アーリーリタイアに必要な金額は?
米国の「4%ルール」に基づけばFIREを実現するための必要金額は、年間支出の25倍が目安となる。1年間分の生活費として資産運用額の4%を取り崩す場合の逆算値だ。例えば年間支出が400万円なら必要金額の目安は1億円、年間支出が300万円なら目安金額は7,500万円となる。とはいえ前述したように4%ルールを日本で適用するのは難しい。
日本は物価上昇率も異なれば社会保障も異なる。そこで日本版FIREが可能になる資金水準を計る方法を以下で紹介しよう。
- (手持ち資産+見込まれる運用益)>(リタイアまでの給与+リタイア後の社会保険料+老後資金の不足額)
リタイアした後に、加入する社会保険が変わる点は多くの人が見逃しがちだ。会社員である間は、給与から保険料が引かれているがリタイア後は自分で払わなければならない。リタイア後の資金設計で忘れてはならないポイントだ。また多くの場合、厚生年金から国民年金になることで保険料負担は軽くなる。
しかし65歳から受け取る年金額は下がり、万一の場合の遺族年金や障害年金の保障も下がるだろう。2019年に老後資金2,000万円問題が話題になったが、会社員時代に見込んでいた不足額よりもリタイア後の不足額は膨らむはずだ。ちなみにリタイア年齢が若いほどこの不足額は大きくなる。例えば以下のケースで試算してみよう。
- 22歳で入社(国民年金は20歳で加入)
- リタイアまでの平均標準報酬月額32万円(生涯平均年収384万円)
- 国民年金は満額で受け取れると仮定
この場合、40歳でリタイアすると将来の年金額は約116万円、50歳では約137万円、60歳では約158万円、65歳リタイアなら約168万円だ。リタイア後の寿命は、人それぞれに異なる。仮に90歳まで生きるとすれば65歳で受給開始後25年分の資金不足を見積もっておかなければならない。40歳でリタイアの場合、年間生活費が400万円なら不足額は7,100万円{(400万円-116万円)×25年}となる。
もちろん65歳以後も運用収益を得られるなら不足額は少なくなる。国民年金保険料は、2022年4月時点で1ヵ月あたり1万6,590円。保険料額は、毎年見直しされるが将来もずっと変わらないとすれば年間19万9,080円の支出となる。40歳でリタイアし60歳まで加入するとすれば20年間で398万1,600円必要だ。
これらを合計したものとリタイアまでの給与に比べて手持ち資産と将来見込める運用益の合計が上回る水準となれば理論的にはFIREが可能だ。