この記事は2023年3月13日に「第一生命経済研究所」で公開された「景気予測調査から見た23年度業績見通し」を一部編集し、転載したものです。
23年度は増収減益計画
3月13日に公表された2023年1-3月期法人企業景気予測調査は、今年2月下旬にかけて資本金1千万円以上の法人企業に対して行った景気予測調査であり、来期の業種別企業業績計画を予想するための先行指標として注目される。
そこで本稿では、今年4月下旬からの今年度決算発表において、来年度の企業業績計画の好調さが見込まれる業種を予想してみたい。
下図は、法人企業景気予測調査の調査対象企業の各調査時期における売上高と経常利益計画の年度見通しの推移を見たものである。まず売上高を見ると、23年度は3期連続の増収計画となっている。このことから、決算でも来期の売上高が好調な計画となる業種には注目が集まるものと推察される。
一方の経常利益も、全体で今年度は+3.5%の増益計画となっているが、コスト負担増等により、来年度は▲1.2%と減益に転じる計画となっている。このことから、4月下旬からの決算発表では、多くの業種で来年度減益計画が出てくることが予想される中、特に減益幅が控えめな非製造業で強めの計画が打ち出される業種には注目が集まるものと推察される。
大幅増収期待の「宿泊、飲食サービス」「生活関連サービス」「自動車」
以下では、4月下旬からの決算で、来季売上高計画で高い増収率が期待される業種を見通してみたい。下表は業種別売上高計画を22年度と23年度の前年比で比較したものである。
結果を見ると、23年度は「木材・木製品」「石油・石炭」「非鉄金属」「鉱、採石、砂利採取」「電気・ガス・水道」以外の全業種で増収計画となっている。中でも、増収率が高い業種は「宿泊、飲食サービス」「生活関連サービス」「自動車・同付属品」「はん用機械器具」「その他の輸送用機械」であり、二桁増益計画となっている。
なお、「生活関連サービス」を詳細に見ると、我々の生活に密着したクリーニング業や理容業、美容業、銭湯、スーパー銭湯、エステティック業、リラクゼーション業、ネイルサービス業、旅行業、結婚相談業、家事サービス業、冠婚葬祭業、等になる。また、「はん用機械器具」を詳細に見ると、ポンプ・圧縮機械、ボイラ・原動機、一般産業用機械・装置、等の製造業になる。
したがって、「宿泊、飲食サービス」「生活関連サービス」については、23年度は指定感染症見直しやインバウンド消費の拡大等が進み、移動や接触を伴う経済活動が正常化に向かうことが想定されている可能性が推察される。
また、「自動車・同付属品」や「その他の輸送用機械」「はん用機械器具」については、コスト増にともなう価格転嫁の影響が大きいことが推察されるが、半導体などの部品不足の緩和により、ペントアップの需要回復も見込んでいることが予想される。
「医療・教育」「生活関連サービス」「職業紹介、労働者派遣」「繊維」も大幅増益計画
続いて、経常利益計画から23年度の業績拡大が期待される業種を見通してみよう。結果を見ると、多くの業種で減益計画となっており、これは諸々のコスト増が主因と推察される。
こうした中、増益率が高い業種は「電気・ガス・水道」「宿泊、飲食サービス」「石油・石炭製品」「医療・教育」「生活関連サービス」であり、いずれも二桁を大きく上回る増益計画となっている。
特に、「宿泊、飲食サービス」「生活関連サービス」「医療・教育」については、コロナの指定感染症見直しやインバウンド消費の更なる増加が予定されていること等により、経済が正常化に向かう動きが寄与してい可能性が推察される。
また、今期は赤字計画となっている「電気・ガス・水道」や「石油・石炭製品」も2割以上の増益計画となっている。いずれも化石燃料等の原材料コストが下がっていることに加えて、「電気・ガス・水道」では、すでに7電力会社が政府に申請している電気料金の引き上げや一部の原発再稼働の効果が寄与している可能性があろう。
さらに、これ以外にも高めの増収計画を立てている「はん用機械器具」や「その他の輸送用機械器具」に加え、「職業紹介、労働者派遣」や「繊維」等も2桁増益を計画していることにも注目だろう。
なお、日銀が4月4日に公表する3月短観の業種別収益計画(大企業)は法人企業景気予測調査に比べて聞き取りのタイミングが若干遅いことから、3月短観における大企業の収益計画も期末決算と来期業績見通しを読み解く手がかりとして注目したい。