金融機関から運転資金の融資を受ける際の注意点

中小企業としては、運転資金が必要な際にまず頼るのが銀行などの金融機関だ。金融機関から融資を受ける際の注意点を理解することが、運転資金を調達するコツともいえる。

金融機関は企業の返済能力を審査する

中小企業が銀行などの金融機関から融資を受けるときの審査のポイントは、大きく分けて7つある。

1.企業の安定性と返済能力
金融機関は、融資した資金に利息を上乗せして回収することで利益を上げている。融資を受ける際の利息は、その企業の倒産リスクと金融機関の収益、事務コストを加味して決定し、1~3%前後が一般的だろう。しかし金融機関は、薄利多売の商売でもあり融資した資金(元本)が回収できないと大きな損失となるため、企業の返済能力の有無を慎重に審査する。

そのため経営者としては、金融機関が企業の財務内容から事業としての安定性、健全性をチェックすることを認識しておくことが必要だ。健全な財務内容となるように継続的に収益を上げて、企業体力を強化していかなければならない。また金融機関で融資を申し込む際は、各都道府県に設置されている信用保証協会を利用した保証付融資の利用をすすめられるケースが多い。

なぜなら保証付融資は、企業が返済できない場合に信用保証協会が返済してくれるため、金融機関としては安心して中小企業へ融資できるからだ。信用保証協会の保証付融資は、保証料などのコストがかかるが、プロパー融資と比較すると審査が通りやすいといわれている。

2.借入額と資金使途
金融機関は、融資の資金使途や借入額が目的に合ったものになっているかを厳しくチェックする。事業計画や収支計画、資金繰り、今後の売上の見通し、返済可能な金額など、さまざまな視点からチェックされる。そのため資金使途を明確に示し、どのようにして返済していくかを説明できなければならない。

金融機関から運転資金の融資を受けて、使途を誤ると金融機関からの信用を失うことになりかねない。例えば運転資金で借り入れしたにもかかわらず営業車を購入したのでは、資金使途に反することになる。また事業資金を個人へ流用することも当然NGだ。こういった場合は、借入金を一括で完済するように請求される可能性があるため注意したい。

これらを踏まえて借り入れをする際、運転資金と設備資金は明確に区別するようにしよう。また融資を申し込む際の借入希望額も同様だ。所要運転資金を超える金額の融資を受けようとすると、金融機関から必要以上の金額の場合は減額されたり、断られたりする可能性がある。

所要運転資金を超える運転資金を金融機関から借りる際には、財務状況が赤字であると赤字補填資金として金融機関から警戒されることもあるため注意したい。

3.返済の滞納の有無
返済状況は、どんな借入方法においてもチェックされるため、借り入れする金融機関以外であっても、返済に遅れがあると融資を見送られることになりかねない。金融機関は、毎年決算書の以下のような内容を細かくチェックする。

  • 毎年の決算書から連続した数値がつながっているか
  • 不良資産はないか
  • 異常値はないか
  • 特殊事情はないか など

他行の借り入れであっても融資残高の推移から返済に遅れがあればすぐにわかってしまうだろう。

4.税金の滞納についてチェックされる
納税証明書や決算書から税金の滞納の有無は、常にチェックされていると考えたほうがよい。税金の種類は、法人税・消費税のほか、固定資産税や法人住民税、都道府県民税、市区町村税などもチェックされることがある。滞納があれば「信用力がない」「税金を支払う資金もない」と判断されるため、返済や税金の滞納がないように、普段から細心の注意を払う必要がある。

特に新規で融資を申し込むときや、不動産を担保に入れるときには、納税証明書の提出を求められることがあるため注意が必要だ。

5.経営にかかわる数値は説明できるようにしておく
金融機関は、財務内容を重要視する傾向だ。しかし決算書の売上や利益は過去のデータにすぎず、現状の足元の状況を質問してくることがある。そのため売上の見込みや資金繰り状況、利益の見込みなどは普段から説明できるように把握しておかなければならない。疑問点が生じた場合は、追加資料を求められるケースもある。

6.事業計画書や試算表の準備
金融機関へ決算書を提出したとしても、決算期から3~6ヵ月経過していれば試算表の提出を求められることが多い。審査の状況次第では、事業計画書や資金繰表など経営状態が把握できる資料を追加で求められることがある。今後の見込みや足元の状況を把握するために事業計画書や試算表、資金繰り表などが重視されることもあるため、経営者としては説明できるようにしておきたい。

7.保証人・担保の有無
現在は、無担保無保証人で融資を受けられるケースが多くなっているが、中小企業の場合、いまだに代表者が会社の連帯保証人になることを条件とされるケースが多い。融資金額が高額となる場合は、不動産などの担保の有無も重要だ。そのため提供する担保があるのかを事前に検討しておかなければならない。