本記事は、小澤美佳氏の著書『テキストコミュニケーション力の基本』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。
テキストメッセージ3つの厳禁 (1)緊急の依頼
相手に急な依頼をするときには、コミュニケーション手段としてテキストは向きません。手段を選ぶ際には、「スピード感」と「双方向性」を重視しましょう。
緊急の依頼では、とにかく「速さ」が求められます。かと言って、一方的に依頼しただけでは、相手が依頼に気づかない、内容を正確に理解できないといった可能性があります。
ここで問題です。
- 問題
- 現在あなたは自宅でリモートワークをしていますが、トラブルが発生したため、上司に判断を仰ぐ必要があります。緊急性もある状況で、できるだけ速やかな対応が必要です。このとき、どのような手段で上司にアプローチするのがよいでしょうか?
- 選択肢
- A チャット・メール
B 電話
C テレビ電話
D 対面
- 正解 「B 電話」
緊急時に連絡をとりたい相手がそばにいない場合、電話が最善の連絡手段となります。
とくに、仕事をオンラインでこなす人の場合、仕事相手から電話がかかってきたら、「何か緊急事態では?」と考えるはず。「何か緊急の用件かもしれない」という緊迫感が、相手にも伝わります。
チャットの場合、すぐに用件を発信することができる点で「速さ」は優れているかもしれませんが、メッセージを相手が即座に見てくれるとは限りません。チャット上で「在席」を示すランプが点灯していても、相手は打ち合わせ中など、すぐに確認や対応ができないケースも十分に考えられます。仮に相手がすぐメッセージを確認したとしても、その場で即座に質問をして正確な状況を把握できたり、疑問を解消できたりするかはわかりません。
「在席」時はランプが点灯するチャットもある(Slackより)
ただし、電話をかけても相手につながらない場合は、取り急ぎチャットで用件を伝えておくのも1つの方法です。
テキストメッセージ3つの厳禁 (2)議論
議論は相手の顔を見て、雰囲気やニュアンスをくみとりながら行なうのが基本です。テキストコミュニケーションで議論がはじまりそうなときは、「テレビ電話で少し話しませんか?」とひと言切り出し、ツールを切り替えましょう。
次のようなケースでは、あなたならどのようにしますか?
- 問題
- あなたの組織では、リモートワークを運用するにあたり、データの管理方法や勤怠、評価制度など、社内ルールを見直すことになりました。見直し案はまだ定まっておらず、意見が多数割れている状況です。このディスカッションは、どのツールで行なうのが適していますか?
- 選択肢
- A チャット・メール
B 電話
C テレビ電話
- 正解 「C テレビ電話」
テキストコミュニケーションで、とくに対立的な議論がはじまりそうな場合、やりとり自体がどんどんとげとげしくなる傾向があります。言い争いになり、収拾がつかなくなることも。
そうなる前に、テキストでのやりとりからテレビ電話に切り替えて、お互いに顔を見ながら会話をしましょう。
そのほうが話は早くまとまりますし、無用な言い合いを防ぐことができます。お互いに気持ちよく働くことにもつながります。
電話でも声色や声のトーンから相手の雰囲気は伝わってきますが、やはり表情がわかるほうがより理解しやすいでしょう。
テレビ電話を使う場合は、カメラ機能をオフにしていたら電話と変わりません。相手が顔出ししておらず、かわりに画面に映し出された相手のアイコン画像を見て話すのは味気なく、話しにくいものです。できればカメラ機能をオンにして、顔を出して出席しましょう。
たとえば、「わかった」というひと言の真意を、テキストや声のトーンだけで判断するのは、なかなか難しいものです。相手がしきりにうなずきながら「わかった」と言っているなら、「じゃあ、今日のディスカッションは大丈夫ですね」と言って問題ないかもしれません。けれども、相手が
議論をするときは、相手の顔を見て会話をする。これが基本です。
テキストメッセージ3つの厳禁 (3)ネガティブな情報
ネガティブな内容をテキストで伝える際は、リアルのときと同じように個別で相手に伝えるのがよいです。また、できればテキストのみではなく、相手の顔を見ながら具体的に伝えましょう。
テキストでネガティブな情報を伝えるときは、「伝える場所や言い方を考える」といった、相手に対する配慮が必要です。
実際に会って話すと優しいのに、チャットでとげとげしい発言をする人はいます。これは発信者の人格の問題というよりも、ただ「相手の顔が見えないから言えてしまう」ケースが多いように思います。
また、テキストでネガティブな情報を伝える際に、複数の人が閲覧できる場だと見せしめのようになります。「個別に伝える」ことに加えて、テレビ電話などで、できるだけ「相手の顔を見ながら伝える」ようにしましょう。
2018年、中米ベリーズへ移住し、現地で観光業の会社を起業。2019年、ニットへ入社し、営業・人事を経験後、広報部署の立ち上げ。メディアアプローチ、SNS、各機関からの表彰などの成果を実現しながら、インナーコミュニケーションの設計・運営にも携わる。
メンバー500名がリモートワークで働くニットでは「働く」を通じて幸せになれる組織運営を目指しており、本書のテーマである「テキストでのコミュニケーション力」に定評がある。
現在、広報ノウハウを発信する傍ら、オンラインでのセミナー講師やイベントのファシリテーターなども務める。Twitter(@mica823)のフォロワー数は3.7万人(2022年12月7日 現在)。※画像をクリックするとAmazonに飛びます