この記事は2023年5月19日にSBI証券で公開された「日経平均バブル後高値!東エレク、レーザーテックetc半導体株は?」を一部編集し、転載したものです。

日経平均バブル後高値!東エレク、レーザーテックetc半導体株は?
(画像=SBI証券)

目次

  1. 日経平均バブル後高値!東エレク、レーザーテックetc半導体株は?
  2. 掲載銘柄を解説
    1. 東京エレクトロン(8035)~24.3期業績予想上方修正と株式分割を発表
    2. 信越化学工業(4063)~シリコンウェハで世界首位。市場は今期営業13%減益を予想
    3. デンソー(6902)~24.3期は相当に保守的な業績予想
    4. ルネサスエレクトロニクス(6723)~車載向けに強く、1Qは好調なスタート
    5. レーザーテック(6920)~短期的には受注の伸び悩みに注意も、過度の懸念は不要か?
    6. 富士電機(6504)~パワー半導体事業の拡大を目指す
    7. UTグループ(2146)~国内の半導体工場建設工場ラッシュで人材への需要も高まる?

日経平均バブル後高値!東エレク、レーザーテックetc半導体株は?

東京株式市場では、決算発表シーズンが一巡しました。企業業績の方向感を示唆している日経平均株価の予想EPS(1株利益)は、4/20(木)の2,088円から、5/17(水)には2,151円まで上昇し、企業業績への懸念が後退しました。日経平均株価は5/17(水)に2021年9月28日以来の3万円台を回復し、5/19(金)には、2021年9月14日のバブル後高値(取引時間中高値30,795円)を上回りました。

企業業績の回復をけん引しそうなのがインバウンド関連企業です。3月の水際対策緩和を契機に、訪日外国人が急速に回復しており、陸運や空運各社の前期業績は回復に転じ、今期もおおむね回復継続が見込まれています。ただ、インバウンド関連企業の株価は、業績回復の度合い以上に回復しているケースが多く、過熱感が強まっている銘柄も増えています。

そうした中、東京株式市場では、半導体関連銘柄への期待が高まっています。米国市場に上場している主要半導体関連銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体指数(SOX指数・図表1)は2022年9月をボトムに回復傾向です。同指数にツレ高する形で日本の半導体関連銘柄も買われ始め、日経平均株価のバブル後高値回復が意識された5/18(木)には東京エレク(8035)、アドバンテスト(6857)、デンソー(6902)などが軒並み、年初来高値を更新しました。

ただ、メモリーを中心に、半導体出荷の減少は続いており、半導体市況が回復に向かっている訳ではありません。そうした環境下で、半導体関連株を全般株価のけん引役として期待してよいのでしょうか。そこで、今回の「日本株投資戦略」では、半導体関連株の現状と見通しについて、再考してみたいと思います。23.1-3期の決算発表が終わったタイミングでもあり、半導体株の業績と株価の現状を考える機会にしたいと思います。

図表2は、我が国の主要半導体関連20銘柄をご紹介したものです。SBI証券の銘柄検索ウィンドウに「半導体」と入力し、出力された199銘柄の中から時価総額の大きい順に20銘柄並べました。

また、上記銘柄を以下の条件でさらに絞り込みました。

(1)時価総額500億円超(5/17)
(2)今期予想EPSの市場コンセンサスが過去4週間で下落していない
(3)今年度の市場予想営業増益率が10%超
(4)来年度の市場予想営業増益率が10%超

図表3は(1)~(4)の条件をすべて満たしています。掲載の順番は、今期および来季の累計予想営業増益率が高い順となっています。なお、図表2も含め、非上場化に向けた動きを考慮し、東芝(6502)は除外しました。

■図表1 フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)の推移(月足)

フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)の推移(月足).gif
Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。2014年12月以降の月終値をグラフ化。ただし、2023年5月は5/18(木)終値。(画像=SBI証券)
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(画像=SBI証券)

掲載銘柄を解説

以下、掲載銘柄の一部をご紹介します。

東京エレクトロン(8035)~24.3期業績予想上方修正と株式分割を発表

米アプライド・マテリアルズ等と比較される半導体製造装置の世界的な大手企業です。フォトレジスト(感光剤)の塗布や現像を行うコータ・デベロッパは世界シェア89%(2022年・会社資料)と圧倒的トップを誇ります。日経平均株価でのウェイトが高いのも特徴です。

23.3期の営業利益は、6,177億円(前期比3%増)と過去最高を更新しました。しかし、2023年の半導体市場について、同社は前年比10%減を予想し、24.3期の会社予想営業利益は3,930億円(同36%減)です。上期が底になり下期以降の回復に期待しているもようです。同社によれば、2024年以降は、(1)マクロ経済の回復、(2)データ社会移行に伴うデータセンター投資の拡大、(3)スマホ需要の回復、(4)EV/自動運転の浸透による自動車の半導体搭載量増加の継続、(5)新たな技術世代への投資、等が予想され、同社が関わる半導体前工程製造装置市場は新たな成長ステージに移行しそうです。市場も24.3期は25%の営業増益を予想しています。

