GAFAM(ガーファム:Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)は、現代のテクノロジー業界において巨大な影響力を持つ、大手企業5社を指します。世界中で利用されるサービス・製品を提供し、オンライン検索、モバイルデバイス、ソーシャルメディア、電子商取引、クラウドサービスなどの分野でリーダーシップを築いています。
GAFAMは現代のビジネスにおいてそのオンラインプレゼンス(存在感)は非常に重要です。その戦略と成功の要因、最新の動向を理解することは自社のDX推進やイノベーション実現を語るうえで必要不可欠です。この記事では、GAFAM各社の強みと競争上の優位性の理由、マーケティングに与える影響、そしてこれらの巨大企業と競争できる企業力をつけるにはどうすべきかを考察、解説します。
GAFAMとは
はじめに、GAFAMについて基本的な概要を解説します。
GAFAMとは
GAFAMとは、Google・Amazon・Facebook(現Meta Platforms, Inc)・Apple・Microsoftの企業名の頭文字をとった呼び名で、ガーファムもしくはガファムと発音されています。これらの企業はかつて単純に「IT企業」などと呼ばれていましたが、今ではDX(デジタルトランスフォーメーション)をどこよりも早く実現し、社会にとってなくてはならないサービスや商品を提供しているイノベーション企業と見られています。
GAFAMを構成する5社
それぞれどんなサービス/商品を提供しているのかを見てみましょう。
Google:「ググる」という言葉が生まれたほどの世界最大の検索エンジン
Amazon:世界最大のオンラインショッピングサービス
Facebook(現Meta Platforms, Inc):世界最大規模のSNS。Instagramも運営
Apple:世界最高品質と呼ばれるiPhoneやMacなどのデジタルデバイスを提供
Microsoft:世界最大シェアのOS/ソフト開発
1.Google
1998年にラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンによって創業。インターネット検索エンジンにおいて圧倒的なシェアを誇る巨大企業であり、オンライン広告業界のリーダーといえるでしょう。Googleの検索エンジンは「ユーザーの利便性」を第一義に、検索されたワードに対し最適な結果が表示されるようになっています。
Googleは、検索エンジンの優位性を活かして多様なサービスを提供しています。例えばGmail、ウェブブラウザのGoogle chrome、スマートフォン用OSのAndroidなど。他にもM&Aにより2006年10月に高額で買収したYouTubeなど、幅広いプラットフォームを所有しています。近年はスマートフォンのハード市場にも参入しGoogle Pixelを提供しています。
2.Apple
革新的なハードウェアとソフトウェアの開発に特化した企業であり、iPhone、Mac、iPad、Apple Watchなどのデザイン・機能性に優れた製品を提供しています。
Appleの製品やサービスは、優れたパフォーマンス、使いやすさ、デザイン性により、世界中のユーザーから高い評価を受けています。またユーザーエクスペリエンスにも重点を置いているといえるでしょう。特に、iPhoneは世界的な成功を収め、これ以降の携帯端末における世界的な潮流を生み、スマートフォン市場を変革しました。またAppleはiTunesやApp Storeなどのサービスも提供しています。これにより、ユーザーは音楽、映画、アプリケーションなどのコンテンツを手軽に入手できます。
3.Facebook(現Meta Platforms, Inc.)
