1944年生まれ。慶應義塾大学工学部電気工学科卒業後、日本電子株式会社入社。 1989年、同社取締役米国支配人就任。
1994年、子会社の株式会社日本レ一ザー代表取締役社長に就任。
2018年、同社 代表取締役会長(CEO)に就任。
人を大切にしながら利益を上げる改革で、就任1年目から黒字化させ、現在まで28年連続黒字、10年以上離職率ほぼゼロに導く。2007 年、ファンドを入れずに役員・正社員・嘱託職員が株主となる日本初の「MEBO」を実施。親会社から完全独立、日本では例のないCo-owned Businessとなる。
2011年、第1回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の「中小企業庁長官賞」 など、経済産業省、厚生労働省などから受賞多数。
2021年 長年の中小企業振興への功労として秋の叙勲「旭日単光章」を受章。
著書に「中小企業の新・幸福経営」(日本経営合理化協会、2020年)、「倒産寸前から25の修羅場を乗り切った社長の全ノウハウ」(ダイヤモンド社刊2019年)、「未踏の時代のリーダー論」(日本経済新聞出版社 共著2019年)、「社員に任せるから会社は進化する」~日本版「ティール組織」で黒字になる経営の仕組み~(PHP2018年)、「社員を「大切にする」から黒字になる。
「甘い」から赤字になる 」(あさ出版、2018年)、「ありえないレベルで人を大切にしたら23年連続黒字になった仕組み」(ダイヤモンド社、2017年)、「ビジネスマンの君に伝えたい40のこと」(あさ出版、2012年)など多数。
ダイバーシティ経営に対する取り組み
私たちはバブル崩壊により大きな打撃を受け、経営上の大きな岐路に立たされました。この危機的状況の中で、単に生き残るだけではなく、持続可能な会社になるために会社を根本的に変える必要があり、その答えが「ダイバーシティ経営」でした。
私が当社に参画した当時は、会社の業績が悪化したことで、社員が会社を離れ新しく入ってくる人材もいないという状況でした。まずは採用から伝統的な新卒一括採用の枠を超えて、多様なバックグラウンドを持つ人材への門戸を開くことにより、当社は国際的視野を広げ、革新的なアイデアを取り入れました。このプロセスで、女性、外国人、高齢者、さらには障害者の採用も積極的に進められました。
しかし、ダイバーシティ経営は人事戦略だけでは完結せず、企業文化そのものの変革が求められます。当社では、平等と機会均等を社内文化の核とし、年功序列や性別に基づく差別をなくす方向で努力を重ねています。結果として、従業員はそれぞれの能力と実績に基づいて公平に評価され、多様な才能が花開く環境が整備されています。
また、組織文化の変革には、従来の人事制度の全面的な見直しと、新しい評価制度の導入が不可欠でした。これにより、社員は自分の能力を最大限に活かし、組織全体の生産性の向上に寄与しています。
このような経営革新の過程では、多くの課題と困難が伴いましたが、それらを乗り越えることで、株式会社日本レーザーは持続可能な成長への道を切り開きました。
ダイバーシティ経営の取り組みで苦労した点と、乗り越えるための施策
最も苦労したことは、障害者の雇用についてです。障害者雇用において重要なことは、従業員一人一人のニーズに対応することです。例えば、腎臓病のある従業員が透析のために週3回、5時間の休暇を必要とする場合、企業はこのような特殊な事情に対してどう対応すべきかという問題があります。
当社では、短時間勤務制度を導入し、障害者の特別な事情に応じた勤務体系を設定しています。 重要なことは、障害があるからといって従業員の評価や待遇を下げるのではなく、実際に働ける時間や能力に基づいて公平に評価することです。 具体的には8時間勤務が基準の場合、5時間しか働けない従業員の給与は、その比率に応じて調整されることが一般的だと思いますが、当社では、評価は単に時間に基づくだけでなく、貢献度や成果も含めて評価する仕組みにしています。
また、定年を迎え年金が支給されるような方は、企業としては雇用延長の必要がないかもしれませんが、従業員が働くことを望む場合は、その希望を尊重することが重要です。この企業では、従業員の個人的な事情や家庭の状況を最優先に考慮し、柔軟に対応しています。
弊社は、従来の管理主導の人事戦略から脱却し、従業員一人ひとりのニーズに焦点を当てたアプローチを採用しています。その結果、従業員の働きやすさと生産性が向上し、企業全体の成長に貢献しています。
さらに、私たちは女性や留学経験者などの多様なバックグラウンドを持つ従業員を積極的に採用しています。この取り組みにより、従業員は自分のスキルと経験を活かし、キャリアを築くことができます。
従業員一人ひとりの能力と可能性を最大限に引き出すことに重点を置いています。障害者雇用をはじめとする多様な人材の受け入れにより、企業文化が豊かになり、社会全体の進歩に寄与しています。
従業員の価値(人的資本)向上に向けて取り組んでいることやこれから取り組もうと思っていること
弊社は「ジョブ型雇用」を採用し、特定分野のスペシャリスト育成に注力しています。このアプローチにより、従業員は自己のキャリアパスを明確にし、専門性を深めることが可能です。営業や技術部門の従業員には、関連研修や実践的な業務経験を通じて、専門知識とスキルの向上を図る機会を提供しています。
さらに弊社は、合併や企業買収を通じて入社した従業員の成長も重視しており、彼らが弊社の文化に溶け込み、成長する機会を提供しています。また、海外研修を通じて国際的な視野を持つことも奨励しています。
特筆すべきは、従業員が異なる業務や役割に挑戦することを奨励している点です。例えば、レーザー技術に詳しくない従業員でも、営業や技術部門での勤務機会を得られ、実務を通じてスキルを磨くことができます。これにより、従業員は多岐にわたる経験を積み、将来のリーダーや経営者としての資質を養います。
従業員の貢献度を可視化し、明確な目標と評価基準を設けています。これにより、従業員は自身の業績を把握し、自己成長につなげることができます。
経営陣の課題は、これらの人材育成プログラムを効果的に運営し、組織全体の成長に結び付けることです。弊社では、従業員の能力を最大限に引き出し、会社全体の成長を促進するために、継続的な教育と支援を行っています。
理想とする組織像と従業員への期待について
弊社では、持続可能な成長と理想的な組織運営を目指し、従業員一人ひとりの成長と企業の繁栄を密接に結びつけるための取り組みに力を注いでいます。この取り組みの中核は、従業員の採用から始まります。採用プロセスでは、長期的な視点での人材投資を重視し、慎重な選考を行っています。我々は採用を、大規模な設備投資に匹敵する重要な決断と捉えています。
弊社では、労使間の健全な関係を構築し、長期的な労働関係を維持することを重視しています。これには、社員一人ひとりの成長を支援する組織文化の構築が不可欠です。私たちは、従業員の権利を尊重し、同時に企業の成長に対する貢献を促進するバランスを取ることが重要だと考えています。
また、従業員には、強い当事者意識と健全な危機感を持つことを期待しています。特に、中小企業に見られる団結意識や責任感を、社員全体が共有し、組織の目標達成に向けて一丸となって取り組むことが重要です。これを実現するためには、社内での意識の共有と、協力による目標達成が求められます。
経営者としての重要な役割は、従業員の貢献を正しく評価し、適切に声をかけることです。これは直接的な昇進や給与への反映に留まらず、従業員のモチベーション向上に繋がることから目に見える評価だけでなく、従業員の潜在意識の理解とその活用も重視しています。
- 氏名
- 近藤 宣之(こんどう のぶゆき)
- 会社名
- 株式会社日本レーザー
- 役職
- 代表取締役会長