本記事は、小田全宏氏の著書『頭がいい人の脳の使い方』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

マネジメント
(画像=chaylek / stock.adobe.com)

真の能力を発揮するうえで邪魔となる「劣等感」のマネジメント

「劣等感」とは「自分は人より劣っている」という感情です。

劣等感がなぜ、脳力を制限してしまうのか。

それは、人は、「俺はダメだ」「苦手だ」「自分は人より劣っている」と思ってしまうと、「いくら努力しても、どうせ自分にはできない」「また失敗して、嫌な思いはしたくない」と、行動に移す前に勝手に自信を失い、自分にダメ出しをして、あきらめてしまうからです。

『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)などで注目を浴びたアドラー心理学を創始したアルフレッド・アドラーは、「人間が劣等感を過剰に埋め合わせ、補償しようとすることで神経症を誘発する」と言っています。

人間の脳が「比較」という形で物事を認知する力を持っているため、劣等感を持つことは仕方のないことなのですが、そこに縛られてしまうと、アドラーの言葉の通り、劣等感は、真の能力を発揮するうえで大きな邪魔になります。

「劣等感」の対処法を知り、縛られなくなることで、驚くほど脳力は開花します。

劣等感の対処法は、次の4つです。

1. 小さな成功体験を積み上げる

アクティブメソッドのプログラムに参加される方の多くが、自分の記憶力や脳力について劣等感や不安を抱いています。過去から現在に至る様々な経験によって、「自分は記憶力が悪い」「人より劣っている」という自己概念が形成されてしまっているからです。

しかし、ほんの2、3日のうちに100個も200個も単語を憶えることができるようになると、「自分はすごいんだな」と、自分の能力に自信がつきます。この時、劣等感を自然に払拭しています。

人は今までできなかったことができるようになると、「ブレイクスルー(突破)」という意識を持ち、本来持っていた「自信」が復活します。それによって劣等感にとらわれることなく、脳力が活発に動き出すのです。

2. 他者との比較を断固やめる

森信三先生は「人間の苦しみの原因の多くは、他者と自分を比較することから生じる」と述べていますが、まさにその通りです。

他者と比べることが成長のバネになることもありますが、人との比較は往々にして自身の成長を止めてしまいます。

「どうせ自分が頑張っても、あいつのようには成功しないし」などと、戦う前から負け犬根性になってしまい、何に取り組んでも力が出なくなってしまうのです。

劣等感の多くは、決して世の中で活躍している優れた人に対してではなく、身近な人との間で生まれるため、愚痴や嫉妬といった状態に心が陥ると、ますます脳は本来の力を発揮しなくなります。

「愚痴」は「○○だったらよかったのに」などと、「主体性」が決定的に失われてしまいますし、「嫉妬」は、「△△はいいよなー。どうせ自分なんて……」などと、自分から見た「不当に有利な条件」を持ちあわせていない自分がうまくいくはずないと思い込んでしまい、脳が働こうとする理由を自ら奪っているからです。

劣等感が出てきたら、「私は誰とも自分を比較しない。私は私」と口に出すことです。

言葉にすることで、その劣等意識はある程度緩和できます。それを繰り返していくと、だんだんと比較しなくなります。また比較したとしても悪感情がともなわなくなります。

嫉妬心や劣等感が落ち着いてくるのを感じたら成功です。

3. 劣等感や自己嫌悪感をそのまま、あるがままに認める

ある時、受講生の方から悩みを打ち明けられました。

「私は、人に何かよいことをしようとすると、『こうしたらよい人だと思われるだろう』という意識が湧き出てきます。もっと純粋に人のために行動したいのですが、いつも偽善的な意識が出てきてしまうのです。そんな自分に自己嫌悪感が湧きます」

彼女は、偽善的な自分のことを「みにくい」「汚い」と感じていたようです。

「偽善的な気持ちを抱く自分も、それはそれで大好きと言ってください」とお答えすると、表情がパーッと明るくなり、「こんな私でいいのですね」と笑顔が弾けました。

足りない自分をそのまま認めてあげたことで、落ち着かなかった心がようやく解放されたのです。

生きていくうえで自分への信頼がとても大切であることは言うまでもありません。

どんな時も、あるがままに「これでいいのだ」と自分に言ってあげることです。

4. 生きていることを感謝する

人は自分という存在について、様々な面から考えます。

「学歴」「容姿」「お金」「人気」「家柄」「才能」など、様々な要素で自分の社会的な立ち位置を測ります。ネット上で自分の評価を調べるエゴサーチをする人までいます。

非常に荒っぽい思考ですが、他人に誇るべき「能力」がほとんどなかったとしても、自己という存在を深く愛し、認めてあげることです。落ち込む必要もダメ出しする必要もありません。

「何もできなくてもよい」という思考なので、自分を甘やかすことにもなりかねませんが、生きていることそのものを「ありがたい、感謝」ととらえ、そのままの自分を深く愛することで劣等感が解放されていきます。

「頭がいい人の脳の使い方」より引用
(画像=「頭がいい人の脳の使い方」より引用)

これらの4つの対処法で、「劣等感」がゼロにならないとしても、そのレベルは必ず変化します。

劣等感は、人生の活力、バネになることもしばしばありますが、多くの人は劣等感に負けて自身の可能性を閉ざしてしまいます。

劣等感が低くなると、自己尊重感が格段に向上し、目の前にある取り組むべきことに堂々と向き合うことができます。

頭がいい人の脳の使い方
小田全宏
一般社団法人アクティブ・ブレイン協会会長。(株)ルネッサンス・ユニバーシティ代表取締役。1958年滋賀県彦根市生まれ。東京大学法学部卒業後、(財)松下政経塾に入塾。経営の神様、松下幸之助翁の薫陶を受け、人間学を研究。1986年より人間教育の研究所を立ち上げる。1991年(株)ルネッサンス・ユニバーシティを設立し、陽転思考を基本理念とした講演・研修活動を展開。2003年より画期的な能力開発の手法である「アクティブ・ブレイン・プログラム」を創始。また認定NPO法人「富士山を世界遺産にする国民会議(現在の「富士山世界遺産国民会議」)」を2005年に立ち上げ、運営委員長として2013年の世界遺産登録に尽力する。2019年より一般社団法人「ジャパン・スピリット協会」を創立し、日本の素晴らしい心を世界に発信する活動を開始。その他いくつものNPO法人を運営し、社会起業家としての活動を展開している。

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