3/29(水)を権利付最終日とし、1株を3株に分割。連結配当性向は50%を目途としています。5/11(木)、6月から12月末まで、株数で1,000万株(自己株式を除く発行済株式の2.1%)、取得価額で1,200億円を上限とする自己株式の取得予定を発表しました。

信越化学工業(4063)~シリコンウェハで世界首位。市場は今期営業13%減益を予想

半導体の基盤となるシリコンウェハの世界シェア首位の企業です。さらに塩ビ樹脂(電線、建材、日用品等幅広い製品の材料)でも世界シェアトップです。顧客である半導体メーカーとは長期供給契約を締結していることが多く、業績は安定しやすいのが強みです。

半導体シリコンウェハは、7~9月期から10~12月期にかけて150mm、300mmを中心にマイナス成長で、さらに2023年1~3月期も予想通り約1割調整(会社側)しました。4~6月は上向く見込みですが、半導体メーカーの調整は予想より長引く傾向で、7~9月は再び在庫調整局面となる可能性がありそうです。会社側は当面、業績予想の公表を見送っています。市場では今期13%減、来期7%増の営業利益を見込んでいます。

同社は、SBI証券企業調査部が調査対象としています。5/10(水)付レポート「米国リセッション、コロナ後も株価堅調。25年度OP(営業利益)1兆円」では、投資判断「買い」継続、目標株価4,660円→5,100円としています。

デンソー(6902)~24.3期は相当に保守的な業績予想

トヨタ自動車が24%、豊田自動織機が8.8%の株式を保有(2022/9末・自己株式を除く発行み株式に対する比率)するトヨタ系の自動車部品国内最大手で、売上高の約半分がトヨタグループ向けです。世界で自動車のEV化や電動化への流れが加速し、当社の電動化システムや、ADAS(先進運転支援システム)への注目度も高まりつつあります。EVやHVなどの燃費性能を左右する「パワー半導体」などが得意分野です。世界最大の半導体受託製造大手企業である台湾TSMC社が熊本に建設する合弁工場に対し、ソニーと当社が資本参加(持分比率10%超)しています。

23.3期は車両生産の回復や拡販、円安、合理化強化等により増収・増益を確保しました。1Qを底に年度後半に向けて回復しました。24.3期の会社計画では営業利益5,100億円(同19%増)を見込みます。ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)に使うインバーターや、運転支援に使うセンサーやカメラの販売が伸びてきています。外部環境の不透明感を踏まえ10%程度の車両減産を見込む上、前提為替レートを1ドル125円としており、計画は相当に保守的とみられます。

ルネサスエレクトロニクス(6723)~車載向けに強く、1Qは好調なスタート

マイコンの世界的大手企業。日本電気(6701)、日立製作所(6501)、三菱電機(6503)の半導体部門が統合され、設立された経緯があります。自動車分野、産業分野、インフラ分野、IoT分野の半導体を提供しています。売上高(2022/12期)の43%が自動車向けで、56%が産業・インフラ・IoT向け、残りがその他になっています。

車載用マイコンは、自動車の「走る」「曲がる」「止まる」といった基本的動作をつかさどる重要な半導体で、EV(電気自動車)や、自動車の電動化には不可欠な存在と考えられています。エンジンや車体などの制御向け、カーナビゲーションなどの車載情報機器向けに、SoC(system-on-a-chip)、アナログ半導体、パワー半導体等を中心に提供しています。近年は積極的にM&Aを展開し、アナログ半導体や組み込みAI等の技術を取り入れています。

23.12期1Qは売上高3,593億円(前年同期比3%増)、営業利益1,232億円(同23%増)と増収増益でした。自動車分野が増収・増益(粗利ベース)と好調でした。2Qについては、営業利益率(Non-GAAP)が低下すると会社側では想定。通期予想営業利益について市場では、24.3期6%減、25.3期は9%増を予想しています。

※調整済み営業利益~会社側が「Non-GAAP」と表現している数字で、IFASに基づく業績数値から、非経常的な項目棟を控除・調整したものです。

レーザーテック(6920)~短期的には受注の伸び悩みに注意も、過度の懸念は不要か?

半導体製造工程において、回路をシリコンウェハに焼き付けるときの原板がフォトマスクといいます。フォトマスクに加工される前の、ガラス基板に遮光膜を形成したものをマスクブランクスといいます。同社はフォトマスク、マスクブランクスの検査装置を手掛ける会社で、おもな納入先は、インテル、台湾のTSMC、韓国サムスン電子など世界の大手半導体メーカーです。

半導体のコスト競争力を左右するのが、回路の線幅を極力狭くする微細加工であると考えられますが、現在、最先端の微細加工を可能にするEUV(極端紫外線)を使った露光装置(ステッパー)の分野では、オランダのASML社が独占的な存在です。同社はEUV露光装置に対応した検査装置を独占的に供給している模様です。

