総括
FX「急落急騰、ペソのダイナミックな動きの背景は、AMLO大統領が動いた!」メキシコペソ見通し
予想レンジ 8.4-8.9
(ポイント)
*8月下旬から為替ヘッジプログラム縮小や予算拡大でペソは乱高下
*ただファンダメンタルズは堅固 米国経済の強さも背景にあり
*緊縮派の大統領が支出拡大に至った背景は次期大統領選挙
*ニアショアリングは今も続く
*中国の迂回輸出防止で輸入関税引き上げ
*8月消費者物価は低下、ただ政策金利は年内維持か
*2Qの経常収支が黒字化
*中銀政府が2023年の成長見通し引き上げ
*IMFも成長率予想を引き上げ
*1-6月の郷里送金は過去最高
*米国の輸入相手国は中国を抜いてメキシコがトップに
*日本からのメキシコへの6月の輸出は前年比40.3%増
(急落急騰、ペソのダイナミックな動きの背景、AMLO大統領が動いた!)
8月28日に年初来高値更新で8.776をつけ、8月31日にドル高への為替ヘッジプログラム制度縮小で9月11日に8.31まで下落、その後は、5連騰で8.629まで急騰した。
為替ヘッジプログラム制度縮小については、既に説明した通り。ペソ上昇は政府の財政赤字拡大見通しから始まった。金利が大きく上昇でのペソ買い。AMLO大統領は自らの給与を下げるなど緊縮財政がウリで国民の人気を集めていたが、一転財政支出拡大となり市場が驚いた。国営石油公社ペメックスへの支援も打ち出したことも赤字を拡大。コロナで痛んだ経済も支援する。歳出増加はGDPの4.9%に相当する財政赤字となり、1988年以来最大となる。
大統領豹変の理由は何か。来年行われる選挙が絡んでいる。与党モレナ党の候補であるシェインバウム氏を支援することだ。ペメックスの負債を軽減し、景気対策も拡大した。AMLO大統領の置き土産だ。
財政赤字は拡大するも、後述のように景気見通しは上方修正した。ニアショアリングによる経済規模拡大は今も続いている。中国回避とUSMCAによる減税を求めて世界の企業がメキシコに向う動きは続いている。
(2024年成長、インフレ見通し=楽観的)
政府は2024年の経済成長率を2.5~3.5%(中間値3.0%)とした。民間シンクタンク36社の経済成長率見通しの平均値は1.66%、中銀が8月30日に発表した成長率見通しは2.1%となっており、かなり楽観的な見通しといえる。
2024年のインフレ見通しは3.8%、中銀の3.1%よりは高いが、民間シンクタンクの見通し平均値の3.98%よりは低い。また、米国の2024年の経済成長率を1.8%としており、民間シンクタンクの見通し平均値の1.07%と比較すると、かなり楽観的だ。
(7月鉱工業生産まずまず)
7月鉱工業生産は前年比4.8%増(6月4.9%増、予想4.2%増)、前月比0.5%増(6月0.8%増、予想の0.4%増)。6月から若干落ち込んだが予想は上回った。
21 か月連続で産業が堅調なペースで成長していることを示している。建設と公益事業が増加、製造業と鉱業は減少した。
(自動車生産、販売、輸出増加)
8月の自動車の生産台数は、32万5676台と前年同月比で3%増えた。16カ月連続で前年同月の水準を上回った。半導体不足の影響で落ち込んでいた生産台数が回復する傾向が続いている。販売台数は11万3873台と前年同月比で24%増えた。輸出台数も16%増の28万7845台だった。生産台数の回復に伴い、販売・輸出台数も増える傾向が続いている。
テクニカル分析
雲に落ちず反転急上昇
日足、 日足、8月28日に8.776をつけ下落を続けていたが、ボリンジャーバンド下限を前にして雲に落ちず反転した。9月12日-13日の上昇ラインがサポート。8月31日-9月14日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線も上向く。
週足、連続陰線の後、今週はここまで陽線。8月28日週-9月4日週の下降ラインを上抜く。7月24日週-9月11日週の上昇ラインがサポート。5週線、20週線上向き。
月足、5か月連続陽線、9月もここまで陽線。7月-8月の上昇ラインがサポート。5か月、20か月線上向き。
年足、22年の長い上ヒゲを上抜く大陽線。14年-22年の下降ラインを上抜く。21年-22年の上昇ラインがサポート。
VAMOS MEXICO
米国とタッグ。392品目の輸入関税を引き上げ、中国の迂回輸出防止か
メキシコは、自由貿易協定を締結していない国・地域からの税コードが付いた392品目の輸入関税を引き上げた。
中国などの企業がメキシコ経由で鉄鋼を米国に迂回輸出する動きを米政府が問題視していたからだ。メキシコにとっても国内産業の保護につながる利点がある。
中国や韓国など自由貿易協定(FTA)を結んでいない国からの輸入が対象で、包括的・先進的環太平洋経済連携協定(CPTPP)を結ぶ日本からの輸入は対象外。
米国はメキシコからの鉄鋼の輸入急増を問題視する書簡を送り、迂回輸出の問題も指摘した。USTRはメキシコ経済省に対応を求めていた。