この記事は2023年9月29日にSBI証券で公開された「NISA活用も!株急落で投資好機?「毎月配当」の高配当パッケージ」を一部編集し、転載したものです。
目次
- NISA活用も!株急落で投資好機?「毎月配当」の高配当パッケージ
- 図表1掲載銘柄を解説
- 日本たばこ産業(2914) ~配当性向の目安は驚異の75%。海外での値上げ実施や円安が追い風
- LIXIL (5938)~水回り製品や建築製品メーカー。3期連続で増配を実施
- イオンフィナンシャルサービス (8570)~グループ内での顧客基盤が強み。業績とともに配当金も回復中
- 積水ハウス(1928)~過去最高業績更新、12期連続増配実施を予定。米住宅市況も底入れか
- あいホールディングス(3076)~マンション向けセキュリティシステムに強み。配当性向は50%が基準
- クミアイ化学工業(4996)~除草剤有効成分である「アクシーブ」が好調。今期は20円大幅増配見通し
- オーエスジー (6136)~総合切削工具メーカー。世界シェアトップ製品も。コロナ前の水準まで業績・配当金が回復
- オープンハウスグループ (3288)~都市に特化したディベロッパー。上場(2013年)来増配つづけ、10期連続実施予定
NISA活用も!株急落で投資好機?「毎月配当」の高配当パッケージ
9/28(木)の東京株式市場では、日経平均終値が31,872円(▲499円)と急落しました。この株式相場下落の背景には、以下に示すように様々な要因が重なっているとみられます。
(1)米国の政府機関閉鎖への懸念
(2)米国の長期金利上昇
(3)9月配当取りが一巡したことによる手仕舞い売り
(4)円安進展で為替介入(円買い)への警戒
当面は、(1)と(2)の米国発の要因が重要となりそうです。(1)において暫定予算の成立などにより政府機関の閉鎖が一旦回避されるようであれば、リスク回避が一巡して長期金利の上昇が一服する可能性が考えられます。(2)については、米過剰貯蓄が減少し、家計の余裕は少なくなりつつあり、米国景気・金利のピークアウトは近いとの見方もできそうです。
国内要因と言える(3)、(4)についてですが、前者は一時的な売りフローと言えるでしょう。(4)に関して、円相場は149円台半ばへと円安、ドル高が進行しています。これまでならば、円安=輸出株買いにつながったのですが、現状は円安でありながら、輸出株については逆に敬遠されるような動きとなっています。円相場は、昨年10月に150円台に到達した後に為替介入(円買い)が入り、その後急ピッチで円高へと揺り戻されたため、この水準から円安を手掛かりとした物色に警戒感が強まっていると考えられます。
9/26(火)付の日経平均の『ココがPOINT!』「当面の国内株式市場は材料豊富!?その内容は?」で指摘したように、目先の東京株式市場は好材料に恵まれると考えられるため、米国要因さえ落ち着きを取り戻せば、買い戻しの動きが期待されるでしょう。
さて、9/28(木)は9月末配当の権利落ち日であった訳ですが、配当の権利確定は9月、3月に限らず毎月のようにあります。投資する銘柄の組み合わせにより、毎月配当を受け取るポートフォリオにすることも可能です。そこで、今回の「日本株投資戦略」では、「毎月配当」を実現する高配当利回りパッケージを構築すべく以下のスクリーニングを行なってみました。
(1)東証プライム市場に上場
(2)時価総額1,000億円超
(3)会社予想配当利回りが3%超
(4)アナリストが2名以上カバーしている銘柄
(5)証券・商品先物業の銘柄を除く
(6)前期・今期会社予想の純利益が黒字
(7)これらの条件を満たし、決算月を同じくする他のすべての銘柄よりも予想配当利回りが高い
図表1の銘柄は上記(1)~(7)の条件をすべて満たしています。掲載は(3)の予想配当利回りが高い順となっています。掲載銘柄の予想配当利回りは、9/28(木)時点の東証プライム市場の予想配当利回り2.22%を上回り、かつ、高配当の目安と言われる配当利回り3%も上回っているため、「高配当利回り」が予想される銘柄と表現して妥当であると考えます。
このスクリーニングは結局、年間の各月ごとに、主力銘柄(時価総額1,000億円超)の中から予想配当利回りがもっとも高い銘柄を選び、組み合わせることを狙っています。ただ、4月、5月、7月、8月を決算月とする銘柄の中には条件を満たす銘柄がありませんでした。それでも、他の決算月の中間配当等も加味することで「毎月配当」を実現しています。(図表2)
なお、図表2から明らかな通り、月ごとに受取りが想定される配当金額は多かったり、少なかったりしています。毎月、ほぼ同額の配当金額を受け取る銘柄パッケージにしたい場合は、投資数量を銘柄ごとに工夫することも、ひとつのやり方であると考えられます。