4/28(金)発表の23.6期3Q決算(累計)は豊富な受注残を背景に、売上高794億円(前年同期比48%増)、営業利益274億円(同66%増)、受注高1,281億円(同50%減)、受注残高4,178億円(同22%増)となりました。半導体市況の低迷を背景に、受注高の減少が厳しくなっています。しかし受注の規模は引き続き同社の生産能力を上回っており、3月末時点で約3年分積み上がっています。オランダのASMLも同様の傾向で、当面は受注残の消化により、収益の上積みが期待できそうです。 23.6期の会社予想営業利益は420億円(前期比29%増)です。営業利益の市場予想は23.6期431億円(同32%増)、24.6期901億円(同108%増)となっています。

富士電機(6504)~パワー半導体事業の拡大を目指す

産業用・自動車用のパワー半導体に強みを有する総合電機メーカーです。1953年に半導体部門に進出。 売上高に対しての半導体が占める割合は20%であり、他にはパワエレエネルギーや食品流通等といった幅広い分野で、事業を展開しています(22.3期)。また、利益においては半導体分野の占める割合が35%と最大です(同)。2023年度を最終年度とする中期計画では、パワー半導体事業の拡大を成長戦略の中核として掲げています。特に、EV向けSiC*は2024年度からの量産に向け、現在津軽工場で準備中であり、2024年度以降の受注の大幅拡大を見込んでいます。収益が下期に偏重傾向である点にはご留意ください。

*SiCパワー半導体…SiC(シリコン・カーバイド)素材を使った、次世代のパワー半導体。現在はSi素材を使ったパワー半導体が主流ですが、SiCパワー半導体を使うことで、搭載機器の省エネと小型・軽量化を実現します(同社HPより)。高い成長性が見込める分野であるため、ローム(6963)も世界シェア獲得のため大型投資を実行中です。

22.3期は半導体を含む全セグメントで増収増益を達成。売上高1兆94億円(前期比10%増)、営業利益888億円(同18%増)となり、特に半導体分野は営業利益が322億円と、稼ぎ頭になりました。パワー半導体の需要拡大等が好調の背景にあったとしています。業績増に伴い、配当予想の上方修正を行いました(100円?115円)。今期(24.3期)業績見通しは売上高が1兆500億円(前期比4%増)、営業利益940億円(同5%増)と増収増益ですが、半導体部門の営業利益見通しは横ばいです(23.3期:322億円 ▹ 24.3期 :328億円)。

今後の業績の目安となる今期の受注見通しに関しては、半導体分野で約10%増と会社側は示しています。特に電動車(EV)向けは、3割増となる好調な見通しです。さらに、為替に関しては、今期計画の想定為替レートは1ドル125円と保守的な印象です。営業利益における為替感応度は1円変動で0.6億円としており、今期のドル円相場の推移は円安傾向にあることを勘案するとプラス材料として期待されます。

UTグループ(2146)~国内の半導体工場建設工場ラッシュで人材への需要も高まる?

おもに製造業向けに、人材無期雇用派遣、業務請負サービスを提供しています。大手製造業向けの「マニュファクチャアリング事業」が売上高の48%(前期)、地域密着の「エリア事業」が同30%、構造改革を支援し人材を派遣する「ソリューション事業」が同11%、建設・ITエンジジア等の派遣を行う「エンジニアリング事業」が同5%、ベトナムで人材サービスを提供する「海外事業」が同6%他となっています。なお、主力「マニュファクチャリング事業」の業種別構成比(全社売上高に対する比率)では、エレクトロニクス18%、輸送機器16%、産業・業務用機械・機器14%他になっています。

5/15(月)に本決算を発表し23.3期の売上高は1,706億円(前期比8%増)と過去最高を更新。主力の「マニュファクチャリング事業」では半導体市場軟化の影響があったものの、需要の強い顧客に集中し、「リーマンショック」以降続いてきた増収継続を維持しました。営業利益も89億円(同42%増)と伸びました。半導体製造装置エンジニアなどへのキャリアチェンジ等もあり、請求単価が上昇しました。24.3期は会社予想売上高2,000億円(前期比17%増)、営業利益144億円(同61%増)が見込まれます。半導体関連では、中長期的な増加を見込みつつ、上期は軟調を予想。自動車は回復を予想しています。

なお会社側は決算発表とともに自己株式の取得枠設定を発表。本年5/16(火)~10/31(火)の期間に、取得株式数(上限)130万株(自己株式を除く発行済み株式数の3.22%)、取得総額(上限)28.17億円の計画で実施予定です。

中長期的には、高齢者人口比率が増加し「2030年問題」が意識されます。人口の3分の1が高齢者となって生産年齢人口が減少し、644万人の人手不足が予想(会社資料)されています。また、同社が得意のエレクトロニクス業界では、世界の主要半導体メーカーによる工場建設が増える見込みですが、今後はそれに対応した人材の需要も高まるとみられます。同社の事業環境は明るさが増す可能性が大きそうです。

▽当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証プライム市場を中心に好業績が期待される銘柄・株主優待特集など、気になる話題についてわかりやすくお伝えします。

鈴木 英之
鈴木 英之
SBI証券 投資情報部長
・出身:東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味:ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技:どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物:サイゼリヤのごはん
・好きな場所:秋葉原(末広町)
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的な寄稿も多数