Facebookとはソーシャルメディアの巨大なプラットフォームであり、世界中の人々とのつながりを提供するSNSの代表的存在といえます。Facebookは、2012年には10億ドルで写真共有アプリ「Instagram」の開発会社を買収、自社傘下のサービスとしています。Instagramは現在、広告ビジネスやコンテンツ共有において大きな影響力を持っています。2021年10月にMeta Platforms, Incに社名を変更しました。
4.Amazon
電子商取引の巨大企業。その業態はオンライン上での商品販売に特化しています。新型コロナウイルス感染症が蔓延して以降は世界中で続く外出制限が追い風になり、2021会計年度第1四半期(3月31日締め)の決算では44%の売上高増となっています。
Amazonは幅広い商品カテゴリーを提供するほか、Prime会員サービスやクラウドコンピューティングサービス(Amazon Web Services)などの追加サービスも展開しています。
5.Microsoft
ソフトウェアとクラウドサービスの分野で強い存在感を持つ企業です。Windowsオペレーティングシステム、Officeシリーズなどの製品を提供し、企業向けソリューションやコンシューマー市場で広くシェアを保有しています。2023年にはChatGPTを開発したOPEN AI社に100億ドルの巨額投資をしたことも話題となりました。
なおMicrosoft以外の4社を取り上げた”GAFA”という取り上げ方もされています。
これらの企業に共通するのは、IT領域での革新を通じてリーダーシップを示し、世界中のユーザーに影響を与えていることです。この5社の提供するサービスとプラットフォームは、個人や企業の生活、ビジネスの在り方自体にも大きな変革をもたらしました。現在も引き続きトップランナーとして、ITビジネスやデジタルマーケティングの世界において重要な役割を果たしています。
GAFAMの時価総額は東証一部上場企業2170社を上回る
ここでこの5社の規模がわかる具体的な数字を示してみます。2020年5月8日付けの日本経済新聞電子版※1によると”米マイクロソフトや米アップルなど時価総額上位5社の合計が、その時点で東証1部約2170社の合計を上回った。”そうです。
2015年時点では5社合計の時価総額は約261兆円、その時の東証一部上場企業全体の時価総額は約572兆円でした。ダブルスコア状態からわずか5年後の2020年4月、GAFAMの時価総額が約558兆円、東証一部上場企業が539兆円となり、ひっくり返されてしまったのです。
※1 2020/5/8 23:31 (2020/5/9 5:42更新)日本経済新聞 電子版「GAFA+Microsoftの時価総額、東証1部超え 560兆円に」より
ここからも、いかにこの5社が成長を続けているかがお分かりいただけるのではないでしょうか。何より、世界最大・最高を誇る企業だからこそ、投資家からの信頼を集め、時価総額を伸ばしているのだと言えます。
では、なぜGAFAMは他の企業に先駆けてDXを実現し、世界中の人に受け入れられ続けているのでしょうか?
GAFAMの世界に与える影響力と問題点、今後の動向
GAFAMは、いずれも現代のIT業界をけん引し、世界中の人々の生活と密接に関わる巨大な企業のため、その動向ひとつでさまざまな影響を広範囲に与えます。
GAFAMの影響
(1)技術革新とリーダーシップ
すでに紹介したように、GAFAMはそれぞれ革新的なテクノロジーを開発し、市場をリードしています。彼らの製品とサービスはユーザーエクスペリエンスやパフォーマンスの面で高い評価を受けており、他の企業にも大きな影響を与えています。
(2)データの収集と活用
GAFAMは膨大なデータを保有しており、それを分析してユーザー一人ひとりに合わせた体験やターゲティング広告を提供しています。これにより、広告主にとって効果的なマーケティングが可能となり、ユーザーはより関連性の高いコンテンツを享受できるのです。
(3)エコシステムの形成とユーザーの利便性向上
GAFAMはそれぞれ自社のエコシステム※2を形成し、サービスやプラットフォームを統合しています。これにより、ユーザーはシームレスな体験を提供され、一つの企業を利用するだけでさまざまなニーズを満たすことができます。
※2:エコシステムとは「生態系」を表す。本来のビジネスエコシステムとは、複数の企業が相互連携することでそれぞれのサービスの互換性を高め、ユーザーに利便性を提供するもの。
GAFAMの問題点
一方で、GAFAMには以下のような問題点も存在します。
(1) プライバシー侵害の懸念
GAFAMは膨大なデータを保有しています。このことから、個人のプライバシー保護に関する懸念が生じています。データの扱い、プラットフォームの利用において、GAFAMには適切な保護と透明性が求められます。またユーザーも、どんなに便利でも漏洩が起きるリスクはあることを理解し、念頭に置いて利用する必要があります。
