本記事は、山本邦義氏の著書『付加価値経営の教科書』(合同フォレスト)から一部を抜粋・編集しています。

分析
(画像=Deemerwha studio / stock.adobe.com)

人材は人間力と仕事力により、人財・人材・人在・人罪に分かれる

社員は大きく4つに分類できます。

  • 人財… 利益に直接貢献できる社員。何事も進んで行う。
  • 人材… 素材としての社員。教育対象者。将来利益に貢献してくれる。
  • 人在… ただいるだけの社員。無害で無益。指示されたことは取り組む。
  • 人罪… 給料泥棒。悪さをして会社に損害を与える。

人材育成の観点から言えば、全体を底上げしていく必要があります。それでも人罪に落ちていく社員は出ます。そうした人にはイエローカード、最終的にはレッドカードを出して辞めてもらうこともあります。現実に、寄生虫のような社員もいるからです。

人材育成に関して、持論があります。正社員だけでなく、契約、派遣、パート社員にも平等にチャンスを与えること。これは大事です。

正社員が必ずしも優秀だとは限りません。100円ショップを見ていると、つくづくそう感じます。売り場で活躍しているのは、ほとんどパート社員です。

与えられた経営資源を正社員、契約社員、派遣社員、パート社員という雇用上の区分からいったん外します。その上で「人」として見直し、球を投げるのです。

キャリアや生き方、家庭環境など、それぞれの要素が全て違います。どこに自社の商売が当てはまるのかを、冷静に検討すべきでしょう。

100円ショップが強いといわれるのは、研究開発をメーカーと一緒に社員にさせているからでしょう。こうした取り組みが常態化していくと、専業メーカーの位置付けもいずれ変わっていくでしょう。

そう考えると、100円ショップの競合相手は同業他社ではないのかもしれません。むしろさまざまな他業種との競争が激化していきそうです。

「優秀な人材」と「仕事ができる社員」の違いとは?

「優秀な人材」と「仕事ができる社員」。両者は必ずしも一致しません。どこが違うのか。資質を見抜いて活用できる上司の存在でしょう。

スポーツの世界で考えてみれば、よくわかります。野球の大谷翔平選手にせよ、プロフィギアスケーターの羽生結弦氏にせよ、天才であるのは間違いありません。しかし、彼らのそばには才能を見いだした指導者が必ずいます。企業の中に、そうした管理職がいるかどうか。その一点で優秀な人材を生かせるか、眠らせてしまうかが決まります。

突出した能力を持つ、とがった人材ほど扱いにくいものです。その代わり、彼らは適所に恵まれると、すさまじい力を発揮します。オールラウンドプレーヤーは確かにありがたいのですが、個々の素養を見ると、やはり高が知れています。ほとんどの社員は、あらゆることを満遍なくできるタイプです。ただ、彼らが高付加価値の仕事をできるようになることはまずありません。

できる社員は得意分野に特化している分、欠落も大きいものです。思わぬトラブルが発生することもあります。最悪の場合、不正に手を染めることすらあるのです。悪いことをするのはできる社員と言っていいでしょう。ばれないように工作するのも非常に巧妙です。

彼らには「君の長所はこれだ。でも短所もある」と率直に話し、処遇を決めていきます。

できない社員には、できない社員なりに光るところもあります。突出した才能はなくても、ひたむきに課題に取り組む人材はどんな組織にもいます。これはこれで1つの仕事のやり方でしょう。私は良いと思います。

人材はあくまで使いようです。よく切れるハサミは、けがの元になることもあります。

社員の資質をどこまで見極められるか。管理職や社長の責任は重大です。

日本企業の欠点はマネジメントできる人がいないこと

日本の企業にはマネジャーが不足しています。マネジメントができる人材が、もともと少ないのです。これは大きな問題です。

はっきり言わせてもらえば、現在の40代から55歳前後の世代は、なかなか厳しいと見ています。以前はOJT(実地訓練)という言葉をよく聞いたものです。最近はほとんど聞かれなくなってしまいました。それだけ人材育成に重きを置かなくなってきているのでしょう。

バブル崩壊以後の日本では、インフラの劣化が急速に進んだ気がしています。技術者や職人をないがしろにしてきたせいでしょう。この問題も、背景にはマネジメントの問題が潜んでいます。

=付加価値経営の教科書
山本邦義
中小企業金融円滑化センター株式会社 代表取締役

1954年、愛知県生まれ。1978年、神戸商科大学(現兵庫県立大学)を卒業後、東海銀行(現三菱UFJ銀行)に入行、東京営業部で基幹産業の企業本体およびグループ各社担当課長として、事業再構築を計画・遂行。2004年、退職。
2010年、中小企業金融円滑化センター株式会社設立。代表取締役として現在に至る。企業内外の環境や事情をきめ細かくくみ取り、企業のライフステージ(発展段階)や事業の持続可能性、程度を適切かつ慎重に見極め、最適なソリューションの提案とモニタリングを実行。
アジア中小企業協力機構会員、事業再生研究機構会員、事業再生実務家協会会員。

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