本記事は、勝浦 雅彦氏の著書『ひと言でまとめる技術』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

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(画像=vegefox.com / stock.adobe.com)

相手の時間を奪わないために、簡潔な表現を身につける

まず法則をお伝えする前に、大事なお願いをもう一度言います。

勇気を持ってまとめてください。

日本人はとにかく「はっきりと物を言う」ことが苦手です。だから日本語もつい曖昧な表現になり、それを「察する」ことが美徳と考えている人もいます。

しかしこの本の目的は、「相手に敬意を持ち、時間泥棒にならないこと」です。

あなたが勇気を持ってひと言にまとめることが、相手のためにもなるのです。

それでは、実際にひと言にまとめるために必要な7つの法則をお伝えします。

1文にはひとつのメッセージしか入れない

話しているうちに何を伝えたかったのかわからなくなる。

聞いているほうも、最初のテーマを忘れてしまう。

そんな経験が、きっとあなたにもあるはずです。

日本語は「こうちゃく」と言われていて、名詞や動詞などの自立語に、補助となる機能語の助詞や助動詞がくっついているので、「果てしなくだらだらとした文章」が書けてしまいます。

たとえば、

  • 今日は電車で出かける予定でしたが、雨が降り出したので、みんなで行き先を遊園地から映画館にしようと話したところ、ジブリの新作が上映されていることを思い出し、行くことにしました。

この読みづらい文章を分解すると、

①今日は電車で出かける予定だった。
②雨が降り出した。
③行き先を遊園地から映画館にしようと話した。
④ジブリの新作が上映されていることを思い出した。
⑤みんなで行った。

と、5つの内容が入っていることがわかります。

こういった場合は、1文にはひとつのメッセージしか入れないという法則を用いることで、グッとわかりやすくなります。

実際に書き換えてみましょう。

  • 今日は電車で出かける予定。ところが雨が降り出した。ジブリの新作が上映されていることを思い出し、行き先を遊園地から映画館へ変更した。

だいぶすっきりしました。

解説すると、⑤の「みんなで行った」は「目的地を変更する=そこに行く」ことなので省略しています。

ちなみに人が理解しやすい文章の長さは、40字から60字程度と言われています。

ビジネス文章や説明を意図とする文章は、この字数を目安にしてみてください。

ただし、文学や随筆など、作家性の強い文章はこの限りではありません。

たとえばしょうかおるさんのあくたがわ賞受賞作『あかきんちゃん気をつけて』では、

ぼくには、このいまぼくから生まれたばかりの決心が、それがまるで馬鹿みたいなもの、みんなに言ったらきっと笑われるような子供みたいなものであっても、それがこのぼくのもの、誰のものでもないこのぼく自身のこんなにも熱い胸の中から生まれたものである限り、それがぼくのこれからの人生で、このぼくがぶつかるさまざまな戦い、さまざまな苦しい戦いのさ中に、必ずスレスレのところでぼくを助けぼくを支えぼくを頑張らせる大事な大事なものになるだろうということが、はっきりとはっきりと分ったように思えたのだ。

といった具合に、延々と続く文体が特徴です。

これは「わかりづらい」のではなく、字面も含めて「感じること」が目的の文章であり、小説なのでOKです。

言葉はあくまで目的があって、初めて理想的なかたちができます。

主語と述語の位置を離しすぎない

とあるバーで、こんな男女の会話を聞いたことがあります。

「僕はこれまでいろいろな女性と会ってきて、うまくいったときもそうでないときもあったけど、今夜みたいなデートは初めてで、本当に楽しかったし、君とずっと一緒にいたいと思うから、もし怒ったり、嫌がったりしないのであれば、差し支えなければ付き合いたい。どう思う?」

この話がわかりづらいのは、主語と述語の位置が離れすぎているのが原因です。

文章に限らず、人に何かを伝えるときに大事なのは、主語と述語です。

大切な主語と述語は、1文でまとめて冒頭に置いたり、別の文にしたりすることで格段にわかりやすくなります。

「僕は君と付き合いたいんだ。これまでいろいろな女性と会ってきて、うまくいったときもそうでないときもあった。だけど今夜みたいなデートは初めてで、本当に楽しかった。ずっと一緒にいたい。もし君が怒ったり、嫌がったりしないのであればだけど……どう?」

文末には少し感情の揺れを入れてあります。

こんなふうに単刀直入に言われたら、ドキッとするかもしれません。

ひと言でまとめる技術
勝浦 雅彦(かつうら・まさひこ)
コピーライター。法政大学特別講師。宣伝会議講師。
千葉県出身。読売広告社に入社後、営業局を経てクリエーティブ局に配属。その後、電通九州、電通東日本を経て、現在、株式会社電通のコピーライター・クリエーティブディレクターとして活躍中。また、15年以上にわたり、大学や教育講座の講師を務め、広告の枠からはみ出したコミュニケーション技術の講義を数多く行ってきた。クリエイター・オブ・ザ・イヤーメダリスト、ADFEST FILM最高賞、Cannes Lionsなど国内外の受賞歴多数。著書に『つながるための言葉』(光文社)がある。
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