この記事は2023年12月13日に「The Finance」で公開された「キャピタルゲインとは?投資メリットやインカムゲインとの違いと税金についてわかりやすく解説」を一部編集し、転載したものです。


本稿では、株式や債権などの保有している資産を売却することによって得られる「キャピタルゲイン」について、事例を交えてわかりやすく解説します。

目次

  1. キャピタルゲインとは?
    1. (1)キャピタルゲインのメリットとは?
    2. (2)キャピタルゲインのデメリットとは?
    3. (3)キャピタルゲインに向いている人とは?
  2. インカムゲインとは?
    1. (1)インカムゲインのメリットとは?
    2. (2)インカムゲインのデメリットとは?
    3. (3)インカムゲインに向いている人とは?
  3. キャピタルゲインとインカムゲインの違いとは
  4. キャピタルゲイン・インカムゲイン両方が対象の投資種別
    1. (1)株式投資
    2. (2)投資信託
    3. (3)不動産投資
    4. (4)FX取引
  5. キャピタルゲインが対象の投資種別
    1. (1)暗号資産(仮想通貨)
  6. インカムゲインが対象の投資種別
    1. (1)普通預金/定期預金
    2. (2)ソーシャルレンディング
  7. キャピタルゲインにかかる税金
    1. (1)確定申告について
    2. (2)課税のタイミング
  8. まとめ

キャピタルゲインとは?

住友生命「Vitality」をベースとしたWell-being実現に向けて ~住友生命のWaaS(Well-being as a Service)エコシステム戦略~
(画像=oneinchpunch/stock.adobe.com)

キャピタルゲインとは、株式や債権などの保有している資産を売却することによって得られる売買差益のことです。たとえば100万円の株式を購入し、120万円で売却した場合は、差額の20万円がキャピタルゲインになります。
あらゆる資産でキャピタルゲインを得られる可能性はあり、不動産や金などの売買で得た差益も対象です。
一方で、購入価格から売却価格で損失が発生した場合には「キャピタルロス」と言われます。

(1)キャピタルゲインのメリットとは?

キャピタルゲイン最大のメリットは、大きな利益を期待できることです。後ほど解説する「インカムゲイン」と比較すると、値動きの大きい銘柄が投資対象となるため、短期間で3倍の利益になったなどハイリターンを期待できます。
さらに元手が少ない状態で運用を始められるため、資産形成を有効的に行えます。

(2)キャピタルゲインのデメリットとは?

キャピタルゲインはハイリターンであるがうえに、ハイリスクでもあります。基本的には長期保有を前提としていない投資スタイルになるため、いきなり株価が暴落してしまった場合などに、大きな損失を被ることも考えられます。
たとえばリーマンショックや新型コロナウイルス感染症の拡大など、想定できない一過性の現象に左右されてしまうなどです。リスクとリターンについて、適切な理解と運用が求められます。

(3)キャピタルゲインに向いている人とは?

資産運用で多少のリスクを取ってでも、大きなリターンを狙いたい人は、キャピタルゲインに向いています。また、少ない元手で始められるため、これから資産形成を行いたい人にはおすすめです。
また、一定の資金があり、株式の売買に余裕がある人やリスクを取ったことによる損失への許容度が高い人も向いていると言えます。

インカムゲインとは?

インカムゲインとは、資産を保有している間に継続して得られる収益のことです。キャピタルゲインとは異なり、資産を長期間保有することに向いている運用方法です。銀行預貯金の利子や株式の配当金、株主優待、投資信託の収益分配金などが、インカムゲインに該当します。

(1)インカムゲインのメリットとは?

インカムゲインは資産を保有している間は、定期的に収入を得られます。そのため、長期的に安定した収入を得られるのがメリットです。
信用力の高い債権や業績が安定している企業の株式などを保有することで、金額が大きく変動することなく、安定した収益が見込めます。また、株式の売買が必要になることもほとんどないため、投資活動の時間が少なくても運用が可能です。
得られる金額はキャピタルゲインと比較すると低い場合も多いため、ローリスク・ローリターンの運用と言えます。

(2)インカムゲインのデメリットとは?

