丸山優太郎
丸山優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している

財布の中でかさばる500円玉ですが、おつりでもらうたびに貯金箱に投入する「500円玉貯金」、実は大変効率の悪い貯蓄方法です。本稿では、500円玉貯金の問題点と代わりにおすすめの資産形成商品について解説します。

目次

  1. 500円玉貯金はなぜ意味がないのか
  2. 30万円分の500円玉の両替手数料は?
  3. 500円玉貯金で30万円貯めるのに何年かかる?
  4. コツコツと資産形成するのにおすすめの投資3選

500円玉貯金はなぜ意味がないのか

500円玉貯金は意味ないって本当?その理由を具体的に解説
(画像=guttyphoto/stock.adobe.com)

500円玉貯金は、買い物などで出た500円玉をついでに貯めるといつの間にか大きな金額の貯金になる点がメリットです。手軽にできる貯蓄方法ですが、一方で「500円玉貯金は意味がない」という人もいます。これは、以下の6つの理由が考えられるからです。

・500円玉がいつ余るか予想できないから
・貯めている間は無利息で「死蔵」になる
・タンス預金と同じで盗難リスクがある
・ある程度金額が貯まると使いたくなる
・両替するのに手間がかかる
・キャッシュレス時代には向かない貯蓄方法

500円玉がいつ余るか予想できないから

基本的に500円玉貯金は、いつまでにいくら貯めると目標を立てて行うものではありません。買い物したときにおつりで手に入ったら貯金していくため、ある種の偶然性に依存します。そのため「何年後に旅行する」など期間が決まった目標がある場合には向いていません。

貯めている間は無利息で「死蔵」になる

500円玉貯金は、銀行預金と違い貯めている間に利息がつかず、貯金箱の中で死蔵することになるため、資金運用としては得策ではありません。一般的に100円ショップなどで売っている500円玉専用の貯金箱は、おおむね満杯で30万円になるように設計されています。つまり30万円貯まるまで長期間無利息の積立貯金をするのと同じことになるため、非常に効率が悪い貯蓄方法といえるのです。

タンス預金と同じで盗難リスクがある

500円玉貯金は、自宅にある貯金箱を使って貯めていくため、盗難リスクがあります。なかには、お釣りが手に入ったときすぐ貯金できるように、デスクの上など目立つ場所に置いておく人も多いのではないでしょうか。もし貯金箱を置きたいのであれば、カモフラージュして自分しかわからない場所を選ぶなどの工夫が必要です。

ある程度金額が貯まると使いたくなる

蓋がついているタイプの貯金箱の場合は、使いたい衝動に駆られてしまうこともあるでしょう。500円玉は20枚あれば1万円と、ある程度大きな金額になるため、買いたい家電があるときなど貯金箱を開けて貯まった500円玉を安易に使ってしまう可能性は十分にあります。

両替するのに手間がかかる

10万円を貯めて旅行することを目的にしている場合、500円玉なら200枚必要です。貯まっても500円玉のまま旅行会社へ持参するわけにいかないため、一度銀行口座に入金する必要があります。この場合、金融機関によっても異なりますが、自分名義の口座に入金すれば一定枚数までは手数料がかかりません。

キャッシュレス時代には向かない貯蓄方法

日本社会は、キャッシュレス時代に突入しており、買い物の支払い方法は現金からクレジットカードや電子マネー、QRコード決済などのキャッシュレスへ移行が進んでいます。そのためキャッシュレス決済をメインとしている場合、500円玉が手に入る機会も減ることになるため、貯金箱が満杯になるのにかかる期間も長くなります。

30万円分の500円玉の両替手数料は?

30万円用の500円玉貯金箱で貯める場合、枚数にすると600枚です。30万円分の500円玉を1万円札に両替する場合、銀行ごとに決まっている手数料がかかります。

例えば、三菱UFJ銀行の円貨両替手数料は600枚の場合、1,540円(税込)です。専用カードを使って両替機で両替した場合でも800円(税込)かかります。窓口を利用する場合、何日かに分けて口座に入金すれば無料にできる場合もありますが、600枚すべて無料で入金するには数日かかるケースもあるので、手間をかけたくない人は両替を利用するしかありません。

<600枚を1度に両替する場合の手数料>

三井住友銀行三菱UFJ銀行みずほ銀行
窓口1,540円1,540円
(口座があり、1日1回10枚までであれば無料)
1,320円
(口座があり、1日1回10枚までであれば無料)
両替機800円
(キャッシュカードがあり、1日1回10枚までであれば無料)
800円800円
※2023年11月17日現在

ただし、ATMを利用して入金する場合は異なります。三菱UFJ銀行の場合、硬貨入金は1回100枚までで、1日の上限入金回数などはなく無料で入金可能です。つまり回数を分ければ1日で600枚(6回入金)でも無料となり、数日かけないで入金ができます。

500円玉貯金で30万円貯めるのに何年かかる?

