この記事は2023年5月26日にSBI証券で公開された「日本株のリード役!?アナリストが高成長を期待のプライム銘柄」を一部編集し、転載したものです。
目次
日本株のリード役!?アナリストが高成長を期待のプライム銘柄
5月相場は「日本株の復活」を印象付ける月になりました。日経平均株価は5/22(月)に1990/7以来、33年ぶりに31,000円台を回復しました。主役は海外投資家で、現物株を3月最終週以降5月第3週まで、8週連続の買い越し(計3.6兆円)としました。
NISA(少額投資非課税制度)の拡充、東証によるPBR1倍割れ企業への対策要請、ウォーレン・バフェット氏の日本株買い増し示唆等の動きが、日本株を再評価する契機になったものとみられます。「欧米日対ロシア・中国」という世界経済のブロック化が進む中、世界的にサプライチェーンの再構築が進み、生産拠点としての日本が見直されつつあります。そうした中、世界の半導体大手は相次ぎ日本での工場建設を決めており、直接投資の増加という「日本買い」ももたらしています。
ちなみに、日経平均株価の上昇に寄与したもうひとつの動きが、企業業績であるとみられます。当初、上場企業の24.3期見通しは減益になるとの見方もありましたが、5/20(土)の日本経済新聞社の報道では、同期の「金融を含む全産業」は前期比3%の最終増益見通しとなっています。日本企業の業績は想定以上に底堅いとの評価につながりそうです。
そこで、今回の「日本株投資戦略」では、業績面で日本株をリードするグループの一角を占めそうな銘柄を抽出すべく、以下のスクリーニングを行なってみました。
(1)東証プライム市場に上場
(2)時価総額500億円超(5/25時点)
(3)今期市場予想EPS(Bloombergコンセンサス)が過去4週間で上昇
(4)業績予想を提供しているアナリストが3名以上
(5)決算月が次のいずれかの銘柄・・・・3月、6月、9月、12月
(6)23.1-3期の純利益が前年同期比40%超の増益
(7)今期・来期ともに市場予想純利益が前期比10%超の増益予想で、2期累計20%超の増益予想
(8)今期市場予想PERが25倍未満
(9)今期市場予想ROEが10%超
図表1の銘柄は、上記(1)~(9)をすべて満たしています。「市場予想」はBloombergベースの市場コンセンサスです。掲載の順番は(7)における2期連続の予想増益率が高い順番となっています。
スクリーニングの目的は、アナリストの予想増益率(2期累計)が高い銘柄ですが、(6)を満たし足元の業績が好調という実績も伴っているため、その分、アナリストの期待に応えられる相対的可能性も大きいと考えられます。さらに(8)と(9)も満たしていることから、収益性を加味した上での割安感も強めであるとみられます。
掲載銘柄を解説
以下、掲載銘柄の一部をご紹介します。
UTグループ(2146)~国内の半導体工場建設ラッシュで人材への需要も高まる?
