メタコマースに企業も続々参入
多くの企業がメタバースにビジネスの可能性を感じている。メタバースで展開される商取引=メタコマースも同様だ。国内では、すでに「そらのうえショッピングモール」というメタバースの商業施設が開設されているほか、期間限定的に「バーチャルマーケット」というメタコマースのイベントも行われている。
これらのメタコマースには、すでに多くの企業が参加しており、メタコマースの可能性を探っている。ここでは、いくつかをピックアップして紹介しよう。
・ローソン
2021年12月4日~19日まで開催されたVRイベント「バーチャルマーケット2021」には、ローソンが初めてバーチャル店舗をオープン。リアル店舗で販売している商品のバーチャル展示やその場で撮影した画像を使ってオリジナルパッケージのからあげクンを作る体験をできるようにした。
さらに3人の人気ブイチューバーが1日店長となって来店客のアバターとコミュニケーションを取ったり彼女たちの3Dアイテムを販売したりした。メタバースならではの経験を意識した店舗だ。
・タカラトミー
2022年4月、メタバース上の商業施設「そらのうえショッピングモール」にタカラトミーが「トミカショップ」と「プラレールショップ」を出店。リアル店舗を4Kの高画質カメラで撮影しメタバース上にバーチャルショップを構築しているため、実際に店の中を訪れているような感覚を体験できる。
店内には、ジオラマや体験コーナーが設置され、トミカやプラレールがディスプレイされているのが特徴的だ。商品に加えトミカやプラレールにちなんだ文房具や雑貨などのグッズも充実。バーチャルショップから直接、オンラインショッピングができる。
・伊勢丹
伊勢丹では、仮想の伊勢丹新宿店をスマートフォン向け仮想都市空間プラットフォーム「レヴワールズ」に出店。バーチャルの百貨店にはリアルの百貨店と同様に、ファッションやギフト、デパ地下などさまざまなバーチャルショップが入っている。仮想店舗とリアル店舗はつながっており、利用者のアバターがバーチャル百貨店を歩き、気に入った商品は、そのままオンラインショップで購入できる。
不定期ではあるが、リアル店舗にいるスタイリストがアバターを使いバーチャル店舗で接客を行うこともあるという。
メタコマース参入のメリット
メタコマースに参入している企業の具体例を紹介してきたが、具体的にメタコマースに参入するメリットにはどのようなものがあるのだろうか。ここでは、主に新規顧客開拓・コスト削減・接客の質向上の3つから参入メリットを解説する。
新規顧客開拓の可能性
仮想現実(VR)や拡張現実(AR)を駆使した独特のショッピング体験は、従来のオンラインショッピングでは実現できないインタラクティブ性とエンゲージメントを顧客に提供する。例えば、メタバース内でのライブイベントや限定商品の展示などは、参加者に新たな購買動機を刺激する可能性がある。
メタコマースは、特に若年層やデジタル先進者に魅力的なプラットフォームであり、日本に留まらず世界を相手に事業を展開できるため、海外の顧客を開拓できる点も魅力だ。これらのすべてが、企業は従来市場で触れられなかった顧客層開拓を可能にする。
コスト削減
メタコマースでは、物理的な店舗を必要としない。そのため、家賃や施設の維持管理費用を大幅に削減できる。さらに、デジタル商品やバーチャル体験を販売する場合、在庫コストや物流コストがほぼゼロだ。
これらのコスト削減効果は、特にスタートアップや小規模事業者、さらに新規事業を開拓したい企業にとって低コストでビジネスを展開しやすくなり、資金回転率の改善が期待できる。
接客の質向上
メタコマースでは、AIや機械学習を活用したカスタマーサポートが可能だ。近年の生成AI技術によって、より適切な接客が可能となってきた。そのため「顧客一人ひとりのニーズに合わせパーソナライズされた接客が実現可能な環境に整ってきた」といえる。
これらの技術を活用することで、顧客がアバターを通じて店舗を訪れた際、好みや購買履歴に基づいた商品推薦や、バーチャルコンサルタントによるリアルタイムの問い合わせ対応が可能だ。それにより、従来のオンラインショッピングよりも、顧客のショッピング体験はより充実し、満足度が向上する可能性が高まる。