analysis-515243_640 (1)

政府は、消費税の増税について、7〜9月期のGDPの数値を見て判断するとしていた。7〜9月期のGDPの数値がマイナス1.6%と事前予想を大幅に下回ったことや、実質賃金が物価の上昇についていけずマイナスになっていることから、消費税の増税は景気に悪影響を及ぼす可能性が高いとの判断から、衆議院を解散する可能性が高い。

アベノミクスの売りは、景気回復=株価の上昇であるから、経済指標が悪い中で消費税の増税を行えば、一気に株価は下落する。それなら、消費税増税を先送りすれば良いだけで、衆議院を解散する必要はないのではないかとも思えるが、政治は長期安定政権を目指すものなので、株価が高く、支持率が高いうちに解散したいと考えることは、ごく自然である。今後、原子力発電所の再稼働や集団的自衛権に関する法案の提出などのネガティブな案件を処理しなければならず、政治と金の問題も浮上してきているので、安倍政権としてはリセットして、任期を延ばしておきたいという政治的理由もあるだろう。

もう一つの見方は、消費税を増税して景気が下振れて株価が下がるよりも、景気回復を優先させた方が、消費税を増税するよりも税収が増えるのではないかという考えである。消費税を8%にして消費は落ち込んだものの、日銀の追加緩和とGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資産運用比率の変更などにより、株価は高い水準を維持できている。このまま消費税を先送りして景気を維持できるのであれば、あえて自分の政権にマイナスになる増税をする必要はない。そして、消費税の増税は法律で規定されていることなので、これを変更するために「大義として解散を行う」というシナリオになる。

いずれにしても、衆議院を解散することはほぼ確実の情勢なので、理由を推測するよりも、今後の影響を考えていかなければならない。最も影響を受けるのは、財務省で、来年度の予算編成で予定されていた事業について、相当修正を余儀なくされると思われる。また、選挙公約で経済対策を打ち立てると、補正予算を組まなければならず、その準備も大変になる。予定を狂わされた財務省としては、消費税増税の先送りのための法案を作成するに当たり、景気弾力条項(景気を見て増税するかを判断することができる条項)を削除するよう求めてくるだろう。

また、日銀も厳しい局面に立たされる。日銀の国債買い入れは、政府から直接国債を買入れしないことと、増税により財政の健全化が図られるという前提に立って、財政ファイナンスは行わないという説明が可能になっている。それが、消費税の増税が先送りになれば、これ以上の緩和は難しくなり、金融政策によるコントロールの手段を失いかねない。また、増税しないことにより、国債がさらに増発されることになれば、日銀の出口戦略にも影響が出てくる。日銀としては、増税先送りにより財政および通貨の信認を失うことがないよう慎重な対応をしなければならず、出口戦略をどうするのかについて、改めて考え直さなければならない。

日本が、財政赤字であることは確かであるが、無駄な予算が計上されているのも事実である。赤字だから増税が必要というが、その前に無駄なものを削減するのが先である。社会保障費、子育て支援、東北の復興など必要性があるものにはお金が掛かけなければならないので、将来的には増税が必要になるかもしれない。しかし、その税金が無駄な公共工事や公務員の給与アップに使われるのでは意味がない。選挙は唯一国民が国会議員を選択できるチャンであるから、良識ある国民の審判がなされることを期待したい。

(ZUU online)

【関連記事】
「本業で稼げない」メガバンク共通の悩み 各行の活路とは?
急激な円安…中小に仕掛けられた時限爆弾『為替予約終了』
日経テレコンや四季報まで閲覧可!?最短5分で入手できる情報の宝庫とは?
日本一のFX会社はどこ?3大FX会社を徹底分析
名士が好み、移り住む本物の邸宅地 渋谷区大山町の魅力とは?