近年、AIとIoT技術の発達によって、モノやサービスの品質を大幅に向上させることに成功しています。そして、今、さまざまな業界においてAIとIoTを組み合わせて活用することによって、さらなる品質向上や業務効率化が期待されています。

本記事では、AIとIoTの違いから両者を組み合わせによる活用例、AIやIoTが直面する課題を解説します。

目次

  1. AI・IoTとは何か
  2. AIとIoTができること
  3. AIとIoTの組み合わせがもたらす相乗効果
  4. AIとIoTの組み合わせによる活用事例
  5. IT・IoTの課題
  6. 広がるAI・IoTの可能性

AI・IoTとは何か

AIとIoTが切りひらく未来の可能性とは?
(画像=Koto Online編集部)

「AI」と「IoT」、言葉は認識しているものの、それぞれの特徴や違いを理解している人は少ないのではないでしょうか。本章では、AI・IoTの違いや組み合わせることによりもたらせられる相乗効果について解説します。

AIの概要

AIは「Artificial Intelligence」の略称で、日本語に訳すと「人工知能」です。人間の脳が行っている知的活動、例えば、画像認識や自然言語処理、機械学習などを模倣して行う技術をいいます。

AIには、「汎用型」と「特化型」がありますが、人間と同等の問題解決能力を持った「汎用型」はまだ開発に至っていません。一方で、画像認識や自然言語処理などの「特化型」については、人間をしのぐ成果を出すことが可能となっています。

近年、AIはコンピューター技術の向上と、ビッグデータが普及したことにより急速に普及しています。その結果として、AIは現在、企業の活動や生活のさまざまな場面で使われるようになり、より便利で快適なものを提供するようになりました。

また、生活の場面だけでなく、医療や教育、製造など、さまざまな分野での応用も期待されています。AIの特徴としては、人間が指示をしなくても作業を遂行できる「自立性」と、学習や経験をもとに能力をアップできる「適応性」があげられます。

AIは、発展途上の技術ですが、あらゆる分野で大きな影響を与える可能性を秘めた技術です。

IoTの概要

IoTとは、「Internet of Things」の略称で、日本語では「モノのインターネット」と訳されることもあります。

モノのインターネットという言葉では、少し理解しにくいかもしれませんが、普段生活の中で利用している家電製品やセンサー等とインターネットが接続し、相互に情報交換が可能になることです。

その結果、インターネットでつながった製品同士が情報交換を行い、自動的に制御や判断を行えるようになります。

具体的には、エアコンやテレビ、照明器具などがインターネットに接続されることで、遠隔操作や自動制御が可能となります。

また、インターネットに接続することでデータの収集や共有を行うことができるため、ビッグデータとして活用することも可能です。

このように、IoTはモノとインターネットの接続により、モノの状態や環境を伝え、情報を受信・送信する機能を有していることが特徴であり、データの自動収集ができることが利点としてあげられるでしょう。

IoTに関してもAI同様、発展途上の技術であることから、さまざまな分野において影響を与えることが考えられます。

AIとIoTの違い

AIとIoTには、それぞれ別の役割があるのですが組み合わせて活用されるため、同じものと勘違いする方もいるのではないでしょうか。

AIの役割は、簡単に言えば「膨大な量のデータの解析」であり、IoTの役割は「さまざまな情報をリアルタイムで収集すること」です。

AIとIoTはそれぞれ単体でも活用されていますが、上記のような役割を有しているため、2つを組み合わせることで大きな効果を発揮します。

IoTが収集した膨大な量のデータをAIが解析することで、相関性や規則性を発見することが可能です。その解析結果を受けて、業務効率化や品質向上のための確度の高い提案を行うことができます。

このように、AIとIoTがそれぞれ異なる役割を果たすことで、より大きな価値を生み出すことが可能です。

AIとIoTができること

AIができることについては、概要でも解説しましたが、画像認識や音声認識、機械学習、自然言語処理、予測分析、画像やテキストの生成など、特化型AIが得意とする分野において力を発揮しています。

画像認識と機械学習については、製造工場における設備・機械の保全に活用されていますし、コールセンターでは音声認識による文字入力に活用されています。

IoTにできることは、カメラやセンサーなどをインターネットと接続することで、大量のデータを取得することです。カメラやセンサーで感知した、対象の状態や動きをデータとして取得します。

また、モノを操作したり、制御したりすることも得意としており、監視カメラの追尾機能などに利用されています。

AIとIoTの組み合わせがもたらす相乗効果

AIとIoTは、それぞれ別々の役割を持ちながら、互いに補い合うことで大きな効果を発揮する相互補完の関係にあります。

AIとIoTを組み合わせることで、ユーザーは精度の高いAIを利用できるようになり、開発者は膨大なデータの収集と解析ができるようになります。このように好循環が生まれることによって、技術と利便性の向上が促進されるようになり、ユーザーと開発者、相互に恩恵を受けられるのです。

