュインフレは、企業などの生産コストが上昇し、それが商品やサービスの価格に反映されて物価が上昇する現象である。原材料、原燃料、労働力などの生産コストが上昇することによって、企業が商品やサービスの価格を引き上げざるを得ず物価が上昇する。これがコストプッシュ型のインフレだ。

今回のインフレは、コロナ禍からの経済V字回復で需要が急増して商品不足のところに、ロシアのウクライナ侵攻で資源や農産物の需給が逼迫して原材料、原燃料費が上昇したことが原因である。デマンドプルとコストプッシュの複合的なインフレだ。

インフレによる経済悪化の例

高インフレが続くと、生活コストが上昇して家庭の経済的負担が大きくなるため、景気や雇用に悪影響が生じる。政府や中央銀行にとって、インフレは抑制しなくてはならない重要な問題だ。

インフレの弊害は、通貨価値が大きく変動することで、様々な金融商品のボラティリティが上昇し、通常時とは違う動きをすることである。運用においては、ボラティリティはリスクそのものだと考えられている。

インフレによる経済悪化や市場混乱の代表例がスタグフレーションとハイパーインフレーションだろう。

スタグフレーション

スタグフレーションとは、景気後退(リセッション)時に物価が上昇する現象である。代表的な例としては、1970年代のオイルショック時に起こったスタグフレーションがある。原油高など原燃料費の上昇で高インフレとなり、経済が停滞し金融市場は混乱した。今回はオイルショック時以来40年ぶりのインフレ率なので市場の警戒心が強い。

ハイパーインフレーション

ハイパーインフレーションとは、急速かつ異常な幅で物価が上昇する現象である。政府や中央銀行が不適切な財政政策や金融政策を行った場合に発生することが多い。市民の生活が混乱し、社会経済活動が麻痺することもありえる。

代表的な例が、第一次世界大戦後のドイツだ。ドイツは巨額の戦争賠償金を支払うために通貨を大量発行した。その結果ハイパーインフレを招き、インフレ率は1兆倍を超えるような異常な事態となった。マルクの資産価値は暴落し、ドイツ経済は大混乱に陥った。

過度なインフレを防ぐには

インフレを防ぐためには、商品の需要と供給のバランスを取り戻すことである。利上げなどで通貨供給量を制限、需要を減らす政策や生産増をアシストし供給を増やす政策を取ることで物価上昇を抑えることができると考えられている。そのため現在、米FRBをはじめ世界の主要国の中央銀行は政策金利を引き上げている。

ただ、利上げは市場の資金供給を減らすため、リセッションを引き起こす可能性があり、株安の契機にもなるだけに慎重に行う必要がある。現在の金融市場が、米国の中央銀行であるFRB(連邦公開市場委員会)などによる金融政策と、消費者物価指数(CPI)などで示されるインフレ率との綱引きで動いているのはそのためだ。

日本のインフレ状況

ここで、日本の長期トレンドを振り返っておこう。

日本は90年代のバブル崩壊以降、20年以上の長期にわたってデフレーション(デフレ)が続いた。デフレは企業業績の拡大をさまたげ、日本経済の成長を阻害する。日本経済や日本株が米国に比べて大きくパフォーマンスに差がついたのはそのためだ。日経平均はいまだに平成バブル時の過去最高値を抜けない。

現在、日本はインフレ傾向にある。先にも述べたとおり過度なインフレは景気に悪影響を与える場合もあるが、日本のインフレ率は世界の先進国に比べて低い状態だ。トレンド変換によって、今後20年は日本と日本株の時代になることがあり得ないわけではない。

▽日本のインフレ率も上昇傾向だが欧米主要国に比べると低い

経済状況を見ながら長期分散投資のリバランスを

長期資産運用においては、分散投資でリスクを避け大きな損失を防ぐことが非常に大事だ。最悪を避け、効果的なリターンを期待するためにはリバランスが必要である。日本の国民年金を運用しているGPIFや多くの年金ファンドが、月次、四半期毎、年ごとなどの定期的な期間で、アセットのリバランスをするのはそのためだ。

経済状況をつねに把握し、投資のリバランスをするのは易しくはない。しかし、専門家やアドバイザーの意見も参考にしながら、少しずつでも見直しを行うべきだろう。特に、現預金の比率が高すぎる場合、株式投資の比率が高すぎる場合はリバランスを考えてみてはいかがだろうか。

融資型クラウドファンディング「COOL」を活用すれば、最低1万円から円建てで値動きのない 手堅い利回り投資をすることができる。

・平均利回りは4.5%(税引前)*23年10月時点
・3ヶ月〜12ヶ月程度の短期運用ができるファンドが多数
・円建てで株のような値動きなし
・最低1万円から投資ができる

過去には、高級焼肉店やすっぽん・フカヒレ店の優待券がもらえる特典付きファンドや、 より安心感のある保証付きのファンド等、申し込みが多く募集開始直後に満額となったファンドもある。

気になるファンドの投資機会を見逃さないためにも、まずは口座開設をしてみてはどうだろうか。

詳細&無料口座開設はこちらから

cool