この記事は2023年6月16日にSBI証券で公開された「活況相場の主役!?「生成AI」関連のプライム銘柄は?」を一部編集し、転載したものです。

活況相場の主役!?「生成AI」関連のプライム銘柄は?
(画像=SBI証券)

目次

  1. 活況相場の主役!?「生成AI」関連のプライム銘柄は?
  2. 掲載銘柄を解説
    1. ユーザーローカル(3984)~チャットボットサービスが人気。2005年の創業来、増収増益。高水準な利益率
    2. Appier Group(4180)~高度な予測AI技術を活用
    3. マクニカホールディングス(3132)~独立系エレクトロニクス商社。生成AIへの取り組みを本格化
    4. テラスカイ(3915)~「クラウド」で豊富な納入実績。ChatGPTを活用した「FAQ自動生成機能」を提供開始

活況相場の主役!?「生成AI」関連のプライム銘柄は?

東京株式市場では、日経平均株価が歴史的な高値圏にあります。6/15(木)には一時、33,767円という1990/3/12(月)以来の高値水準(取引時間中ベース)を回復しました。ウォーレン・バフェット氏による商社株への買いや、東証によるPBR1倍割れ企業へのPBR改善要請等があり、割安感の強い日本株が見直されています。さらに、日米欧と中国・ロシアとの間でサプライチェーンの分断化が進む中、円安や安い人件費等を武器に、生産拠点としての日本が見直されていることも、追い風になっているとみられます。

物色的にはAI(人工知能)や半導体に関連した銘柄が人気となりました。AI領域で使われるGPU(高速な画像処理を行う半導体)を提供する米エヌビディアが5/24(水)に市場予想を上回る好決算を発表。その後は、AIに関連した銘柄はもちろん、その発展で半導体需要が底上げされるとの期待から半導体関連も買い直されました。

エヌビディアの決算発表日である5/24(水)から、6/15(木)までのTOPIX構成銘柄(時価総額1千億円超)値上がり率上位をみると、第1位ソシオネクスト(6526 カスタム半導体)、第2位アドバンテスト(6857 半導体検査装置)、第3位Appier Group(4180 AIを活用)、第4位マクニカホールディングス(3132 エレクトロニクス商社)、第5位大阪ソーダ(4046 次世代電池材料)でした。半導体やAIに関連する銘柄が上位を占めています。

「日本株投資戦略」では、半導体関連銘柄については何回か触れています。今回は、東証プライム市場に上場しているAI関連銘柄、とくに最近話題の「生成AI」に関連した銘柄をご紹介します。銘柄抽出の条件は以下の通りです。

(1)東証プライム市場に上場
(2)次のいずれかの条件を満たしていること
  ・SBI証券WEBサイトのテーマ株投資ツール「テーマキラー!」で「生成AI」に掲載されている。
  ・各種報道をもとに「生成AI」に関連した事業展開を行っている。
(3)前期実績・今期会社予想の営業損益が黒字

図表1の銘柄は上記の条件をすべて満たしています。5/24(水)~6/15(木)の値上がり率の大きかった順で掲載しています。前述にてご紹介したAppier Group(4180)、マクニカホールディングス(3132)も含まれています。なお、今回は東証プライム市場銘柄に限定していますが、東証スタンダ―ド市場および同グロース市場にも多くの関連銘柄が上場していますので、6/21(水)付の「新興株ウィークリー」でご紹介する予定です。

普及著しいAI(Artificial Intelligence)ですが、決まった定義はなく、人間の持っている知能をコンピュータ上に作り上げようとしているものと考えられます。生成AIはさらに、膨大なデータから学習し、テキストや画像、音声を生み出すことができます。

生成AIは、AIを専門とする米国の非営利研究機関である「Open AI」(2015年設立)により開発されてきました。同組織は、昨年11/30(水)に、どんな質問にも人間らしい自然な口調で答えてくれる「Chat GPT」を公開。本年1/23(月)には米マイクロソフトが、「Open AI」に100億ドル出資することを表明し、一気に話題に火が付いて来ました。

「Chat GPT」は公開後2ヵ月で利用者数が1億人に到達しました。この数字を獲得するために要した期間は、動画共通アプリ「TikTok」が9ヵ月、写真共有アプリ「インスタグラム」が28ヵ月であり、いかに「Chat GPT」が急激に普及しているかがお分かりいただけるでしょう。世界のGDPが7兆ドル押し上げられる効果が期待できる反面、雇用の18%がAIに置き換えられるという試算もあります。生成AIが株式市場にもたらすうねりは、今後ますます大きくなっていくと考えられます。

活況相場の主役!?「生成AI」関連のプライム銘柄は? 活況相場の主役!?「生成AI」関連のプライム銘柄は? 活況相場の主役!?「生成AI」関連のプライム銘柄は?
(画像=SBI証券)

掲載銘柄を解説

以下、掲載銘柄の一部について、事業内容や生成AIへの取組等をご紹介します。

ユーザーローカル(3984)~チャットボットサービスが人気。2005年の創業来、増収増益。高水準な利益率

ビッグデータ分析ツールを提供する企業です。SNS解析やAIテキストマイニング、AI人材育成のプログラミング研修などを顧客企業に提供。同社の高度なチャットボットサービスが特に人気を博しています。導入企業数は3000超に上り、企業のみならず、官公庁や自治体などでも導入されています。社内のテック人材も豊富で、全エンジニアの中のAIエンジニアの割合は70%と高水準です。業績は、2005年に創業されて以降、一貫して増収増益が続いてます。IT業界では低めの傾向がある営業利益率も高水準で、前期(22.6期)は38%、今期予想(23.6期)は36%での着地を会社側は予想しています。

