所要運転資金の計算方法

経常運転資金は、一定の計算式で計算できる。ここでは、所要運転資金の概要と考え方、計算方法を解説する。

所要運転資金とは

所要運転資金とは、企業が通常の営業活動を行うにあたって必要となる経常運転資金の金額を計算したものである。例えば卸売業の場合、販売する際も仕入をする際も、締日と支払日を決めて取引をするのが一般的だ。

商品を販売する際には、商品を仕入れた後に販売し、締日までに販売した商品の代金を先方に請求。支払日に代金を一括で支払ってもらうことになる。

これが通常の販売から代金回収までの流れだ。しかし代金を回収してから次の仕入をしていては、回転率も悪く毎月安定した売上を確保することができない。代金回収が3ヵ月後であったとしても、商品の仕入を毎月行わなければ、3ヵ月に一度しか売上が立たなくなってしまう。仕入の場合にも同じことがいえる。

仕入をする際にも締日と支払日を決めて取引するため、商品を仕入れたからといってすぐに支払いが発生するわけではなく、代金の支払いは締日の翌月末などと後払いとなるケースが多い。そのため商品の納品よりも支払い日が遅くなるほど、事業活動に必要となる資金は少なくて済むことになる。

このように商売、つまり通常の営業活動を進めるうえでは、販売代金の「回収」と商品仕入代金の「支払い」には、それぞれタイムラグが生じるのが一般的だ。つまり仕入から代金を回収するまでには時間がかかるため、毎月仕入ができるようにするにはお金がいくら必要かを計算しておく必要がある。

またその際には、仕入をしてから支払日までの期間は代金支払いが猶予されているため、支払いが猶予されている期間も考慮して必要な計算をしなければならない。このタイムラグを計算して通常の事業活動に必要な資金がいくらあれば資金繰りに悩むことなく商売ができるのかを計算したのが、所要運転資金である。

所要運転資金の計算方法

所要運転資金は、以下の計算式で計算できる。

・所要運転資金=売上債権(売掛金・受取手形)+棚卸資産+前渡金-買掛債務(買掛金・支払手形・前受金・未払金)

「売上債権」とは、売掛金や受取手形などが該当し、運転資金を計算する際には前渡金なども入れて計算する。売掛金は商品販売をしたが代金を回収していない金額を指し、売り手が買い手からあとで費用を回収する権利(債権)だ。受取手形は、その約束手形に記載された期日までに支払うことを買い手が約束した有価証券であり、支払期日に現金化することができる約束手形のことである。

「棚卸資産」とは、在庫のことだ。小売業なら商品の在庫、製造業なら完成した商品や原材料、仕掛品なども含まれる。「買掛債務」は、買掛金や支払手形などが該当し、運転資金を計算する際には未払金や前受金も入れて計算する。買掛金は、商品や原材料を仕入れたが代金を支払っていない金額を指し、買い手が売り手にあとで代金を支払う義務(債務)のことだ。

支払手形は、その約束手形に記載された期日までに相手へ代金を支払うことを約束した有価証券(約束手形)である。期日に決済できなければ振出人(買い手)が不渡りとなり、信用を大きく損なうことになる。買掛金も支払手形も代金を支払う義務を負うため、買い手が売り手から資金を借り入れているのと同じ状態といってよい。

所要運転資金は、売掛債権や買掛債務の回転期間から計算することも多いが、単純に計算するなら以下のように計算することができる。具体的には、決算書の貸借対照表の売上債権、商品在庫などの棚卸資産、買掛債務のそれぞれの残高を計算式にあてはめて計算すれば簡単だ。

<所要運転資金の計算例>
売上債権:500万円(売掛金400万円+受取手形100万円)
棚卸資産:600万円(商品在庫600万円)
買掛債務:400万円(買掛金300万円+支払手形100万円)

所要運転資金=売上債権500万円+棚卸資産600万円-買掛債務400万円=700万円