この記事は2023年9月8日にSBI証券で公開された「「エヌビディア高値更新」「アーム上場」で盛り上がり期待の半導体株は?」を一部編集し、転載したものです。
目次
「エヌビディア高値更新」「アーム上場」で盛り上がり期待の半導体株は?
日経平均株価が戻り歩調をたどっています。9/5(火)には8/1(火)以来の33,000円回復(終値ベース)となりました。8/21(月)~9/6(水)の同株価は4日続伸→反落→8日続伸という力強い展開でした。TOPIXは9/6(水)には、1990年7月以来、33年ぶりの高値水準を回復しました。
日本株はなぜ強いのでしょうか。その背景には、日米欧等の主要国と中国・ロシア等との政治的・経済的分断が進み、生産や営業の拠点としての日本が見直されているという側面もあります。円安の進行や、国際的に安くなっていた人件費等もあり、日本企業についても国内生産に回帰する動きが強まっています。
日本はバブル崩壊後「失われた20年」を経験しましたが、その背景にあったのが国内製造業の空洞化であったように思われます。生産の国内回帰は、雇用を回復させ、働く人の賃金や物価を回復させる効果を期待できます。PBR1倍割れ企業の多くは、デフレで苦しんできた旧来型産業の企業です。東証がPBR1倍割れの企業に、PBR回復の対策を求めたこともキッカケとなり、日本企業の株価回復が本格化しました。
日本企業への再評価や国内回帰の象徴例が半導体産業であると考えられます。米国が中国に対する技術流出を厳しく規制する中で、相対的に日本の半導体産業の位置付けが高まってきています。そこに、半導体用途の飛躍的拡大が加わり、半導体産業は未曽有の好況を享受してきました。足元は生産過剰に伴う生産・在庫調整の局面にありますが、どうやらそれも最終局面になってきたように見受けられます。
「日本株投資戦略」では、再度半導体関連株に注目したいと思います。足元、以下のように半導体関連株への好材料が積み上がりつつあると考えられるためです。「好材料」と考えられるのは以下の3点です。
(1)8/23(水)に発表された米エヌビディアの四半期決算発表で、AI(人工知能)向け半導体市場の急拡大が確認されたこと
(2)WSTS(世界半導体統計)によると、世界半導体出荷額が22/11~23/5の前年比2桁減から、6月と7月は1桁減に「下げ渋り」となったこと
(3)ソフトバンクグループ(9984)が出資し、スマホ等にプロセッサーを供給するアームが9/14(木)ナスダック市場に上場の予定となり、半導体関連株の刺激材料になる可能性
今回の「日本株投資戦略」では、半導体市場の方向感を示唆するSOX指数について、構成銘柄のうち時価総額上位10銘柄をまずピックアップ。それら10社において、それぞれ仕入れ先上位20社(Bloombergデータ)に入る企業のうち日本企業だけを抽出しました。
SOX指数時価総額上位10社に対し、販売額が上位(20位以内)の日本企業は合計20社ありました。図表の銘柄はその20社を、時価総額順に並べた際の上位10社です。結果的には、日本を代表する半導体関連株のグループになったと考えられ、これらの銘柄はそもそも株式市場で投資家の人気も高いようです。表では、簡単な業績・株価コメントを記載し、その一部の銘柄について後段で、やや細かめにご説明しています。
一部掲載銘柄を解説
レーザーテック(6920)~最先端EUV露光装置に対応のフォトマスク検査装置で圧倒的。株価は保ち合い
■EUV露光装置に対応のフォトマスク検査装置でほぼ独占状態
半導体製造工程において、回路をシリコンウェハに焼き付けるときの原板をフォトマスクといいます。フォトマスクに加工される前の、ガラス基板に遮光膜を形成したものをマスクブランクスといいます。同社はフォトマスク、マスクブランクスの検査装置を手掛ける会社です。
半導体のコスト競争力を左右するのが、回路の線幅を極力狭くする微細加工であると考えられますが、現在、最先端の微細加工を可能にするEUV(極端紫外線)を使った露光装置(ステッパー)の分野では、オランダのASML社が独占的な存在です。
同社はEUV露光装置に対応した検査装置を独占的に供給しており、ASML社と業績が連動傾向にあります。
■三角保ち合いを上放れる兆しも?
