ケガ防止や品質保持を考えると、バリ取りは欠かせません。しかし、少子高齢化の中では、人材不足から、バリ取り作業の効率化や自動化への検討が急務です。

本記事では、バリ取り自動化のメリットやデメリット、導入時に参考になる主要メーカーについても紹介しています。

目次

  1. バリ取りの自動化が進む背景
  2. バリ取りロボットなどを用いて自動化するメリット
  3. バリ取りを自動化するデメリット
  4. バリ取りの自動化で用いられる方法
  5. バリ取り機の主要メーカー
  6. バリ取りロボット主要メーカー
  7. バリ取り自動化を導入する際に注意したいこと
  8. バリ取り自動化でさらなる効率化を

バリ取りの自動化が進む背景

バリ取り自動化のメリットとは?導入時の注意点も紹介
(画像=Koto Online編集部)

バリ取りとは、樹脂や金属を加工する際にできる突起や残留物であるバリを取り除く作業のことです。バリが残っていると、次の製造過程でその製品を加工する人がケガをするかもしれません。また、バリが残ったまま消費者の元に製品が届くと消費者がケガをするリスクもあり、信頼の低下や満足度の低下につながってしまいます。

その他、バリが残っていることで設計通りの組み立てができない、完成品が基準値に収まらないというトラブルが発生することも考えられるでしょう。さらには、品質や生産性が低下するだけではなく、製品の故障を誘発する可能性も高まります。

バリは、製品や部品の表面にできるだけはなく、内部に残ってしまうこともあります。例えば、電化製品において、製品内部にバリが残った状態では電子基板に触れてしまう可能性があり、ショートすることもあります。また、バリによってできた傷が、摩擦や劣化の原因になることもあるでしょう。

一般的に、バリ取りは手作業で行われます。これは、繊細な凹凸を取り除く必要があるためです。目視で行えば細かく調整できますが「時間がかかる」「作業者への負担がかかる」といった問題があります。作業者のスキルによって、差が生まれる点も課題です。

さらに、少子高齢化によってどの分野でも人材不足が懸念されており、バリ取り技術を伝承することもなかなか難しくなっています。こういった課題を取り除く方法として、バリ取り作業を自動化する取り組みが各社で検討されているのです。

バリ取りの自動化は、主に2つに分類されます。バリ取り装置を用いた方法とロボットを用いた方法です。バリ取り装置やロボットを使って自動化するメリットやデメリットについて、見ていきましょう。

バリ取りロボットなどを用いて自動化するメリット

バリ取り装置やバリ取りロボットの導入を検討する企業もあります。では、バリ取りロボットや装置を利用して自動化することが、どのようなメリットにつながるのでしょうか。

人件費の軽減や人材不足の解消につながる

物価高騰が続く中、経費削減は経営陣の悩みの種ともいえます。一方で、少子高齢化で働き手が不足していることも課題です。

時間と労力がかかるバリ取りを自動化できれば、それに従事していた人員に他の作業を依頼できます。もしくは、バリ取り作業にかかる人員を削減できる、または必要なくなるため、人件費削減にもつながるでしょう。

作業効率が上がる

基本的にバリ取りは、手作業で行います。力を入れつつ丁寧な作業が求められるため、時間がかかるのはもちろんのこと、作業者にかかる身体的負担も大きいです。

手作業で行うバリ取りには、熟練した技術が必要になるため、すぐに誰でもできるようになるわけではありません。作業者の熟練度の違いによって、かかる時間も異なります。

バリ取り作業を自動化すれば、一連の作業が不要になります。また、バリ取りにかかる時間を統一することも可能です。結果、バリ取りにかかる時間を想定しやすくなったり、加工時間の短縮につながったりするでしょう。

品質の向上と安定が期待できる

手作業によるバリ取りは、作業者の経験や技術によって、仕上がりにバラつきがありました。そのため、バリ取りを行う作業者が多いほど、製品の均一性を保つのは難しくなります。