また、3月決算銘柄、12月決算銘柄等は銘柄数も多く、むしろ、それぞれ1銘柄に絞ること自体、困難な月でもあります。図表3にある銘柄も、市場平均と比べて予想利回りは高いので、投資家の好みにより銘柄パッケージに組み入れてもよいでしょう。
■図表2 【ご参考】図表1の銘柄を保有した場合に想定される毎月配当(1株当たり)の内容
図表1掲載銘柄を解説
日本たばこ産業(2914) ~配当性向の目安は驚異の75%。海外での値上げ実施や円安が追い風
130以上の国と地域でたばこ製品を販売するグローバル企業。海外売上高比率が73%を占めています(22.12期)。日本国政府が発行済み株式数の3割超を保有する「政府保有株」のひとつです(22.12期末時点)。国内では低価格路線をとる半面、海外では複数回の値上げを実施。期初の会社予想の今期(23.12期)純利益は、円高想定等により僅かに減収を見込んでいました。しかし、想定以上に円安が継続したことで、2Q(4-6期)決算発表時に前期比3.2%増に上方修正しています。
2021年に配当性向*の目安を100%から75%に引き下げましたが、依然として高水準です。支払配当金の約2,600億円に対し、3,820億円のフリーキャッシュフロー(配当金や自社株買いなどに充当可能な企業の自由なお金)を計上しています(22.12期)。
LIXIL (5938)~水回り製品や建築製品メーカー。3期連続で増配を実施
水回り製品(トイレ、お風呂、キッチンなどの)と建築製品(窓、ドアなど)の開発・提供を行う企業です。2011年、国内の主要な建材・設備機器メーカー5社が統合したことで誕生しました。世界150カ国に事業展開し、海外売上高は全体の35%を占めています(23.3期)。業績面では、原材料価格の高騰や円安が利益面で痛手となっており、目下、価格転嫁等で対応中です。会社側は12月末までの景気回復を見込んでいると述べています。
配当性向30%以上を維持することと、自己株式を機動的に取得することが基本方針です。実際に、前期(23.3期)は約100億円の自社株買いを行った上、既に保有していた分と併せ消却を行っています。また、21.3期から23.3期まで3期連続増配で増配を実施しており、株主還元意欲が高まってきている模様です。
イオンフィナンシャルサービス (8570)~グループ内での顧客基盤が強み。業績とともに配当金も回復中
日本とアジアを中心に金融サービスを展開。クレジットカード事業、銀行事業(イオン銀行)、電子マネー事業(WAON)など領域は多岐にわたります。 営業利益の構成は、国内が3割、国際(中華圏、メコン圏、マレー圏)が7割です(23.3期)。親会社であるイオングループのプラットフォーム活用や、各国小売業態との協業が可能な点が強みです。
配当性向の目安は30~40%を掲げてます。コロナ禍で減益となった影響で、21.2期は会社設立後初の減配となりました。22.2期以降は順調に業績・配当ともに回復傾向です。会社予想の今期純利益は国内事業再編による費用発生で、前期(23.3期)から12%ほど減益となる見通しですが、配当金は維持される予想となっています。
積水ハウス(1928)~過去最高業績更新、12期連続増配実施を予定。米住宅市況も底入れか
「住」に特化したバランスの取れた4つのビジネスモデルを持つ企業です。
(1)従来からある戸建住宅事業が含まれた請負型ビジネス、(2)都市開発等を行う開発型ビジネス、(3)米国、豪州、英国、シンガポール、中国で展開中の国際ビジネス、(4)不動産フィー事業(賃貸・仲介等)やリフォーム事業が属するストック型ビジネスがあります。(3)は、米国での住宅ローン金利の急激な上昇に伴い受注残高が減少した影響で、今期(24.1期)2Qまでの業績は軟調気味でした。しかし、米住宅関連指標が底入れの兆しを見せ始めたことで、米大手ハウスメーカーのDR ホートン(DHI)などの住宅関連株は、過去最高値水準に位置しています(23.9時点)。
中期的な平均配当性向40%以上が会社目標で、下限は110円としています。さらに、自社株買いに関しても機動的に実施してゆく方針です。2023年度~2025年度の中計では、「国内の“安定成長”と海外の“積極的成長”」を掲げ業績が順調に拡大。今期(24.1期)は売上高3兆800億円(前期比5%増)、営業利益2,650億円(同1%増)と過去最高を更新する見通しです。業績拡大に伴い、12期連続での増配実施も予定されています。
あいホールディングス(3076)~マンション向けセキュリティシステムに強み。配当性向は50%が基準