会社側は7/24(月)に23.6期の業績予想上方修正を発表し、会社予想営業利益を420億円から610億円に上方修正。8/7(月)には同期の決算発表を行い、
売上高は1,528億円(前期比69%増)、営業利益622億円(同91%増)となりました。
多くの半導体関連企業が市況悪化に苦しむ中、相対的にも強い決算となりました。23.6期4Q(3ヵ月)だけみると、売上高は前年同期比99%増、営業利益は同118%増と大幅増収・増益になりました。
年間受注高は前年比42%の大幅減でした。しかし、もともと豊富な受注残をこなしきれていなかった面が強く、受注減がすぐ減収につながる訳ではありません。受注残は9%増加し、前期売上高の2.6倍と高水準を維持しています。
SEMI(国際半導体製造装置材料業界)の予想では、半導体前工程製造装置市場の規模は23年の793億ドル(前年比20%減)から24年は877億円(同10%増)へ回復する予想です。会社予想業績も売上高1,900億円(前期比24%増)、営業利益640億円(同2%増)と増収増益を見込みます。Bloomberg集計の市場コンセンサスでは営業利益773億円(同24%増)の予想です。
株価は7/21(金)に19,410円(取引時間中)の安値を付けていましたが、前述の上方修正や決算発表を経て、9/7(木)時点では22,105円(終値)となっており、チャート的には三角保ち合いを形成し、上放れの兆しを見せているようです。9/1(金)時点では信用売り残が増えているようで、取り組み妙味も増しているようにみえます。8月以降、目標株価等を更新したアナリストの平均目標株価は約27,000円(Bloomberg)で、時価を上回っています。
なお、レーザーテック株は9/4(月)に、10/2(月)算出分から日経平均株価へ組み入れられることが発表されています。
▽週足チャート(2年)
2023/9/8(週足)11:30時点。
*当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
*上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
▽通期業績推移(百万円)
※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
ディスコ(6146)~切断装置の世界的大手。株価は上場来高値水準
■切断装置の大手。ダイシングソー世界シェアTOP
高度な「切る・削る・磨く」の加工に特化した企業です。
1937年の創業当初は「第一製砥所」という砥石メーカーでした。 モノを小さく・薄く・キレイに加工する「装置」と、モノを加工するための消耗品である「加工ツール(おもに砥石)」を開発・製造・販売しています。
電子製品の軽量化や縮小化に伴い、半導体等の部品に対しても同様の進化が求められます。当社は、その半導体を“小さく”、“薄く”するための製品で有名です。半導体製造工程において、当社製品には「ウェハ」と呼ばれる円盤状の素材を賽の目に切り分けるための切断装置など(ダイシングソーやレーザソー)を多く取り扱っています。特に、ダイシングソーは世界トップシェアを誇り、7~8割を占めています。
■パワー半導体向けが下支え。株式分割の追加実施に期待
海外売上高比率は88%(23.3期)で、円安が大きな増益要因として下支える面を有します。
今期1Q(23.4-6月期)は、売上高539億円(前年同期比10%減)、営業利益169億円(同22%減)で減収減益でした。他企業同様、民生向けの需要低迷をパワー半導体向けが下支えた格好です。また、人件費や研究開発費を中心に販管費が増えたことで粗利率は5%超低下しました。ただ、前Qまで減少傾向が続いていた消耗品(精密加工ツール)の出荷が増加に転じるなど、明るい兆しが見えた面もあったようです。
本年3月末を基準とし、1:3の株式分割を実施。しかし、AIバブルの影響もあり、株価は上場来高値に近い水準(9/7終値28,280円)です。単元株で買う場合、2024年から始まる新NISAでの年間利用枠240万円に収まりません。追加の株式分割の実施へも期待感が持てるでしょう。
▽週足チャート(2年)
2023/9/8(週足)11:30時点。
*当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
*上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
▽通期業績推移(百万円)
※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
▽当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証プライム市場を中心に好業績が期待される銘柄・株主優待特集など、気になる話題についてわかりやすくお伝えします。