バリ取りを自動化すれば、機械やロボットが行うため、品質のバラつきが起きにくくなります。目視による確認よりも、品質の向上と安定が期待できるでしょう。

さらに、作業員によって仕上がりの差が生まれるケースがないため、どの製品や部品も同じような品質が担保されます。つまり、品質検査の簡略化につながるというわけです。

ケガを防げる

製造過程でできるバリは、鋭利な形をしていることから、作業者が誤って触れることで指を切ったり刺さったりすることがあります。また、バリ取りに使う工具によって、作業者のケガにつながるリスクもあるのです。

例え作業者がケガをしなくても、その後加工されずそのままの状態で流通した場合には、製品購入者がケガをする危険性もあります。

バリ取りを自動化すれば、細かい部分の除去忘れなどをしっかりチェックできるようになるため、目視だけの場合と比べると、見落としを防ぎやすくなるでしょう。バリ取りの自動化は、品質保持だけではなく、製品に関わる人がケガをするリスクを排除する役割もあるのです。

バリ取りを自動化するデメリット

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(画像=Koto Online編集部)

バリ取りの自動化は、メリットだけではありません。もちろんデメリットもあるため、デメリットについてもしっかり把握しておく必要があります。バリ取り自動化のデメリットについて、考えていきましょう。

導入に費用がかかる

バリ取りを自動化するためには、専用のマシンやロボットを導入しなければなりません。もちろんバリ取りを行う機器本体だけではなく、精度を保つためにカメラやセンサーなどの周辺機器の購入も不可欠でしょう。そのため、初期費用にある程度のまとまった資金が必要になります。

また、専用マシンやロボットを使えば、定期的なメンテナンスや点検も欠かせません。つまり、初期費用以外に保守費用など、さまざまな費用がかかる可能性があります。

設置する場所を用意

自動バリ取り機などのマシンやロボットを置くためには、ある程度のスペースが必要です。もともとバリ取りを人的作業で行っていた場合は、マシンやロボットを設置する場所がないケースもあるでしょう。

また、マシンやロボットを設置すればそれでよいというだけでなく、人が通れるように通路を確保したり、バリ取りした製品を運ぶ空間を確保したりする必要もあります。

1台で何でもできるわけではない

「このマシンを導入すれば、すべてのバリ取りができる」とは限りません。薄い形状のものに対応したマシンがあったり、穴のバリ取りを得意とするものだったりと、マシンにより性能がさまざまです。

除去が必要なバリにすべて対応できるようにしようと思えば、いろいろな種類のマシンやロボットを導入しなければなりません。

そうすると、初期費用やメンテナンス費用、設置スペースの確保など、課題が増える可能性があります。バリ取りの自動化を検討するのであれば、どういったマシンやロボットを優先的に導入するのか、計画を立てる必要があるでしょう。

また、バリ取りロボットを導入する場合は、作業や動作を教えるティーチングを行わなければなりませんが、ティーチングは誰でもできるわけではありません。ティーチング実施のために作業者に特別教育を受けてもらう、動作プログラムの微調整が必要になることもあるでしょう。

バリ取りの自動化で用いられる方法

バリ取り装置といっても、さまざまな種類があります。ここでは、バリ取りの自動化で用いられる方法について見ていきましょう。

バリ取りをマシニングセンタなどの工具で行う

マシニングセンタなどの工作機にバリ取り用のマシンを取り付けて、バリ取りを行う方法のことです。すでに工作機があれば本体を購入する必要がないため、導入しやすいでしょう。以下のような工具を取り付けます。

・割りピン:刃の先が割りピンのようになっていて、回転させながら穴に挿入することでバリを取り除きます。
・ブレード:ドリル加工した穴のエッジのバリ取りの際に、バネの力を利用して、刃をバリに押し当てて使用します。
・回転式ブレード:ブレード自体が回転しながら、ドリル穴にあるバリを除去します。
・クーラント式ブレード:内径や交差穴のバリ取りに用いられ、圧力を使ってブレードを押し出すタイプです。

この他にも、セラミックファイバーとスリーブで構成された加工物表面のバリ取りに使うものや、バリ取りと面取りを同時に行えるツールなど、使用用途に合わせたさまざまな工具があります。