「監視カメラやレコーダー等の「セキュリティシステム機器」が主力製品で、その他はポスターやステッカー、看板の作成に使う「情報機器」、カード発行機の「カード機器その他事務用機器」等を展開しています。主力は全社営業利益(23.6期)の6割を占める「セキュリティシステム機器」で、既設マンション向けのサービス一体型商品に強みをもっています。23.6期は売上高463億円(前期比1.4%減)、営業利益94億円(同4.2%減)と3期ぶりの減収・減益でした。ラベルやシール製造向けの個人向けカッティングマシンが欧米の景気減速の影響を受けたようです。24.6期は売上高530億円(前期比14%増)、営業利益107億円(同13%増)と回復し、予想EPS175.25円を見込んでいます。「情報機器」でカッティングマシンの販売回復と計測機器の半導体不足解消が見込まれます。 配当政策として配当性向50%以上を基準とする方針です。今期予想EPS(上記)に50%を乗じると86円なので、会社予想1株配当(年間)90円は、この条件を満たしたものになっています。9/28(木)終値2,373円に対し、予想配当利回りは3.8%と計算されます。
クミアイ化学工業(4996)~除草剤有効成分である「アクシーブ」が好調。今期は20円大幅増配見通し
全農(全国農業協同組合連合会)が筆頭株主(23.4末持株比率22%)。同社農薬は、全農を経由して国内販売され、安定した収益源になっています。農薬・農業関連の69%、全体の60%が海外売上高(ともに23.10期3Q)というグローバル企業で、製品は50ヵ国で販売され、海外拠点も13に達しています。
研究開発型企業であり、自社開発した原体(有効成分)は20原体におよび、ライバルに対して主導権を握れることが強みとなっています。同社が開発した除草剤有効成分である「アクシーブ」は、既存の除草剤が効かないスーパー雑草にも有効であることに加え、長期間・安定した効果が得られることや、少ない量で済み環境負荷が少ない等の特徴があり、世界で商品化され、成長に大きく寄与しています。
23.10期3Q(累計)は、売上高1,303億円(前年同期比22%増)、営業利益141億円(同36%増)と大幅増収増益でした。アクシーブの販売増、国内農薬の値上げ等、円安等が寄与し、営業増益につながりました。通期は売上高1,690億円(前期比16.3%増)、営業利益171億円(同34.9%増)が会社予想です。1株あたりの配当金は中間18に期末24円、年間で42円(9/28時点予想配当利回りは3.73%)と、前期比20円の大幅増配見通しです。
オーエスジー (6136)~総合切削工具メーカー。世界シェアトップ製品も。コロナ前の水準まで業績・配当金が回復
愛知県に本社を置く、総合切削工具メーカー。創業品かつ世界トップシェアを誇るタップ(ねじを加工する工具)や、ドリルなどを扱っています。 顧客構成(会社推定)は、自動車関連向けが45%、一般部品産業向けが45%、航空機関連が10%です(22.11期)。また世界33カ国で展開し、海外売上高比率は65%に上ります(同)。
配当性向の目安は35%以上を掲げています。新型コロナの影響で、一時業績が落ち込み減配となっていたものの、22.11期にはコロナ禍前を超える水準まで回復。業績増に伴い配当金も大幅増額となりました。今期(23.11期)の業績見通しは前期(22.11期)比ほぼ横ばいで、一株当たりの予想配当金も前期と同額が維持される予定です。
オープンハウスグループ (3288)~都市に特化したディベロッパー。上場(2013年)来増配つづけ、10期連続実施予定
独立系総合ディベロッパー。 コストを抑えた注文住宅等で年平均成長率約30%(直近9年)を達成し、業績は右肩上がりです。売上高構成比はコア事業の戸建関連54%、収益不動産16%、コーポレーション15%他となっています(22.9期)。都心や中核都市といった「好立地」に特化した戦略が業績拡大の背景にあります。
配当政策は、「株主に対する利益還元を経営の重要課題と認識し、将来の事業展開と財務体質の強化等を考慮しながら、 安定した配当を継続実施していくこと」を基本方針に掲げています。配当性向の目安は20%以上で、2013年の上場以来9期連続で増配を実施。23.9期も増配実施を予定しています(※23.9期の権利付き最終日は9/27で過ぎている点は、ご注意ください)。
▽当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証プライム市場を中心に好業績が期待される銘柄・株主優待特集など、気になる話題についてわかりやすくお伝えします。