1964年生まれ、親の仕事の都合で幼少期をヨーロッパで過ごす。慶応義塾大学卒業後、1990年に兼松に入社。長年電子・デバイス分野の営業に携わり、フランス、アメリカに駐在。
2019年より執行役員に就任後、兼松ドイツ会社 兼 欧州会社、米国会社 兼 南米会社で社長を歴任し、現在は人事担当役員。長年の海外経験から重要性を実感したDE&Iを社内で推進中。
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貴社のこれまでの事業変遷と組織拡大の沿革
弊社は1889年創業、今年で135年の歴史を誇る商社です。創業当初は主にオーストラリアから羊毛の輸入を行う会社でしたが、その後ビジネスを拡大し、総合商社へと成長してきました。1990年代には多角化経営を見直し、強みを持つ分野に事業の選択と集中を実施、財務基盤の改善と強化を図りました。現在では、電子・デバイス、食料、鉄鋼・素材・プラント、車両・航空の4つの事業を主軸とし、各事業を通じて社会に貢献しています。また、2013年以降は攻めの経営へシフトし、専門性の高い分野でのM&Aや事業拡大を実施して参りました。この結果、2023年3月期の決算では、過去最高益を更新しました。
我々は、2018年4月~2024年3月の6カ年中期ビジョンで、従業員満足度(ES)の向上を重点施策のひとつとして取組みを進めてきました。具体的には、2018年・2021年に従業員の声を把握するためにエンゲージメントサーベイを実施し、その結果をもとに、従業員がより業務に集中できる環境を整えるための各種施策を行いました。これには、新しい働き方を提供するサテライトオフィスの導入や、健康推進室の設置、研修制度の充実などが含まれます。研修制度では、新たなビジネスを創造する経営人材の育成を目的として、従来の研修制度を強化・体系化した「兼松ユニバーシティ」を、2019年より開講しました。また、在宅勤務やフルフレックス制度を導入することで、労働環境をより柔軟にし、「従業員の自律的な働き方の尊重」と「会社業績の向上」を両輪で実現することを推進しています。
2022年には東京本社の移転という大きな変化がありました。それまでのオフィスは駅から徒歩10分強の距離で、特に夏の暑い日は通勤が大変でしたが、新しいオフィスは東京駅の目の前と、通勤の負担が大幅に軽減されました。さらに、オフィスの形態もABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)を採用し、各々が自由にその日の業務や気分に合わせた席を選べるようにしました。例えば、ライブラリー、集中ブース、グループワーク用スペース、カフェエリアなど、さまざまな形態を用意しています。これにより業務効率の向上に加えて、従業員一人ひとりが、主体的に仕事に取り組む姿勢を生み出すことを意図しています。
これらの変化により従業員の働き方が大きく変わり、フレキシブルな働き方が可能になりました。また、2022年からは、地球温暖化対策および環境への配慮のため“季節・気候に応じた装い”で勤務すべく、新しい服装ルールも導入しています。これにより、より自由度の高い働き方が可能になり、従業員が快適に業務に取り組める環境を整えることができました。
これまでぶつかってきた組織課題
過去にはいくつもの組織課題に直面してきました。特に我々が課題として取り組んできたものには、エンゲージメントサーベイから見えてきたポイントを中心に、経営陣と従業員のコミュニケーションの活性化、リーダーシップの強化、従業員の能力開発、デジタルトランスフォーメーション(DX)への対応などがあります。
2018年・2021年に実施したエンゲージメントサーベイにおいて、“働きやすさ”の向上を目的として取り組んできた打ち手の効果が数字として見えてきた一方で、個人・組織がより果敢にチャレンジできるような風土醸成が課題として見えてきたためです。 先ほどご紹介したオフィスの移転とそれに伴うフリーアドレス制度の導入などは、そうした新たな課題への打ち手として取り組んできた施策の1つになります。2024年の夏頃には、3回目のエンゲージメントサーベイを予定していますので、これまでの取組みの効果を測定するとともに、引き続き新たな課題への取組みを進めていきます。
貴社が考える、今の時代に必要な従業員との向き合い方
これからは多様性およびDXによる成長を目指すことが大切だと考えています。組織を成長させるために、従業員一人ひとりがやりたいことや、目指すべきものを大切にして働くことができるように環境を整えて、機会を提供することが肝要です。 後ほど詳しくご説明しますが、従業員の意見を集め、それを事業の提案として反映させるような環境を整えています。それが最終的にビジネスになっていくことが重要だと考えています。 これらの取組みについては、企業文化や意識の改革も重要な課題のひとつと考えています。
従業員の価値(人的資本)向上に向けて取り組んでいることや、これから取り組もうと思っていること
先ほども申し上げた通り、弊社は個々の従業員の力が組織の力となり、それが組織全体としての業績に結びつくと考えており、個々の従業員が自分の力を最大限発揮できるような環境を整えることを重視しています。 そのため、先ずはエンゲージメントサーベイから見えてきた課題に対して、経営陣が直接コミュニケーションを取り、意思疎通を図るための取組みを進めるとともに、DXの更なる推進にも注力していくことが大事であると考えています。
経営陣と従業員のコミュニケーションの活性化のための具体的な施策として、例えば、チャレンジングな企業風土醸成のため、新たなビジネス創出を推進する取組み「ヒトツブクラブ」を2022年から開始しました。これは、役職や年次、部署などの垣根を越え、自主的に集ったメンバーが、参加型イベントやチャットを通じて新事業設立のためのアイデア創出・案件推進を行うものです。これまでに、他企業の経営者を招いた講演・意見交換会や、起業した元社員との「アルムナイ座談会」といった様々なイベントを行っています。 他にも、有志の従業員と社長が直接対話を行いイノベーション創出に向けて議論する場・機会をつくる取組みなども行っております。
DXの更なる推進のための具体的な取組みとして、DX人材の育成を目的にデジタル技術を扱うグループ内企業との人材交流を行い、相互の知識や経験を共有することや、社員のITパスポート資格取得補助を行ったりしています。
こうした取組みの大前提として、従業員が心身ともに健康であることも大事であると考えていますので、健康経営にも力を入れ、社内診療センターや相談窓口の設置、定期ストレスチェックはもちろんのこと、24時間相談可能なチャット型医療相談窓口を設けたり、社内カフェで野菜摂取強化キャンペーンを開催したりと様々な取組みを行っています。
今後の展望と従業員への期待について
改めてとなりますが、我々は個々の従業員の成長と幸福を尊重する価値観が重要だと考えています。この信念によって相乗効果が生まれ、会社全体の成長につながると確信しています。そのために従業員の能力向上を促すための多様なプログラムを提供したり、新たなビジネスアイデアを創出するための場を提供するなど、一人ひとりの成長を支える施策や取組みを実施しております。また、従業員一人ひとりが掲げる個々の目標や理想像を尊重し、成し遂げたいことや在りたい姿を大切にすることが、弊社の成長に寄与すると信じています。