AIとIoTを組み合わせて利用することは、さまざまな相乗効果を生むことが期待されており、以下の3つはその具体例です。

・データ量と分析能力の向上
・自動化と効率化の実現
・新たなサービスの創出

データ量と分析能力の向上という点では、現在、IoT技術の向上によって、センサーやカメラなどのデバイスを通じて膨大な量のデータを収集することが可能となりました。その膨大な量のデータをAIが機械学習によって分析し、新しい価値を創出することが期待されています。

このように、AIとIoTを組み合わせることで、データ量と分析能力が向上し、より高精度の分析や予測が可能となります。AIは膨大な量のデータの中から規則性や傾向を見つけ出し、自動的に判断・行動することが可能です。

一方、IoTはモノをインターネットに接続することで遠隔操作や自動制御ができます。AIとIoTを組み合わせることで、自動化と効率化を実現することができるため、業務面や生活面において、より便利で快適な環境を創出することが可能です。

AIと IoTを組み合わせることで、新たなサービスを創り出すことも期待されています。後述しますが、例としては自動運転などがあげられます。

AIとIoTは単体でも成果を上げることは可能です。しかし、2つを組み合わせて使うことで、より大きな効果を発揮します。両技術が融合されることによって、社会や生活は大きく変化することでしょう。

AIとIoTの組み合わせによる活用事例

AIとIoTの組み合わせは、さまざまな業界で活用されています。ここからは、実際のAIとIoTの組み合わせによる活用事例を業界ごとに見ていきましょう。

製造業における活用事例

製造業において、AIとIoTの組み合わせの活用のメインとなっているのは工場です。現在、AI技術を活用したIoTを導入する「工場のIoT化」が進んでいます。

例えば、今までは人の目で確認していた「検品」がその例です。センサーとカメラで収集したデータをAIが解析し、製品の良・不良を判定することで不良品を取り除くシステムが活用されています。

また、製造機械や設備保全の自動化も進んでいます。カメラが捉えた外観画像や、センサーが感知する機械・設備の温度変化などの情報をAIが解析し、異常を自動で検知することが可能です。機械や設備の異常を迅速に察知することができるため、製造ラインの問題点を素早く解決することができ、生産性向上にもつながります。

このように、異なる複数の情報を取り入れて、複合的に判断する技術のことをマルチモーダルAIといい、上記のような場面での導入が増加中です。この技術を取り入れることで、今後は設備異常の発見だけでなく、劣化や故障などを早い段階で察知して予防する、予防保全の分野においても期待が高まっています。

さらに、顔認証技術を取り入れることで、機密性の高いエリアや現場の入退場確認などの管理が容易となり、情報漏洩などのリスクを低減させることも可能です。

物流業における活用事例

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(画像=Koto Online編集部)

物流業では、物流の拠点となる物流センターや物流倉庫において、業務改善・業務効率化を目的にAIとIoTの活用を行なっています。

現在、物流業においては労働力の不足が問題となっています。さらに、インターネットの普及により、物流のスピードが重視されるようになったことから、AIやIoTの活用が必要となりました。

物流センターや物流倉庫内においては、入庫から出庫までの一連の作業(入庫、保管、ピッキング、梱包、出庫など)の効率化や自動化が積極的に進められています。

例えば、RFID(Radio Frequency Identification)タグの導入です。RFIDタグは、駅の自動改札機にも利用されている、ICチップに記録されたデータを読み取り、管理するツールです。

RFIDタグは倉庫から遠く離れた場所からでもICタグの情報を読み取ることが可能であるため、入庫時の検品や荷物の管理が効率的に行えます。

また、従来であれば紙やエクセルで行なっていた倉庫内の情報管理を効率化するために、多くの物流倉庫でWMS(Warehouse Management System)が利用されています。

AIとIoTを組み合わせた活用事例は、物流センターや物流倉庫における業務改善・業務効率化だけにとどまりません。

配送する物量の増加にともない、物流業界ではドライバーの人材不足が大きな問題となっています。そこで、業務の最適化を図り、人材不足の解決のためにAIとIoTの組み合わせが活用されています。

ドライバーがどのルートを通って配送し、どこに駐車するかなどのデータをGPSから収集・分析し、それをもとに配送ルートの最適化を行うシステムが導入されています。

農業における活用事例

農業の分野では、「スマート農業」という考え方が農林水産省によって推進されています。スマート農業は、ロボット技術やICTを活用することで品質向上や生産性向上、省力化を目指す新しい農業です。このスマート農業というコンセプトの中には、AIやIoT技術の活用も含まれています。

例えば、ドローンで畑や田んぼを撮影し、画像を解析することで病害虫の発生を検知し、農薬散布が必要な場所に、ピンポイントで行うことが可能です。この技術を活用することで、減農薬栽培米として販売が可能となり、付加価値をつけることができます。

また、ハウス栽培の農作物について、温度や湿度、二酸化炭素量、日射量などをIoTセンサーでデータを収集し、AIで解析を行うことで病虫害の予測を可能にしたシステムも活用されるようになりました。

さらに、水田における遠隔操作を行なっている事例もあります。水田に水位や水温、風力センサーとカメラを設置し、それらのデータをもとに水門の開閉を行います。台風や大雨などの災害時でも水田の様子を安全に確認することができ、水門を遠隔操作で開閉することで、最適な環境を保つことが可能となりました。

