この記事は2023年6月30日にSBI証券で公開された「JSRに続け!半導体関連シェア・トップ企業を探る」を一部編集し、転載したものです。
目次
JSRに続け!半導体関連シェア・トップ企業を探る
6月の東京株式市場では、日経平均株価が月足ベースで6ヵ月連続の上昇となりました。6/19(月)には一時、33,772円まで上昇し、年初来の上昇率が29%に到達。その後は、利益確定やリバランスを目的とした売りが増え、伸び悩みました。
物色的には、半導体株が引き続き主役の一角を占めていました。5/25(木)に米エヌビディアが決算発表を実施し、AI(人工知能)の開発や利用が半導体の需要を押し上げていることが明かになりました。それを受けて日本でも、東京エレクトロン(8035)やアドバンテスト(6857)など主力半導体株が高値を更新。カスタムSoCを開発・提供するソシオネクスト(6526)などが人気を集めました。
そうした中、日本の半導体業界でも大きな出来事がありました。6/24(土)付の日経報道で、政府系ファンドであるJIC(産業革新投資機構)が、半導体フォトレジスト首位のJSR(4185)を1兆円で買収する計画であることが明らかになりました。その後、TOB(株式公開買い付け)計画が正式に発表され、JSRがJIC主導で業界再編を期待していることも明かになりました。6/24(土)の日経報道を受け、東京株式市場では、JSRのライバルでフォトレジスト第2位の東京応化工業(4186)など、同様の半導体材料で高シェアを有する銘柄も「再編期待」から買われる展開になりました。
そこで、今回の「日本株投資戦略」では、半導体製造装置や関連部材で高シェアを有する銘柄を抽出すべく、以下の条件でスクリーニングを行なってみました。
(1)東証上場銘柄
(2)時価総額が1,000億円超1兆円未満・・・投資家の多くが知っている著名な半導体株は除きました
(3)SBI証券銘柄検索ウィンドウに「半導体」と入力し、出力される銘柄
(4)世界シェアトップの製品を有している
(5)売上高営業利益(前期)10%超・・・その会社の製品が一定以上の高い価格競争力を有していることを示しています
(6)今期会社予想営業損益が黒字
(7)信用取引規制が実施されていない
図表1の銘柄は、(1)~(7)のすべての条件を満たしており、時価総額の大きい順に並べられています。
TSMC(台湾積体電路製造)の熊本工場に関する投資額が1兆円に迫っていることでも明らかなように、最先端の半導体工場の新設には1兆円規模の投資額が必要になっています。したがって、それに対応する製造装置や部材の企業も、設備投資の規模が膨らみやすくなっています。上記のJSRのように、トップシェアを有する企業でも「単独での生き残りは難しい」と判断するようになってきた訳です。今後、半導体市場で再編機運が盛り上がる可能性は大きいとみられます。
一部掲載銘柄を解説
ローツェ(6323)~ウエハ搬送装置分野で世界シェアNo.1。高水準の利益率を誇る
■ウエハ搬送装置分野で世界シェアNo.1。世界トップメーカーが顧客
半導体産業の最先端を支えるウエハ搬送ロボットシステムメーカーです。高度なクリーンさとデリケート且つ高精度な扱いが求められる半導体製造過程において、不可欠な存在です。
半導体関連装置事業が全売上の86%(23.2期)を占めています。ウエハ搬送装置(=半導体の基盤であるシリコンウエハを製造工程で搬送する装置)の分野では、世界シェアNo.1です。売上高営業利益率(23.2期)も24%と高水準といえそうです。
ナノレベルのごみを「発生させない、持ち込ませない、付着させない」技術が強みです。
海外売上高比率は90%と高水準で、1位中国30%、2位米国24%、3位台湾18%、次いで日本です(23.2期)。また、コスト削減のためベトナムにグループ最大工場を置いています。
主要な顧客として、世界最大の半導体製造装置メーカーのアプライド・マテリアルズ(18%)や、世界最大手の半導体メーカーのTSMC(10%)などが名を連ねます(23.2期)。
同社の九州工場は熊本県合志市にあります。TSMC日本工場がある熊本県菊陽町の隣町です。需要拡大を見越し、2022年に九州工場の生産能力を増強しました。
■メモリー市況の底入れに期待
前期(23.2期)は、メモリー向けが在庫調整となる一方、5GやEV化等を背景に製造装置の需要が拡大。同社が扱う関連装置の受注が好調が推移した上、ベトナムでの量産効果や円安が更なる追い風となった格好です。売上高945億円(前期比41%増)、営業利益264億円(同67%増)と過去最高となりました。
今期(24.2期)は、前期に続き、メモリ需要の減速等の影響から売上高880億円(前期比7%減)、営業利益216億円(同18%減)と減収減益の見通しです。