短期的に大きな利益を得る運用方法ではないため、1回で得られる利益は小さくなります。大きな利益を得たい場合には、相応の元手が必要なことはデメリットと言えるでしょう。
たとえば株式の配当利回りが2%だった場合、50万円の投資金額でようやく1万円の利益になります。他にも元本がマイナスになってしまうこともあるので、分散投資などの対策が必要です。

(3)インカムゲインに向いている人とは?

売買する機会が少なく、長期保有を前提としているため、投資活動に多くの時間を割けない人には向いている運用方法です。値動きに一喜一憂しない運用方法になるため、頻繁に市場を確認する必要はありません。
さらに利益の幅は小さいですが、長期的に安定した収益を得られるため、投資リスクを抑えて資産運用を行いたい人には向いていると言えます。

キャピタルゲインとインカムゲインの違いとは

キャピタルゲインとインカムゲインの違いは、以下のように分けられます。

キャピタルゲイン インカムゲイン
金融商品例 値動きが大きい商品
アクティブファンド
国債
安定配当ができる株式
利益を得る方法 資産の売却 資産の保有
保有期間 短期 長期
リスクとリターン ハイリスク・ハイリターン ローリスク・ローリターン
メリット 大きな利益が期待できる
元手が少なく始められる
継続的に安定した利益が期待できる
少ない投資活動時間で運用ができる
デメリット 予期できない一過性の現象に左右される
損失が大きくなる可能性がある
大きな利益は期待できない
元本がマイナスになるリスクがある

それぞれの運用方法やリスクやリターンについて理解し、自分が投資を行う目的や考えている投資スタイルに合わせて資運用方法を決めていくことが大切です。
また、メリット・デメリットについても運用前に理解をしておくことも大切です。リスクの許容範囲などを十分に留意しておくことで、撤退する条件などが決められ、損失を最小限に抑えた運用が行えます。

キャピタルゲイン・インカムゲイン両方が対象の投資種別

(1)株式投資

株式投資は、所有している株式の株価の変動を見ながら投資を行うものです。株式の売買によって利益を得ると、インカムゲインになります。なお、株式投資で株式を購入すると配当金が支払われますが、この配当金はインカムゲインに該当します。

購入した株価よりも高い株価で売却すれば利益が確定するため、短期的な売買を行うことも可能です。株式投資は社会全体の景気や企業の業績によって変動するため、タイミングによっては投資リスクを背負う手法でもあります。

(2)投資信託

投資信託は、投資信託運用会社がさまざまな投資家から資金を集め、資産運用の専門家が運用する金融商品のことです。対象の商品は株式から社債、デリバティブ取引などが挙げられます。
基本は満期まで保有する長期保有を前提としていますが、運用益が出た際に途中で売買した場合には、キャピタルゲインの対象となります。

なお、2024年1月からは2022年12月23日に閣議決定された「令和5年度税制改正」に基づき、家計の資産を貯蓄から投資へと振り向け資産所得を増やすことを目指した「新NISA」が開始となります。先述の株式投資・投資信託も「新NISA」の非課税投資対象商品に含まれるため、投資の機会が増えることが予想されます。「新NISA」の概要や変更点はこちらの記事で詳細を解説しています。
「新NISA」7つの変更ポイントと従来制度との違い

(3)不動産投資

不動産売買によって得た利益はキャピタルゲインに該当します。土地やマンション等の売却などが主な取引です。不動産投資は一度の取引の金額が大きいため、利益も大きくなるのが特徴です。リターンは大きいですが、リスクもその分大きな投資と言えます。

一方、購入したマンションなどを運用し、家賃収入や不動産収入などで利益を得ている場合には、インカムゲインに該当します。長期間、適切な運用ができれば、安定的なインカムゲインも得られるのも特徴です。

(4)FX取引

FX取引は為替の変動によって利益を得るため、キャピタルゲインに該当します。FXの特徴は、元本の何倍ものレバレッジをかけ、ハイリターンの利益を期待できることです。
なお、FX取引は通貨を保有していることになるため、スワップポイントと呼ばれる2カ国間の金利差によって発生する利益が発生することもあります。このスワップポイントは、通貨を保有していることによって得られる利益になるため、インカムゲインに該当します。

キャピタルゲインが対象の投資種別

(1)暗号資産(仮想通貨)