将来的には、気象データ(気温や湿度、日射量、風の強さなど)などのビッグデータや、ドローンが撮影した畑や田んぼの画像を分析することで栽培管理ができるようになることが期待されています。

スマートシティ・スマートオフィス

スマートシティとは、AIやIoTなどの最先端のデジタル技術を活用して、社会インフラ(エネルギーや交通網など)の効率化を図り、生活やサービスの質を向上させることにより、人が住みやすくなる都市のことをいいます。

5GやWi-Fiなどの情報伝達基盤となる通信技術や、ビッグデータを活用した災害予測や情報の共有などもスマートシティでは取り入れられる予定です。

スマートシティは、都市が抱えるさまざまな問題(インフラの老朽化や高齢化社会など)を解決するための方法として期待されています。この推進を受けて、さまざまな分野のスマート化が進みました。それは、オフィスも例外ではありません。

スマートオフィスは、オフィスで行う業務を快適かつ便利に行えるようにすることを目的に、高速ネットワークやさまざまなIT技術の活用によってスマート化を推進したものです。

例えば、営業や会計の管理システムに顧客管理システムを連携することで業務の効率化を図っています。

また、オフィス内の温度や湿度、照明をセンサーによって管理し、社員が働きやすい環境を整えることもITとIoTを組み合わせたスマートオフィスの例です。

スマートオフィスの大きな特徴は、業務効率化や生産性向上のためには、システム化だけではなく、社員がいかに快適に働けるかを重視しているところです。

IT・IoTの課題

生活や業務を、便利かつ効率的にしてくれる可能性を持つAIやIoTの技術ですが解決すべき課題も存在します。ここからは、ITやIoTの課題について解説します。

誤分析の可能性

IoTの活用によって得たビッグデータを分析する際に、AIは必要に応じた情報を分析し判断します。しかし、AIは分析から判断までを自動で行うため、その根拠が分からないという事態が発生する可能性もあるでしょう。

また、IoTが収集するデータによっては、因果関係が認められない分析を行なうことや、画像認識AIが未学習のものに対し、適当な判断を行なってしまうなどの事象が発生することもあり得ます。

例えば、「ある本を読んでいる人のほとんどが犯罪を犯している」という分析や、車載カメラのAIが路側帯を車道と認識してしまうなど、一歩間違えれば命に関わる事故を起こしかねません。

また、悪意を持ってAIに誤分析をさせることも可能ですので注意が必要です。セキュリティ対策も考えるようにしましょう。

対策としては、質の高いデータの収集や、データの誤記や未入力などを修正し、データの品質を高める(データのクレンジング)、分析後のデータチェックを人が行うなどがあげられます。

高コスト

AIやIoTを導入して運用するには、当然のことながらコストがかかります。また、AIやIoTを導入したからといって、すぐに成果が出るわけではありません。成果が出るまでの間、継続的にコストをかけることも必要です。

AIやIoTのシステムを自社で開発しようと考えている場合も、コストが発生しますので、ある程度の予算を確保しておく必要があるでしょう。

導入の効果を上げるためには、どのようなデータを収集、分析するかが重要です。自社が求める課題解決に適していなかった場合、それまでかけてきたコストが無駄になることも考えられます。

このように、AIやIoTを導入・運用したり、システムを開発したりする際には高いコストがかかる可能性があることを覚えておきましょう。

対策としては、どのような課題を解決したいのかを事前に明確にすること、AIやIoTができること・できないことを理解し、課題解決に最適かどうかを判断するようにしましょう。

人材不足

AIやIoTを活用するには、インターネットはもちろん、ハードウェアやソフトウェア、セキュリティ対策など、さまざまな専門的な技術や知識が必要です。また、データ分析も必要となるため、非常に高度な技術や知識が求められるでしょう。

現状、これらの技術をカバーできる技術者や、データ分析の専門家であるデータサイエンティストの数が絶対的に足りていません。そのため、AIが分析したデータや、その分析結果を生かしきれないという場面が多々あります。

せっかくAIやIoTを導入しても、データを活用しきれないと生産性の向上や業務の効率化を進めることはできません。

AIやIoTを活用するためには、運用するだけでは意味がるとはいえず、分析から導き出された結果を生かし、継続して利用することで初めて効果を発揮します。

そのためにも、今後はAIやIoTを扱える高度な技術を持った技術者と、データサイエンティストの確保・育成が重要となるでしょう。

広がるAI・IoTの可能性

AIやIoT、そして2つを組み合わせて活用することは、さまざまな業界において注目を集め、実際に導入も進んでいます。そして、導入されたAIやIoTを十分に活用することで、業務の効率化や利便性の向上、新しい価値の創造が始まっていると言っても過言ではないでしょう。

現状として、AIやIoTの活用には、誤分析の危険性やコストの問題、人材不足などの課題はあります。しかし、今後も多くの分野で取り入れられていくことは間違いありません。

その課題を解決した先には、社会が抱える問題を解決し、より利便性の高い生活をもたらす世界が広がっています。

この機会に、多くの可能性を秘めた技術であるAIやIoTに注目してみてはいかがでしょうか。

(提供:Koto Online