おもに製造業向けに、人材無期雇用派遣、業務請負サービスを提供。大手製造業向けの「マニュファクチャリング事業」が売上高の48%(前期)、地域密着の「エリア事業」が同30%、構造改革を支援し人材を派遣する「ソリューション事業」が同11%、建設・ITエンジニア等の派遣を行う「エンジニアリング事業」が同5%、ベトナムで人材サービスを提供する「海外事業」が同6%他となっています。なお、主力「マニュファクチャリング事業」の業種別構成比(全社売上高に対する比率)では、エレクトロニクス18%、輸送機器16%、産業・業務用機械・機器14%他になっています。
24.3期は会社予想売上高2,000億円(前期比17%増)、純利益90億円(同134%増)が見込まれます。半導体関連では、中長期的な増加を見込みつつ、上期は軟調を予想。自動車は回復を予想しています。純利益の市場コンセンサスは24.3期92億円、25.3期130億円。なお会社側は決算発表とともに自己株式の取得枠設定を発表。本年5/16(火)~10/31(火)の期間に、取得株式数(上限)130万株(自己株式を除く発行済み株式数の3.22%)、取得総額(上限)28.17億円の計画で実施予定です。
中長期的には、高齢者人口比率が増加し「2030年問題」が意識されます。人口の3分の1が高齢者となって生産年齢人口が減少し、644万人の人手不足が予想(会社資料)されています。また、同社が得意のエレクトロニクス業界では、世界の主要半導体メーカーによる工場建設が増える見込みですが、今後はそれに対応した人材の需要も高まるとみられます。同社の事業環境は明るさが増す可能性が大きそうです。
シグマクシス・ホールディングス(6088)~企業のDX化の波が追い風
2008年5月、三菱商事のITサービス、コンサルティング事業を強化する目的で、三菱商事とRHJ Internationalが合弁により設立。2013年9月には、IIJ(3774)やインテックが資本参加。その後、2018年に三菱商事は同社株全部を売却しています。
コンサルティング事業が売上高のほとんど占めています。顧客企業において、マネジメト・トランスフォーメーション(事業に関わる人の自律性・心理的安全性、企業への愛着心を高め、継続的にイノベーションが起こり、迅速的な顧客対応を可能とするようにする)、デジタル・トランスフォーメーション(コアビジネスの変革、生産性革命)、サービス・トランスフォーメーション(新たな成長エンジンの構築)という「3つの変革」を促進します。単にコンサルティングの提供にとどまることなく、企業間連携の構築や、ジョイント・ベンチャーのシナリオを描き、時には同社グループが投資に参加し、価値創造に向け当事者として参加することもあります。
23.3期は売上高173億円(前期比10%増)、純利益22億円(同32%増)で着地。売上上位10クライアントの構成比が前期74%から今期82%に拡大し、プロジェクト数も11%増えました。純利益の市場コンセンスは24.3期26億円、25.3期36億円の見通し。
アシックス(7936)~スポーツ用品の世界的大手。23.12期1Qは好ダッシュ
スポーツ用品の世界的大手で、ランニングシューズを中心に、各種スポーツ用品を展開。欧州や北米などの売上高は日本を上回り、海外売上高比率は82%です(22.12期)。前期(22.12期)は、過去最高の売上高・営業利益となり、中計の目標数値を前倒しで達成した形です。
今期(23.12期)もコアパフォーマンススポーツおよびスポーツスタイルでの成長を織り込み、会社側は売上高5,100億円(前期比5%増)、営業利益370億円(同8%増)、純利益200億円(同0.6%増)を計画。配当性向は50%を目安に掲げています。業績拡大に伴い、1株当たりの配当金について、21.12期の年間24.0円から、前期(22.12期) は同40.0円と大幅増配。23.12期も同44.0円へと増配が実施される予定です。
5/10(水)に発表された23.12期1Q決算では、売上高が1,522億円(前年同期比44%増)と、1Qとしては過去最高(変則決算期を除く)を記録。経済再開が本格化した日本を含む世界で拡大したうえ、円安が追い風となりました。販売価格の適正化等もあり、利益率も改善し、1Qの営業利益は221億円(同119%増)とこちらも最高益。純利益は163億円(同86%同)に達しました。純利益は1年の約25%を終わった段階で、通期会社予想に対する進捗率は81%に達しました。純利益の市場予想は23.12期247億円、24.12期294億円です。
物語コーポレーション(3097)~ 『焼肉きんぐ』、『丸源ラーメン』などを展開。コロナ禍でも売り上げは堅調