バリ取り機を使用する

バリ取りのみを行うバリ取り専用機を導入する方法もあります。バリ取りに特化したマシンであるため、効率的にバリ取りが行えるでしょう。

ただし、専用のマシンを購入しなければならないことや、製品やバリ取りを行う量などによって研磨方法を検討する必要があります。

バレル研磨法は、バレル槽に加工物、研磨メディアや水などを入れて回転や振動によってバリを取り除いていく方法です。研磨やエッジ仕上げもまとめて行え、一度にたくさん投入できるため、量産品のバリ取りに向いています。

ブラスト法は、遠心力を使って投射材を加速させて、投射材と加工物が衝突することでバリを取る手法です。投射材を噴射する範囲を変えれば、加工範囲を調整することができます。

また、電解研磨法という手法もあります。電解液に浸けて電流を流すことでバリを溶かす方法です。短時間でバリ取りができるため、量産品のバリ取りに適しています。その他にも、化学研磨法やサーマルデバリング法、砥粒流動加工法、ウォータージェット法、磁気研磨法などがあります。

バリ取りロボットを使用する

バリ取りロボットの場合、人の腕のようなロボットアームに工具やブラシを付けてバリ取りを行うものや、人と協力しながら作業できる協働ロボットなどがあります。バリ取りロボットの導入を考えると、費用面や設置スペースが気になるでしょう。

しかし最近は、ロボット本体の小型化が進み、さほど設置スペースを必要としないケースがあります。また、バリ取りロボットのハンドやプログラムを変えれば、他の用途でも使うことが可能です。

バリ取り機の主要メーカー

バリ取り自動化に向けて検討する第一歩として、導入するものをバリ取り機にするのか、バリ取りロボットにするのかという選択をしなければなりません。また、どちらにするかを決めたあとは、取扱メーカーを探す必要もあります。

ここからは、バリ取り機やバリ取りロボットの主要メーカーを紹介します。まずは、バリ取り機の主要メーカーから見ていきましょう。

株式会社ベッセル

大阪に本社を置く1962年設立の企業です。主に、ベッセルブランドのドライバーや作業工具、電動工具などを販売しています。株式会社ベッセルがバリューとして掲げているのは、着眼力・挑戦力・品質力・共創力の4つのです。

変化に挑み、他社にない新製品をいち早く開発してどこよりも早く市場に届けることをモットーにしています。もちろん、スピードだけにこだわらず、厳しい姿勢で品質向上に努めています。また、ニーズに合わせた製品作りにも積極的で、お客様と一緒に考えて製品を作り上げるという点も特徴です。

株式会社ベッセルでは、加工後すぐにバリ取りができるような、ハンディタイプの「エアーマイクログラインダー」や「ミニベベラー」などを販売しています。軽くてコンパクトなハンディタイプのため、作業性が高まるでしょう。

株式会社スギノマシン

富山県に本社を置く株式会社スギノマシンは、1956年に設立しました。高圧ジェット洗浄装置やマシニングセンタ、産業用ロボットなどの開発や設計、製造、販売を行っています。

社員一丸となって最新最良の製品を開発・提供し、企業と社員の発展を図ることを目的にしている企業です。もちろん企業や社員だけではなく、社会的責任を果たすことも目的に掲げており、持続可能な社会の発展のための活動も行っています。

取り扱いのバリ取り機は、超高圧水を使ったタイプのマシンです。最高245MPaの高圧水を製品に噴射することで、洗浄とバリ取りを同時に行います。高圧ポンプから洗浄機まで一貫製作できる世界唯一の洗浄機メーカーの技術をチェックしてみてください。

株式会社ディエムシー

2012年に設立した株式会社ディエムシーは、本社が東京にあるバリ取り機器事業を行う会社です。お客様の希望に合った高品質のものを設計・製造することはもちろん、アフターサービスやメンテナンスも迅速に対応することをモットーにしています。

株式会社ディエムシーで販売しているバリ取り機は、砥粒流動加工によるバリ取りや研磨を行うマシンです。砥粒流動加工法では、砥石を混ぜたメディアを含む粘弾性媒体を加工物に押し流すことで、バリを取り除きます。粘弾性媒体を使うため、複雑な形状のものにも対応しやすい点がメリットです。

