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(画像=株式会社Laboro.AI)
椎橋 徹夫(しいはし てつお)
株式会社Laboro.AI代表取締役CEO
米国州立テキサス大学理学部卒業後、ボストンコンサルティンググループに入社。消費財や流通など多数のプロジェクトに参画した後、社内のデジタル部門の立ち上げに従事。その後、東大発ベンチャーでのAI事業部の立ち上げや東京大学 松尾豊研究室の産学連携業務などを経て2016年にLaboro.AIを創業、代表取締役CEOに就任。
株式会社Laboro.AI
「すべての産業の新たな姿をつくる。」「テクノロジーとビジネスを、つなぐ。」をミッションに、オーダーメイドによるAI開発『カスタムAI』を展開。SaaS系AIでは対応が難しいより高度なビジネス課題解決のためのAI実装に注力している。機械学習とビジネス双方のコンサルティング能力を持つオリジナル人材『ソリューションデザイナ』を擁し、多様な業界のビジネス変革に伴走し、顧客企業のAIイノベーションを共創する。

これまでの事業の変遷について教えてください。

株式会社Laboro.AIを設立する前のキャリアからお話させていただきます。

アメリカのテキサス大学で物理学と数学を学び、コンサルティング業界に就職をした後、東京大学松尾豊研究室にて産学連携の仕組みづくりや、東大発AIスタートアップの創業に参画、その経験をもとに7年前にLaboro.AIを立ち上げました。我々の事業は、AIの技術の向上のみに焦点をあてるのではなく、技術をビジネスとつなぎ、テクノロジーを社会に活かすことを重視しています。 我々の目指すところは、AIとビジネスの両方を深く理解し、それらをつなげ社会的価値を作り出すことです。

ちょうど最近(2023年7月)グロース市場に上場しました。

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一番感銘を受けた書籍とその理由は?

私が最も感銘を受けた書籍として、"物理数学の直観的方法"という学術書を挙げることができます。私の主観的な理解を多分に含む前提で、この本で書かれていたことを一言で表してみると、物理数学の本質は、数式の並びを追って答えを求めることではなく、そもそも何のためにその数式や理論、法則が存在しているのか、その存在意義を知ることに重要性がある、ということです。

私自身、与えられた問いに対して数式を使って答えを出すという受験数学的な勉強法には元々違和感を感じていました。それに対してこの本では、なぜそれが解いたということになるのかという、より根本的な部分が説明されています。シンプルに言えば、物理数学を含む科学技術を扱うにあたって、「どのように問題を解くか(How)」よりも、「なぜその問題を解くのか(Why)」を考えることがより重要なのだと、この本を通して再確認できたのです。

なぜその問題を解く必要があるのかを深く考えることと、最適な法則や数式、手段を生み出すことが連動すること、言い換えれば「応用と手段の一体化」は、実際の社会現象を解くにあたっても非常に重要なポイントになります。例えば、私たちLaboro.AIが扱うAIという技術もその一つです。AIの利活用においては「その開発されたAIで何ができるのか」よりも、「そのAIを開発することがなぜ重要なのか」を考え抜くことがより大切だと私は思っています。前者の考え方では、「技術ありきのDX」「ツールありきのDX」に陥ってしまうからです。本来的に重要なのは、そもそもなぜDXをする必要があるのかという問いと、なぜそこでAIが役に立つのかを関連付けながら、適切な技術を開発することにあるはずなのです。

読書はどのように仕事に生かせたでしょうか。

上述の2冊のような本から得た知識と洞察は、事業の方向性を決定する際や複雑な問題解決に直面した時に直接的に役立っていますが、そのような学術書だけでなく様々な領域の書籍を読むことが重要であると考えています。

様々な人が研究や仕事への情熱を誠実に追求する姿勢や独自の視点から刺激を受け、新たな啓発を得る機会を提供してくれます。これらの経験は私に、極めて多面的な視点を持つことの重要性と、それが集団や組織の動きを想像する上で最も有効であるかを教えてくれました。

経営において重要としている考え方を教えてください。

私が経営において重要と考えているのは、テクノロジーとビジネスの両方を深く理解し、それらをつなぐ視点を持つことです。多くの人々がテクノロジーの進化に目を奪われがちですが、その技術を深く理解した上で、それを社会にどう生かすか、それによって産業やビジネスがどう変わるかを描くことが大切だと考えています。まさに上述のような直観的に考える力とも言えます。

日本におけるイノベーションの創出を加速させるためには、こうしたテクノロジーとビジネス、そして業界全体を見る視点を持つプロフェッショナルが不可欠であり、これを育成しサポートする役割を持った機能が不足していると感じています。

また、我々は、個社ごとの具体的な問題を解決するだけではなく、産業全体にどのような影響が出るかを考え抜き、そしてその知見を活用して新たな価値を創出する必要があります。

最後に、御社の未来構想や従業員への期待について教えてください。

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株式会社Laboro.AI
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私から社員に対する期待としては、テクノロジーとビジネスの両方を理解し、それを活用してイノベーションを起こすことができる能力を持続的に成長させ、進化を遂げることです。また、それぞれが自身の得意分野を見つけ、それを活かして価値を創出することを求めています。私たちは技術の進展をただのトレンドとして捉えず、それを用いて新たな価値を創出し、社会に貢献することを目指しています。我々のプロジェクトは常に技術革新と社会のニーズを結びつけることに焦点を当てており、全ての従業員にその視点を持って取り組んでほしいと期待しています。

さらには、そのようなプロフェッショナル人材が業界全体に増えていくことで、社会は大きく変わっていくことができると思います。

氏名
椎橋 徹夫(しいはし てつお)
会社名
株式会社Laboro.AI
役職
代表取締役CEO