本記事は、小澤美佳氏の著書『テキストコミュニケーション力の基本』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。
相手に行動してもらいやすい「ひと工夫」を加える
相手に何かお願いをして協力してもらうというのは、「相手の貴重な時間を使って行動してもらう」ことです。また、お願いばかりが続くと、相手は耳をふさぎたくなります。お願いのメッセージは、相手に気持ちよく動いてもらうことを意識しましょう。
親しい間柄ならば問題ないかもしれませんが、用件を端的に伝えるだけでは一方的な要求に思え、相手への配慮が感じられません。
例 用件を端的に伝えることが「逆効果」になる
とくに忙しい相手だと、アンケートに回答する気はあったとしても、「この忙しいときに……今すぐ答えろってこと?」などとネガティブな反応になる可能性があります。
依頼の目的が明記されていてはじめて、相手はアクションを起こす動機が得られます。さらに期日の明記があることで、相手は予定が立てやすくなります。
例 相手に行動してもらいやすい「ひと工夫」(1)
「お手数をおかけしますが」や、「お願いできますか?」といったひと言に、忙しい相手にお願いする際の配慮が感じられます。
例 相手に行動してもらいやすい「ひと工夫」(2)
所要時間の目安が示されていると、「2分なら今すぐ回答しようかな」などと、行動してもらえる確率が高まります。
また、「お忙しいところ申し訳ありません」など、相手への配慮がひと言あると、そのあとのお願いも押しつけがましくありません。
【まとめ】お願いをするときのひと工夫
▶お願いをする目的、期日を明記する
▶相手に時間を使ってもらうことへの配慮を示す
「お忙しいところ恐縮ですが、お時間をいただけると幸いです」
▶アンケートなど、所要時間の目安がわかる場合は、ひと言添える
件名に【入力〇分】、本文に「所要時間は〇分です」
▶相手がお願いを忘れていると感じたら、リマインドを送る
社内向けの催促メールの例
- 「〇〇につきまして、ご確認状況はいかがでしょうか。ご多用のところ恐縮ですが、期日は〇月〇日となっておりますので、念のため連絡を差し上げました」
- 「 行き違いであれば申し訳ございませんが、まだ私の方で確認ができておりませんので、状況確認のため連絡させていただきました」
社外向けの催促メールの例
- 「〇〇に関して、ご尽力いただき感謝申し上げます。いよいよ来週〇日に先方に提出予定ですが、お困りごとやご不明点などございませんでしょうか。私どもで何かできることがありましたら、何なりとお申し付けくださいませ」
共通
- 冒頭に【ご確認】をつける
- 「お忙しいところ大変恐縮ですが、〇月〇日〇時までにご返信いただけると幸いです」
「ここ」「それ」など、あいまいな指示語は誤解のもと
「あれ」「これ」「それ」といった指示語や、「先日」「先方」といったあいまいな言葉は、内容が正しく伝わらず、誤解を生む原因となるので避けましょう。とくにテキストコミュニケーションでは、5W1Hはしっかりと意識しましょう。
「あれ」「これ」「それ」といった指示語は、前提を共有していないと正しく内容が伝わりません。また、「今回」「先日」といったあいまいな言葉も、正しく内容が伝わらない原因となり得るので使用を避け、具体的な言葉に言い換えましょう。
次の〈よい例〉では、日付や資料名、ページを指定して具体的に伝えています。
次は口頭だとありがちな会話ですが、〈悪い例〉では、誰に何をいつまでにしてほしいのか、一度のメッセージでは読みとれません。
「今度」はいつ頃のことか(いつまでに用意するか)、クライアントに持って行く資料が複数あるとしたら、どの資料を指すかなど、できるだけ解釈の幅が生まれないようにしましょう。
テキストコミュニケーションでは、5W1H(When:いつ、Where:どこで、Who:誰が、What:何を、Why:なぜ、How:どのように)を、意識的に示すくらいがちょうどいいです。
人によって定義が異なる言葉は使わない
「午後イチ」「本日中」「きちんと」など、人によって定義が異なる単語や、「結構です」「大丈夫です」といった解釈が広がる言い回しには注意が必要です。言った、言わないのトラブルを避けるためにも、5W1Hをしつこいくらい意識しながら、できるだけ具体的な単語で表現していきましょう。
「午後イチ」は、相手によって12時であったり13時であったり、認識が分かれる可能性があります。具体的な時刻を明記しましょう。
次の〈悪い例〉では、発言者が指す「ちゃんと」の定義や範囲がよくわかりません。相手が具体的な行動に移せる言い回しをしましょう。
「考えておく」は、人によって純粋に「検討する」を意味することもありますが、断るときの婉曲な言い回しで使われることもよくあります。
テキストコミュニケーションでは、人によって定義が異なり、解釈が広がるあいまいな言い方はやめましょう。
人によって定義が異なる主な単語と、よくある疑問
2018年、中米ベリーズへ移住し、現地で観光業の会社を起業。2019年、ニットへ入社し、営業・人事を経験後、広報部署の立ち上げ。メディアアプローチ、SNS、各機関からの表彰などの成果を実現しながら、インナーコミュニケーションの設計・運営にも携わる。
メンバー500名がリモートワークで働くニットでは「働く」を通じて幸せになれる組織運営を目指しており、本書のテーマである「テキストでのコミュニケーション力」に定評がある。
現在、広報ノウハウを発信する傍ら、オンラインでのセミナー講師やイベントのファシリテーターなども務める。Twitter(@mica823)のフォロワー数は3.7万人(2022年12月7日 現在)。※画像をクリックするとAmazonに飛びます