次に期間の問題も考えなくてはなりません。500円玉貯金で30万円を貯めるのにどのくらいの期間かかるのでしょうか。

30万円貯まるのに25年かかる

近年は、キャッシュレスで支払う機会が増えたため、500円玉がいつ手に入るかはわからない時代です。例えば毎月2枚手に入った場合で計算すると年間24枚(1万2,000円)貯まり、30万円(600枚)貯めるには25年(600枚÷24枚)かかる計算です。25年も貯金箱に眠らせておくことは、あまり現実的とはいえません。

毎月1,000円を20年間積み立てしたケースのシミュレーション

一方、500円玉貯金ではなく金融商品で毎月1,000円を利率3%で20年間積み立てた場合をシミュレーションしてみましょう。計算の結果、複利運用を行った20年後の積立額は約32万8,302円となり、約8万8,302円の収益を上げることが期待できます。20年間の収益機会の損失は、予想以上に大きいことが理解できるのではないでしょうか。

毎日1枚貯めると年間で18万円に

意識して毎日1枚500円玉を貯金できれば、年間18万2,500円(500円×365日)で貯まり、2年弱で30万円に到達します。「30万円貯まったら本格的に資産運用を始める」という考え方もありますが、毎日買い物で500円玉が手に入るわけではないため、現実的には困難な目標といってよいでしょう。

毎月1万5,000円を5年・10年・15年・20年間積み立てしたケースのシミュレーション

500円玉貯金ではなく、単純に毎月1万5,000円を積立投資したケースを考えてみましょう。4パターンの期間で積立投資した場合の収益をシミュレーションすると、期間別に以下のような結果となります。利率は、3%複利で運用したものとして計算します。

積立期間積立総額最終積立金額収益金額
5年90万円約96万9,701円約6万9,701円
10年180万円約209万6,121円約29万6,121円
15年270万円約340万4,590円約70万4,590円
20年360万円約492万4,530円約132万4,530円

500円玉貯金で月1万5,000円、20年間積み立てた場合、積立総額は変わりませんが利息や運用益は得られません。投資していれば得られるはずだった収益を考えると、500円玉貯金がいかに非効率かということが理解できるのではないでしょうか。

コツコツと資産形成するのにおすすめの投資3選

500円玉貯金が非効率と気づけたあとは、それに代わる資産形成の方法を探さなければなりません。基本的に資産形成は、長期にわたって行うため、コツコツと投資できる商品で運用するのが適しています。代表的な投資商品として以下の3つがおすすめです。

・投資信託
投資信託は、株式や債券の運用をプロに任せ運用の結果得た収益のなかから分配金(ファンドによる)を受け取る金融商品です。しかし、個別株のような短期間での急騰は望めません。平均利回りは、3~10%程度が目安といわれています。投資信託を選ぶ際は、分散投資になるファンドを選ぶことが前提です。

例えば日経平均やTOPIX(東証株価指数)、米国のS&P500などの指数に連動する「インデックス投資信託」は分散投資になるため、適しています。指数採用銘柄で構成されているため、個別株の暴落に影響されることがありません。指数全体を買うようなイメージとなるため、長い目で見てファンドの成長が期待できます。

・安定配当株
個別株に投資するなら安定配当株がおすすめです。上場銘柄のなかには、業績が安定して利回り4~5%程度の高配当を実施している銘柄が多数あります。

特に安定配当株の場合、銘柄によっては毎年増配が続くケースがあり、一度買ってそのまま保有すれば毎年利回りが高くなっていくのがメリットです。複利運用には、もってこいの投資先といえます。ただし安定しているとはいえ、全体のマーケット次第では大きな値動きをする可能性がある点も忘れてはいけません。

投資信託と株式は、NISA・iDeCoの制度を活用することでさらに効率的に資産形成が見込めます。

・不動産クラウドファンディング
不動産クラウドファンディングは、インターネット上で運営事業者が募集する不動産ファンドに出資して、運用収益のなかから分配金を受け取る投資商品です。原則単一の不動産が対象になるため、現物不動産に近い感覚で投資できます。

不動産の評価額が下がっても、決められた範囲の損失を事業者が優先して負担する「優先劣後方式」や、空室保証で決められた家賃収入を確保できる「マスターリース契約」など投資家保護の仕組みが用意されている傾向です。そのため損失を被る可能性を下げながら、予定分配金利回り3~8%程度と高いローリスク・ミドルリターンの投資が期待できます。

なお1万円の少額から投資できることはメリットですが、売買市場がないため流動性が低い点はデメリットです。

3つの投資のうち投資信託と安定配当株投資は、安定運用が期待できるといっても値動きがある以上、下落する可能性は常にあります。「値動きがない商品のほうが安心できる」という人は、不動産クラウドファンディングの比較サイトにアクセスして募集中の案件を閲覧してみてはいかがでしょうか。

※本記事は2023年11月17日現在の情報を基に構成しています。紹介した投資商品は一例ですので、参考程度にお考えください。

(提供:YANUSY

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