焼肉食べ放題チェーン『焼肉きんぐ』、肉そばが人気の『丸源ラーメン』等を運営する企業です。
ファミリー向けで、郊外のいわゆるロードサイド型レストランを中心に出店を加速しています。現在の総店舗数は国内で627店舗、海外21店舗です(23.6期3Q末時点)。成長ドライバーである『焼肉きんぐ』では、席にいるまま注文できるテーブルオーダー制や、他社に先駆けてのタッチパネル注文を導入し顧客負担を軽減させるなどの他、食べ放題だけれども、ちょっと贅沢を感じられるようなメニューがあることが人気の秘訣です。他にもPOSシステムや配膳ロボット導入や、CMを積極的に放映したりと地道な企業努力が成長の背景にあります。新たな成長材料として、新業態レストランの都市型店舗の出店や、アジアを中心に海外進出を加速させる方針を中計に掲げています。
周知のとおり、外食はコロナの打撃が大きかった産業です。同社も20.6期には全直営店を約1ヵ月休業したこともあり、同期の純利益は前期の6分の1以下まで落ち込みました。しかし、前述の企業努力に加え、密になりにくい『郊外』への展開や、換気システムが整った『焼肉』という業態であったため、客足の戻りは早かったです。21.6期の純利益はコロナ前(19.6期)を7%下回る程度まで急回復し、売上高はコロナ前を上回りました。
足元の業績は好調で、前期(22.6期)は過去売上高となる732億円(前期比14%増)、純利益32億円(同36%増)を達成。今期業績見通しは、積極的な新規出店により、売上高876億円(前期比19%増)、純利益38億円(同1%増)と過去最高を更新する予定です。純利益は、前期に「政府及び自治体からの営業時間の短縮要請に伴う協力金等の助成金収入」が31億円あった反動で、伸び率は小さいです。しかし、今期会社予想営業利益は、62億円とコロナ前(19.6期)の1.5倍以上、前期の2倍以上と急拡大する見通しです。今期3Q時点での進捗率は、売上高77%、純利益が92%です。予想純利益の市場コンセンサスは今期42億円(前期比15%増)、来期52億円(同22%増)です。
業績拡大に加え、15期連続となる増配実施を公表しています。また、2月末に1:3の株主分割を実施。3/29(水)から、光熱費や原材料価格の高騰の影響が大きく、値上げを実施しました。以降、株価は右肩上がりに推移し、5/26(金)時点で過去最高値水準です。
インターネットイニシアティブ(3774)~インターネットサービスプロバイダーの草分け。近年は収益拡大が継続する傾向
1992年に、顧客がインターネットに接続できるよう仲介するISP(インターネットサービスプロバイダー)の先駆けとして設立されました。その後、インターネットの発展とともに、システム構築やアウトソーシングサービス(セキュリティを含む)、WAN(離れた拠点のLANを相互に接続)サービス、システム運用保守等、インターネット関連サービスに事業を拡げてきました。
インターネット分野における幅広い技術力の蓄積が強みです。同分野における諸技術を組み合わせ、広帯域・広範囲のネットワークシステムを設計・構築し、安定的に運用し、大量のトラフィックを安定的に処理しています。セキュリティ等を施した高信頼のサービスを提供することが可能です。また、阪神大震災や東日本大震災でも途切れない接続サービスを提供しています。顧客はネットワークシステムの信頼性を重んじる法人及び官公庁が中心で、官公庁を含む法人顧客数は約13,000社(22.3期末)に達しています。
20.3期以降、増収・増益が継続。23.3期も売上高2,527億円(前期比11%増)、営業利益272億円(同15%増)、純利益188億円(同20%増)と増収・増益。総合力を発揮し、大型複合案件を提案し、受注を獲得しています。24.3期は売上高2,860億円(同13%増)、営業利益315億円(同15%増)、純利益207億円(同10%増)が会社計画です。純利益の市場コンセンサスは24.3期211億円、25.3期240億円となっています。売上高の82%(23.3期)が継続課金サービスであり、収益は安定的に拡大しやすいビジネスモデルです。さらに、案件の大型・複合化、サイバーセキュリティ対策の需要拡大、全業種でのDXトレンド等を背景に、ネットワーク運用を安定運用することの重要性が高まっており、同社の強みが生きる事業環境といえそうです。
▽当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証プライム市場を中心に好業績が期待される銘柄・株主優待特集など、気になる話題についてわかりやすくお伝えします。