今年1/19(木)に、サポートチャットボットでOpenAIの人工知能による回答自動生成機能の提供を開始。その後、3月に関連トピックを高速に選出する「ユーザーローカル関連語AI」、5月に企業向け生成AIプラットフォーム「ユーザーローカルChatAI (powered by GPT-4)」等、続々と提供開始を発表しています。

Appier Group(4180)~高度な予測AI技術を活用

高度な予測AI技術を活用するSaaS*企業です。顧客企業のマーケティング投資に貢献することを目的としています。同社サービスを利用することで、ECサイトで顧客が興味がありそうな商品を予測したり、行動や特性を分析したり、購買意欲が進むようなクーポンを顧客ごとに提示したりすること等が可能になります。台湾発であり、代表者は20年以上のAI研究経験を持ちます。また、代表者と同じく、高度な知識や技術を有する者が多数在籍していることも特徴です。AI関連銘柄の本命的存在でもあり、4/28(金)にも生成AIの機能を既存の同社製品に統合したことを発表しています。ChatGPT言語モデルと当社の高度な生成AIアルゴリズムの機能が組み合わさり、高精度な会話型チャットボットの作成、広告コピーの制作などが可能となった模様です。

世界17都市に拠点があるグローバル企業で、地域別の売上高構成比は、日本を含む収益基盤である北東アジア地域が60%、成長後ドライバーであるグレーターチャイナ(台湾、香港、中国)が20%、米国およびEMEAが12%、東南アジアが5%となっています(22.12期)。売上高の成長は順調に続いていたものの、利益は赤字が長い間続いていました。前期(22.12期)にようやく営業損益が0.5億円に黒字転換を達成。引き続き、今期(23.12期)も先行投資を行う計画ながらも、粗利率の改善等により営業利益は5.3億円(前期比970%増)と本格的な黒字化の兆しが見えてきた段階です。AI市場の盛り上がりと共に、業容及び業績の拡大が期待できる企業でしょう。

※SaaS(Software as a Service)→ クラウド上にあり、インターネットを経由して、必要な機能を必要な分だけ利用できるソフトウェア。

マクニカホールディングス(3132)~独立系エレクトロニクス商社。生成AIへの取り組みを本格化

独立系エレクトロニクス商社です。営業利益を概観すると、16.3期・17.3期に100億円前後、18.3期・19.3期、20.3期に150億円前後で推移した後、近年は21.3期187億円、22.3期367億円と増加が加速。23.3期は売上高1兆293億円(前期比35%増)、営業利益616億円(同67%増)と大幅増収・増益が続きました。「集積回路及び電子デバイスその他事業」の売上高9,290億円に対し46%を占める産業機器向けが前期比50%増、同18%を占める車載向けが同66%増と急増しました。製造業のDX化や各国政府による半導体支援、EV化等が追い風となったもようです。ただ、メモリー需要の減少は逆風でした。

24.3期営業利益は620億円(会社計画)、25.3期は670億円(会社中期計画)の予想です。主力の産業機器・車載市場では、半導体市場自体の裾野の拡大が追い風です。生成AIについては、エヌビディアのGPUを取り扱う代理店として恩恵が期待できますが、ネットワーク事業やサービス・ソリューションモデルへの取り込みを含め、中長期的視野で取り組みを開始します。

テラスカイ(3915)~「クラウド」で豊富な納入実績。ChatGPTを活用した「FAQ自動生成機能」を提供開始

クラウドシステムの構築、導入支援及び保守を行うシステムインテグレーターです。クラウドサービスの導入実績は16,000件超に上り、業種業態問わず幅広い開発実績を有します。世界シェアNo.1の顧客管理プラットフォームを展開するセールスフォース(CRM)のコンサルティングパートナーでもあります。AI領域含め、積極的に先行投資を行う企業で、22.2期、23.2期に、売上高こそ二桁台成長を続けたものの、営業利益の減少が続いたことが嫌気され株価の低迷が続いていました。2022年に打ち出した中計(3か年計画)で、会社側は今期・来期では一転し、過去最高の営業利益の更新が続くとしています。

4/14(金)の23.2期本決算発表で、中計で掲げていた今期(24.2期)と来期(25.2期)の営業利益見通しを上方修正しました。さらに5/26(金)、同社グループ会社で会話型AIプラットフォーム「ENOKI」を手掛ける株式会社エノキより、ChatGPTを活用した「FAQ自動生成機能」を2023年6月から提供を開始すると発表。ChatGPTを取り入れることで、大幅な作業時間の削減や回答精度の向上が実現可能と会社側は述べています。業績改善見通しにより株高に転じた後、エヌビディアの上昇に端を発した生成AIブームも相なって、株価は現在年初高水準です。

▽当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証プライム市場を中心に好業績が期待される銘柄・株主優待特集など、気になる話題についてわかりやすくお伝えします。

鈴木 英之
鈴木 英之
SBI証券 投資情報部長
・出身:東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味:ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技:どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物:サイゼリヤのごはん
・好きな場所:秋葉原(末広町)
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的な寄稿も多数