ビットコインやイーサリアムなどに代表される暗号資産(仮想通貨)は、短期的な値上がりを狙って取引を行い、その売却益を得る投資手法のため、キャピタルゲインの代表例です。
また、株式投資と同様に「空売り」という手法を用いて、利益を狙うことも可能です。

株式投資とも似ている手法ですが、暗号資産を保有していることによる分配金の配分などはないため、インカムゲインを得られることはありません。一部の暗号資産にのみ、分配金を得られるものもありますが、基本的なインカムゲインはないと考えて良いでしょう。

インカムゲインが対象の投資種別

(1)普通預金/定期預金

普通預金や定期預金は元本保証されている金融商品として取り扱われており、インカムゲインが得られます。
たとえば銀行口座に一定期間預けていると、利息が生じます。この利息はお金を保有していたことによって得られた利益になるため、インカムゲインに該当します。

(2)ソーシャルレンディング

ソーシャルレンディングは、不特定多数の投資家や出資者から資金を調達するインターネット上の仕組みのことです。
ソーシャルレンディングでは、原則として途中解約による売買益の取得が行えません。そのため資産を売却するキャピタルゲインは得られず、保有することによって得られるインカムゲインが該当します。

ソーシャルレンディングについては、以下の記事でも詳細を解説していますので、合わせてご覧ください。
ソーシャルレンディングとは?失敗しないために知っておくべきこと

キャピタルゲインにかかる税金

キャピタルゲインにかかる税率は、投資の方法によって以下のように分けられます。

種別 税率 確定申告
株式投資 20.315% あり
投資信託 20.315% あり
不動産投資 短期譲渡所得(所有期間5年以下):39.63%
長期譲渡所得(所有期間5年超):20.315%
あり
FX取引 所得税:15%
住民税:5%
復興特別所得税(2037年まで):所得税額に対し2.1%
あり
暗号資産
(仮想通貨)
最大税率:55.95%
所得税:45%
住民税:10%
復興特別所得税:0.95%
あり

キャピタルゲインで利益を得た場合には、原則として20%以上の税率がかかると考えて良いでしょう。

(1)確定申告について

キャピタルゲインやインカムゲインで得た利益については、原則として確定申告が必要です。しかし、利用している口座によって確定申告の有無が変わり、不要になるケースもあります。

具体的には、以下の表の通りです。

口座種別 確定申告の有無
NISA口座
特定口座 無 ※「源泉徴収口座」を選択した場合
一般口座

NISA口座は、年間の投資額に制限があることはデメリットですが、上限の範囲内であれば配当金や分配金、キャピタルゲインに該当する売却益が非課税になります。
税金がかからないため、確定申告の必要はありません。

特定口座を開設した際には、「簡易申告口座」か「源泉徴収口座」を選択して運用していきます。
「源泉徴収口座」を選択した場合、取引によって発生した譲渡益にかかる税金は、業者側で天引きを行ってくれます。そのため、確定申告は不要です。
一方で、「簡易申告口座」を選択した場合には、確定申告が必要です。なお、金融商品取引業者等から送付される特定口座年間取引報告書を活用することで、簡単に申告が可能な仕組みになっています。

一般口座では確定申告が必須になります。自ら、年間で発生した損益を計算し、該当する税率に当てはめて税金を納めることになります。

なお、確定申告の詳細については国税庁の以下のページに「確定申告が必要な方」が記載されていますので、合わせて確認してみてください。

参考:国税庁
確定申告が必要な方
株式・配当・利子と税

(2)課税のタイミング

キャピタルゲインの課税タイミングは「資産売却時」です。売却によって得た利益が「譲渡所得」に分類され、申告分離課税と総合課税によって課税されます。
種別によって課される種類が異なり、株式や投資信託は申告分離課税となります。一方で総合課税は、暗号資産の売買によって得た利益などに対して適用され、税率が異なります。
なお、投資では利益を確定させていない「含み益」もありますが、含み益では課税の対象にはなりません。

まとめ

短期的に大きな利益を期待できるのはキャピタルゲインの大きな魅力です。しかし、ハイリターンの裏には相応のリスクがあることを忘れてはなりません。
キャピタルゲインの特徴や、種別によってかかってくる税率などを押さえたうえで、自身に合った資産運用を無理のない範囲で進めていくと良いでしょう。


[寄稿]TheFinance編集部
株式会社セミナーインフォ