(2) 市場支配力による競争制約の懸念
GAFAMは各分野で市場支配力を持っており、競争の制約が起きるおそれや、新規参入の難しさが指摘されています。競争環境が歪むことで、ひいてはイノベーションや消費者の選択肢にも悪影響を与える可能性があります。
実際、GAFAMの影響力はすでに政治、司法、軍事など国の根幹にかかわるあらゆる分野に及ぶようになっていることは否めません。アメリカではGAFAMの寡占をとがめる動きがすでに起きています。
(例)
・2020年10月~12月:米テキサス州などが反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いでGoogleおよびMETA(旧Facebook)を提訴。
・2021年5月:ワシントンDCがAmazonを反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いにより提訴。
(参考)
日本経済新聞:Google、独禁法訴訟の棄却を申し立て 「共謀」を否定( 2022年1月22日)
GAFAMが実現したビジネスモデルとDXの関連
世界的に見ると新型コロナウイルス感染症の影響で業績と株価が下がってしまっている企業が多くあります。その中でもGAFAMが投資家に評価され、時価総額を伸ばしているのは、それぞれのビジネスモデルに特長があるからと言えます。
GoogleとFacebookは広告収入、Amazonは通販と手数料、Appleはデジタルガジェット販売、Microsoftはソフトウェア販売がメインです。GAFAMのビジネスモデル自体はそれぞれ異なりますが、共通しているのはすべての企業がデジタルやデータを活用してサービスや商品を提供している、という点です。
Googleは1990年代後半のインターネット黎明期に、当時主流だったディレクトリ型検索エンジンではなくロボット型検索エンジンを開発し、検索市場にデビューしました。世界的に検索回数がうなぎ上りに伸びている中、検索連動型広告をリリースして多額の広告収入を得られるようになりました。
Amazonは「モノは商店で買うもの」という既成概念を切り崩し、インターネットでポチっとクリックするだけであらゆる商品が自宅にすぐ届くというサービスを提供し、ユーザーの利便性を著しく上昇させました。
Facebookはインターネット上での交流は匿名が主流の時代に、実名登録が必要なSNSを立ち上げ、世の中に受け入れられました。匿名SNSなどと違いFacebookは実名で登録をして利用すること、またビジネスユーザーが多いため、多額の広告収入を得られています。
Appleは、「コンピューター関連商品は四角くて面白みがなくて難しいものである」という概念を覆し、iPhoneやMacのような少し丸みを帯びたスタイリッシュなデジタルガジェットを次々と発表し、世の中の最先端の感性を持っている人たちに受け入れられました。同等機能を持っている他社製品に比べて倍の値段がついていても、「Apple信者」たちは新製品が出るたびに買い替えて(=リピーターになって)くれます。カスタマーエクスペリエンス(Customer Experience、顧客体験)による自社ブランディングの先駆けといえるでしょう。
MicrosoftはOS市場において1984年に当時先行していたMacOSをWindowsで抜き、世界のPC市場でトップシェアとなり、2009年にはインターネット上で使用されているクライアントの90%のシェアを得ました。
実はMicrosoftは他社に先駆けてクラウド化に取り組んでおり、2008年時点ですでにAzureを発表しています。Windowsを無償化し、Officeをサブスクリプションモデルで提供するなど、「ソフトウェアの販売」から「サービスの提供」へとシフトしたことは画期的といえるでしょう。DXの最先端を走っている企業と言っても過言ではありません。
アイデアとDXが成長を生み出した|最初から大きなビジネスなど無い
今では世界におけるトップ企業となっているGAFAMですが、最初から大資本でビジネスを展開していたわけではありません。Google、Apple、Amazonは自宅のガレージで創業、FacebookとMicrosoftは創業者が大学在学中に、前身となるビジネスをスタートさせたと言われています。GAFAMの創業者たちは少ない資本の中で、いかにデジタルを駆使してビジネスを組み立てていくべきか、日々考え抜き、自分たちが提供するサービスや商品に落とし込んでいったのです。
今回はDX(デジタルトランスフォーメーション)の成功事例としてGAFAMをご紹介しました。これからDXに取り組もうと考えておられる企業の経営者やIT部門担当者の中には、「自社にはDXを推進するだけの資金も知見もリソースも無い」「DXに取り組んでみたいが、何から始めたら良いか分からない」と嘆かれている方がいるかもしれません。そのような場合、ぜひGAFAMの成功プロセスを参考にしてみてください。