GPIF(年金積立金管理運用独立法人)は10月31日、運用比率を変えることを発表した。

内容としては、これまで債券が72%(国内60%、外国12%)、株式が24%(国内12%、外国12%)、短期資産が5%の運用比率であったものを、債券50%(国内35%、外国15%)、株式50%(国内25%、外国25%)の半々の運用比率に変えるというものだ。


巨大機関投資家GPIFのマーケットに与えるインパクト

GPIFとは、「Government Pension Investment Fund」の略で、厚生労働省が所管する独立行政法人である。GPIFは、サラリーマンが加入する厚生年金と個人事業者等が加入する国民年金の年金積立金を運用する機関である。平成26年度の第1四半期末運用資産額は127兆2,627億円と世界最大の年金運用機関である。

このような巨大機関投資家が運用方針を変えることは、市場に大きな影響を与える。127兆円の資産ということは、1%の変更で1兆2700億円動くことになる。国内株式で見てみると、12%から25%に変更されるので、単純計算で13%×1兆2700億円=16兆5100億円増えることになる。東証1部の売買高が1日2兆円から4兆円程度であることを考えると、16兆円という数字がいかに大きいかがわかる。

運用比率変更の発表はは日銀の追加緩和と重なっており、GPIF単独での株式あるいは為替への影響がどれ位あったのかは計り知れない。しかし、日銀の追加緩和と相まって両市場ともに大きな影響を与えたことは確かであり、今後のGPIFの動きにも注意する必要がある。


乖離率にも注目

運用比率にばかり注目がいってしまうが、実は乖離率も変更されており、国内債券で±10%、国内株式で±9%となっている。ということは、国内債券の運用比率は35%であるが、最大で45%までは許容されることになる。

また、国内株式は25%なので、16%まで許容される。そうすると、これまでの国内債券60%、国内株式12%と比較すると、株式は4%しか増えないことになる。国内債券の15%は外国債券・外国株式にシフトすることにはなるが、国内の運用は、積極的に行いたくないと考えれば、今とたいして変わらない運用ということにもなりかねない。

GPIFは独立行政法人で表面上は、独立しているが、実質的には厚生労働省年金局が強い影響力を持っている。年金局は、年金積立基金の株式での積極運用に消極的なので、うがった見方をすると、表面上運用比率は変えるものの、実質は大きく変えるつもりはないのかもしれない。この点は、今後、GPIFの運用報告を注意深く監視し、随時マスコミ等が情報発信していくことが期待される。

とはいえ、これまでの国内資産(債券60%、株式12%)に偏った運用から、外国資産への運用に転換していくことは、非常によいことであると考える。

年金運用は、長期的な視点で運用しなければならないので、当然景気の波がある。国内の景気が冷え込んでいる場合に外国資産を保有していれば、その点のリスクはヘッジできる。また、外国資産を買うことで円安にもなることから、アベノミクスの成長戦略にも貢献することになる。


利益を上げられるかが重要である

もう一つ注意すべき点は、株式の運用比率を上げることが重要なのではなく、株式運用で利益を上げることが重要だということである。GPIFの多額のお金が株式市場に流入するだけで、全体の株価は上がるかもしれないが、それはGPIF以外の投資家が利益を得るだけで、GPIFが利益を得るわけではない。

GPIFが利益を上げるためには、投資した企業が成長して利益を上げることが必要になってくる。そのためには、どの株式を購入するかという中身が重要だ。GPIFは、JPX日経インデックス400をベンチマークにしていることから、この銘柄の多くが買われることになると思われる。

しかし、安易にベンチマークに乗っかるのではなく、きちっと分析してベンチマーク以上の利益を上げられるよう人材の確保も含め検討してほしい。

(ZUU online)

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