本記事は、小田全宏氏の著書『頭がいい人の脳の使い方』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

脳
(画像=Sergey Nivens / stock.adobe.com)

集中力が人生を大きく変える

頭の中を整理し、憶えるテクニックを身につけることで記憶力はぐんと高まります。

しかし、賢く頭を使うには、憶えたことを発揮できる力が必要です。

それが、集中力です。

習得したテクニックを活用していくらたくさんのことが記憶できたとしても、そのよさをしかるべきタイミングで発揮できないのであれば、まったく意味を成しません。

たとえば、資格試験。

さんざん頭に詰め込んできたとしても、試験時間中に答案用紙に書き出すことができなかったら(答えられなかったら)、どんなに頑張って勉強してきても、不合格になってしまいます。勉強したことはとても大事ですし、今後の人生にも役立つと思いますが、合格するために勉強をしてきたわけですから、やはり試験時間中に力を発揮できなければ頑張りが報われません。

ここぞという時に自分が持つ最大限の力をきちんと発揮する。これが、集中力の働きです。

では、集中力を働かせると聞いて、みなさんはどんなイメージを抱くでしょうか。

1つの物事に対して、眉間にしわをよせて、頑張っている姿を想像しませんか?

しかし、集中するのに、頑張りは必要ありません。

あなたは、時を忘れて没頭していたら素晴らしい成果が生まれて心から満足できたという体験はありませんか?

この心の状態を研究したのが、いわゆる「ポジティブ心理学」を提唱したアメリカの心理学者、ミハイ・チクセントミハイです。

彼はまず、集中状態について「今行っていることに心が100%熱中して、他のことにまったく気が行かない状態」と定義づけ、「フロー状態」と名づけました。

フロー状態に入ると、「自我の喪失」と「時間の加速化」が起きます。「自我の喪失」とは、何かをしている自分と対象が1つになることです。「時間の加速化」とは、それを行っている時間が、あっという間に過ぎ去ったように感じることです。

このフロー状態が最高値に達すると、「ゾーン」とか「ピークテンション」という状態に入ります。

昔、打撃の神様と言われた元プロ野球選手、川上哲治氏が「ボールが止まってみえる」と言ったそうです。実際、130キロを超えるボールが止まって見えるはずないのですが、このように時の流れが変わるほどの状態になるのです。

ただし、フロー状態が、成功の結果を約束しているものではありません。

むしろ、「フロー状態に入るとすべて成功する」と意識すると、フロー状態に入れなくなってしまいます。あくまでも「無心」で向き合うこと。それによって、満足のいく結果が生み出されるのです。

集中すればするほど、脳の働きも高まり、結果もよくなります。

「頭がいい人の脳の使い方」より引用
(画像=「頭がいい人の脳の使い方」より引用)

集中力とは「集中できる状態(集中状態)を作り出す力」と言ってもいいでしょう。

力とついていますが、集中力はパワーで発揮するものではなく、コツを押さえることで発揮されます。

集中力を自分の意志で使いこなせるようになると、しかるべきタイミングを逃さずに済みます。また、今まで不可能だと思っていたことや、自分が実現したいと思っていたことであっても、集中して力を注ぐことにより短い期間で実現に近づきます。

集中力を自分の意思で操れるようになることで、人生は大きく変わるのです。

頭がいい人の脳の使い方
小田全宏
一般社団法人アクティブ・ブレイン協会会長。(株)ルネッサンス・ユニバーシティ代表取締役。1958年滋賀県彦根市生まれ。東京大学法学部卒業後、(財)松下政経塾に入塾。経営の神様、松下幸之助翁の薫陶を受け、人間学を研究。1986年より人間教育の研究所を立ち上げる。1991年(株)ルネッサンス・ユニバーシティを設立し、陽転思考を基本理念とした講演・研修活動を展開。2003年より画期的な能力開発の手法である「アクティブ・ブレイン・プログラム」を創始。また認定NPO法人「富士山を世界遺産にする国民会議(現在の「富士山世界遺産国民会議」)」を2005年に立ち上げ、運営委員長として2013年の世界遺産登録に尽力する。2019年より一般社団法人「ジャパン・スピリット協会」を創立し、日本の素晴らしい心を世界に発信する活動を開始。その他いくつものNPO法人を運営し、社会起業家としての活動を展開している。

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