バリ取りロボット主要メーカー

バリ取り機は、バリ取り専用工具を工作機に取り付けたり、ハンディタイプの工具を使ったりしてバリ取りを行うマシンを指します。バリ取りロボットは名前の通り、ロボットでバリ取りを行う装置のことです。

ここでは、バリ取りロボットを販売する主要メーカーについて見ていきましょう。

株式会社ファインシステム

ファイングループの中にある株式会社FINESYSTEM(ファインシステム)は、2023年に設立しました。愛知県に本社を置くバリ取りロボットの設計や製作などを行う会社です。熟練工のバリ取りをロボットにて再現して自動化することで、時間短縮やコスト低減をサポートしています。

全商品を自社で開発しており、自社ですべて完結できるような生産システムを完成させているため、設計から製作までを一括し、内製することが可能です。同じグループの司工機と提携し、ニーズに合わせたバリ取りロボットの開発や工機の自動化対応もしています。

株式会社クロイツ

1989年設立の株式会社クロイツでは、高剛性ロボット「ロボルータ」を販売しています。独自に開発したロボットで、多関節ロボットのような操作性と、工作機械の剛性を兼ね備えた製品です。ニーズやバリに応じて仕様を変更することができるカスタマイズ可能なロボットでもあります。

「ロボルータ」の構造を取り入れて、新たなステージを目指したバリ取りロボット「バリスタ」も注目です。工作機械と同じ制御を取り入れることで、誰でも使いやすいことを目指しています。また、3D CAD/CAMにも対応可能です。

株式会社クロイツでは、高剛性ロボット以外にも、多関節ロボットやバリ取り工具、周辺機器の販売も行っています。

株式会社豊電子工業

株式会社豊電子工業は、1972年に設立した会社で、ロボットシステムの開発などを取り扱っています。開発や提案から、設計、組み立て・検証、生産立ち上げ、保守・アフターフォローまで対応可能です。また、ダイカストと呼ばれる鋳造技術にも特化しており、バリ取りロボットでもその技術を活用しています。

バリ取りロボットについては、スタンドアローンタイプのバリ取りロボットをベースに、ニーズに合わせた開発が可能です。ツールの折れや伸びを検出したり、切削油塗布機能が標準装備されていたりすることで、量産にも役立つでしょう。

バリ取り自動化を導入する際に注意したいこと

バリ取り自動化は、作業効率が飛躍的にアップする可能性がある方法です。しかし、導入してもメリットばかりではありません。バリ取り自動化を導入する際には、いくつか注意したいことがあります。

・剛性の違い
・精度
・工具の摩耗具合

バリ取り機とバリ取りロボットを比べると、ロボットのほうが、剛性が低いといわれています。バリ取りする製品の材質と、導入するマシンとの相性が適正かどうかを考える必要があるでしょう。

精度については、バリ取りロボットであれば、プログラムするだけで作業を繰り返してくれます。しかし、同じプログラムを繰り返すことでズレが生じる可能性が高まるでしょう。

工具の摩耗についてですが、量産すればバリの量も多くなるはずです。工具が摩耗すれば交換しなければなりません。また、工具の摩耗頻度にも注意が必要です。数個で工具が摩耗してしまうと、すぐに交換しなければならず、これでは自動化できたとはいえないでしょう。

製品の材質やバリ取りを行う製品の量など、さまざまなことを検討した上で、バリ取りの自動化を進めるようにしてください。

バリ取り自動化でさらなる効率化を

バリ取りを自動化すると、人件費の削減や人材不足の改善につながる可能性があります。しかし、やみくもに自動化すれば良いというものではありません。

バリ取り自動化のメリットやデメリットについて、しっかり考える必要があります。また、自動化を検討する場合は、バリ取り自動化を導入してどれくらい効率化が進むのか、どの種類のマシンを導入すれば良いのかなど、幅広い視野を持って考えるようにしましょう。

(提供:Koto Online