メモリー市況に関しては、6/28(水)、世界的大手マイクロン・テクノロジーのCEOが、今期3-5月期決算発表で売上が底入れしたとコメント。翌6/29(木)の東京市場では、半導体関連株が上昇し、同社も+2.6%と好反応でした。
対中輸出規制規制強化に関しては、直接的影響はないとの見通しを会社側は示しています(前期決算発表時点)。
なお、今期1Q(3-5月期)決算発表予定日は7/11(火)です。
▽週足チャート(5年)
※データは2023/6/30(週足)13:30時点。※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
*当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
*上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
▽通期業績推移(百万円)
※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
扶桑化学工業(4368) ~果実酸の他、半導体関連事業にも展開
■果実酸の他、半導体関連事業にも展開
1957年に設立され、1962年に食品添加物「リンゴ酸」、1986年に「クエン酸」の精製を開始しました。さらに1987年には、電子材料の「コロイダルシリカ」の試験生産へ事業を広げました。
売上構成比(23.3期)は、祖業ともいえる「リンゴ酸」や「クエン酸」など果実酸類を中心とする「ライフサイエンス事業」が55%、「電子材料事業」が45%となっています。
「ライフサイエンス事業」では、クエン酸の世界シェアが推定で50%で、世界で唯一の総合果実酸メーカーとなっています。当初は飲料・食料品の酸味料としての用途でしたが、次第に化粧品、農業、工業分野へと用途が拡大しています。
「電子材料事業」では、半導体ウェハの研磨工程で使用される超高純度コロイダルシリカ等を製造販売しています。超高純度市場では推定市場シェア9割以上と独占状態です。
時価総額は1,500億円台で中規模の化学メーカーですが、高い世界シェアを有する製品が事業の柱です。売上高営業利率(23.3期)は「ライフサイエンス事業」で20%、「電子材料事業」で44%、全社で28%と高水準となっています。
地域別売上高(23.3期)は日本50%弱、アジア31%、北米17%となっており、近年は海外売上高が増える傾向です。
■SBI証券企業調査部も「買い」でレポート
23.3期は売上高684億円(前期比22%増)、営業利益189億円(同25%増)と、売上高・営業利益ともに過去最高を更新しました。
24.3期も果実酸の海外展開が計画されており、売上高は693億円(前期比1%増)と増収が見込めそうです。ただし、半導体市場の減速が警戒され営業利益は138億円(同27%減)と減益が想定されます。
ただ、半導体メーカーの積極的な設備投資を背景に、CMPスラリー(半導体研磨)市場は、2022~2030年に年率8%ペースで成長しそう(会社資料)です。
同社についてはSBI証券企業調査部も調査対象としています。「CMP材料の世界オンリーワン企業」と認識しており、予想営業利益については、24.3期135億円、25.3期164億円、26.3期174億円としています。
研磨工程において、高純度コロイダルシリカの供給は、同社の他はほとんどできないとみられ、対応する同社の設備投資も高水準となり、当面減価償却費の負担が重くなりそうです。それでも、当社アナリスト予想によると、25.3期以降は成長軌道を辿れそうです。企業調査部は6/21(水)で目標株価を7,700円→8,000円と引き上げ、投資判断「買い」を継続しています。
▽週足チャート(5年)
※データは2023/6/30(週足)13:30時点。※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
*当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
*上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
▽通期業績推移(百万円)
※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
▽当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証プライム市場を中心に好業績が期待される銘柄・株主優待特集など、気になる話題についてわかりやすくお伝えします。