この記事は2023年11月8日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「ユニリタ【3800・スタンダード】独立系クラウドサービス企業」を一部編集し、転載したものです。

企業のデータ活用やシステム運用を支援
顧客本位でソフトからクラウドへ軸足移す

ユニリタは世のDXを追い風に成長を続ける、ソフトウェア開発・クラウドサービス・コンサルティングなどを展開する独立系IT企業。23年3月期連結売上高は115億4900万円と過去最高を達成した。今中期経営計画期間は、プロダクト開発・販売型からクラウドサービス中心のビジネスモデルへと大きく舵を切る。

「ユニークな発想」と「利他の精神」を社名の由来とする同社の北野裕行社長に話を聞いた。

▼北野 裕行 社長

ユニリタ【3800・スタンダード】独立系クラウドサービス企業
(画像=株主手帳)

データ活用関連に大きな強み
生保や金融機関で幅広く採用

同社は大手企業を中心に1700社以上の顧客基盤を持ち、「プロダクトサービス」「クラウドサービス」「プロフェッショナルサービス」の3つのセグメントで事業を展開している。

売上の約4割を占めるのがプロダクトサービスだ。顧客企業の業務自動化や帳票出力業務などを、ソフトウェアやクラウドサービスで支援する。主力製品のひとつ「A─AUTO」はジョブ管理ツールで、たとえば業務が終了した夜間に自動で集計や請求書の印刷などを行うことができる。これまでは夜の間にたまった膨大なデータを朝出勤した社員が振り分けて、集計処理などをする必要があったが、同ツールを活用することで、大幅に業務短縮することが可能になった。実際に生保や金融関係で幅広く使用されているという。

また大企業が基幹システムとして採用してきたメインフレーム(MF)と呼ばれる大型コンピュータ向けのサービスも展開。クラウド移行が進む現在でもMFを使う企業は多く、堅実に売上・利益を確保している。

「お客様先にある汎用的な課題を、ソフトウェアやサービスを開発して解決しています。当社はデータ解析や運用・活用を得意としていますので、各種の自動化ツールで企業のDXに貢献しています」(北野裕行社長)

同社が成長事業と位置づけるのが、売上の約3割を占めるクラウドサービス。「IT活用」「事業推進」「社会課題」の3つのカテゴリでサービスを提供する。中でもデータ活用、サービスマネジメント関連が大きく伸びる。

「最近、自動車メーカーが新車のサブスクを展開しているように、一般顧客と直接つながるサービスにシフトする企業が増えている。サービスをより早く適切に提供するため欠かせないのが、データの活用なのです。当社は長年に渡り、システム間のデータ連携を手掛けてきましたので、我々の強みが生きる分野だと思っています」(同氏)

売上の3割を占めるプロフェッショナルサービスでは、企業に向けたコンサルティング、システム運用アウトソーシング、システムインテグレーションなどのサービスを提供している。

メインフレーム向けで成長も
ソフトは自社製作へと転換

同社は1982年に、ビジネスコンサルタント社(以下BC社、非上場)が設立したスリービー社に端を発する。93年、BC社子会社のビーコンITが担当していたITシステム運用関連の事業を継承。メインフレーム向けのパッケージソフトでIBM、日立など強力なライバルと互角に戦い、多くの大企業を顧客としてきた。当時は海外のソフトウェアも輸入・販売していたが、会社の方向性を大きく変える出来事があった。

「ドイツのあるデータベースソフトを当時のビーコンITが持ち込んで販売し、国内で大きなシェアを持っていました。そこに版権を持っているドイツ企業が乗り込んできて、販売と保守の権利をすべて取られてしまったのです。そこで、全部社内で作ったものを提供するように切り替えました」(同氏)

その後は多数の顧客のニーズをリサーチし、運用自動化、帳票、ITサービスマネジメントの3つの領域における自社製品の開発と、販売、サポートを展開。2006年にはジャスダックに上場した。15年にはビーコンIT社と合併し、データ活用事業を取得するとともに、ユニリタに社名を変更し新しいスタートを切った。

プロダクトをクラウドへ移行
行政のDX向けも推進

21年5月、同社は3カ年中期経営計画を発表。24年3月期までに売上高115億円、営業利益率7・8%を計画している。

重要戦略はサービス提供型事業の創出と、カテゴリ別戦略によるクラウドサービス事業の拡大だ。将来的なメインフレーム市場の縮小を見越し、プロダクトをクラウド移行して月額使用料などによるストックビジネス化をはかる。

クラウドサービス事業で注力するカテゴリの1つがソーシャルクラウドだ。地方のバス事業者やリゾートビジネスを対象に、人流データの取得、解析サービスなどでDXを支援する。

「アフターコロナで人の移動を促進するためのDX投資が各地で進み、当社にも引き合いが増えている。それで集まってきたデータを街づくりに活かしたい。企業向けにやってきたことを行政にも作っていく」(同氏)

今中期経営計画期間中には製品のサービス化や新サービス開発、人材へ29億円の事業投資を行い、次の3年間に備える。

「IT企業の中には、巨額の投資をして一気に大量の顧客を獲得してスケールアップを目指すところもあります。しかし我々はお客様1社1社としっかり信頼関係を作っていきたい。それが長く継続できる企業の原点だと思っています」(同氏)

「ユーザ会」と「システム管理者の会」を主催

ユニリタは顧客との信頼関係も重要視してきた。「ユーザ会」はユーザ企業の社員たちが立場を超えてオープンな交流と若手育成を目指す会で、40年以上の歴史を持つ。会員数は247社(9月14日現在)。また日本最大規模のシステム管理者ネットワーク「システム管理者の会」も同社が運営。会員数は7月時点で1万8,338名、企業数は355社を数える(2023年9月時点)。どちらも、システムマネージャーやシステム運用者の地位を上げたいという思いが込められている。

ユニリタ【3800・スタンダード】独立系クラウドサービス企業
(画像=株主手帳)

2023年3月期 連結業績

売上高115億4,900万円10.6%増
営業利益9億1,500万円32.1%増
経常利益11億3,200万円36.7%増
当期純利益7億5,200万円44.1%増

2024年3月期 連結業績予想

売上高121億5,000万円5.2%増
営業利益9億2,000万円0.4%増
経常利益10億5,000万円7.3%減
当期純利益8億円6.3%増

※株主手帳23年11月号発売日時点

北野 裕行  社長
Profile◉北野 裕行 社長(きたの・ひろゆき)
1970年10月生まれ、岡山県出身。94年近畿大学商経学部卒業後ビーエスピー(現 ユニリタ)入社。2012年執行役員就任、営業本部担当役員として全社の営業を統括、子会社のコンサルタント会社社長も兼務。14年取締役就任。15年からの西日本事業部長時代には同事業部の分社化を企画し17年に実現。17年代表取締役 社長執行役員就任(現任)