14-12-06 ZUU Online セレッソ選手流出

シーズン当初に誰が想像していただろうかーー。

11月29日、Jリーグで鹿島アントラーズに敗れたセレッソ大阪はJ2への降格が決定した。今シーズンのスローガン「史上最攻」の名のもとウルグアイ代表FWディエゴ・フォルラン選手をJリーグ史上最高年俸6億円(推定)で獲得、セレッソ大阪生え抜きの日本代表候補である南野拓実、扇原貴宏、山口螢を擁し、シーズン途中には元ドイツ代表FWカカウまで補強しながらのまさかの事態である。

セレッソ大阪はいわゆる「若手育成型クラブ」だ。選手を育成し、高値で売却する。その象徴的な存在がドルトムントの香川真司である。 香川は2012年のドルトムントのリーグ連覇の時と比べると調子を落としているものの、現在でもACミランの本田圭佑と並び、今でも欧州で一流選手として評価されている。 その香川の後を追って 乾貴士(フランクフルト)、清武弘嗣(ハノーファー)、そして柿谷曜一朗(バーゼル)も欧州進出を果たしており、セレッソ大阪の育成に対する欧州スカウトの評価は高い。

来期はJ2に下がってクラブ収入の激減が確実となり、上記選手らの年棒はクラブ経営上重荷となるため、セレッソ大阪が主力選手の放出に踏み切る可能性は高い。

すでにチームに対して不満を露わにしたフォルランの移籍は確定的だ。前出の3人は、一部の報道では J2に降格しても残留するような声も聞こえてきているが年齢も若く (南野/19歳、 扇原/23歳、 山口/24歳)、以前から国内外から高い評価を受けている選手たちだ。他クラブも状況を注視しているだろう。

そこで注目したいのが、欧州クラブの動向だ。日本銀行による金融緩和政策が円安を後押しし、7年ぶりにドル円相場はついに120円に達した。ユーロもほぼ同様に円安に推移しており(10月末から比較すると対ドル7.0%、対ユーロは5.6%円安)、この傾向はまだ続くと予想される。つまり、欧州のクラブからすれば日本人選手はバーゲン状態だ。

J2に降格したため、セレッソ大阪の選手に対しては更に交渉のハードルが低くなっているだろう。また、日本人選手は海外志向が強い選手が多いため、欧州クラブの価格交渉力が強くなる傾向にある。

単純比較は難しいが、2012年に清武は102万ユーロ(当時のレートで1億円)でニュルンベルクに移籍したが、仮に今の為替レートであったならば、約3割オフの67万ユーロで済む計算になる。円安が基調トレンドである現在、より安く買い叩くため、選手たちの移籍は期限一杯まで伸び伸びになる可能性がある。

さらに、香川、かつてオランダ在籍時の本田がそうであったように欧州クラブにとって日本は良質な「仕入先」だ。選手を安く獲得し、高く売却する事で収益をあげることが可能なのである。ドルトムントは2010年7月に香川をたった35万ユーロ(当時のレートで約4,000万円)で獲得した。その2年後、香川はマンチェスター・ユナイテッドに約46倍の1,600万ユーロ(当時のレートで16億円)で売却されている。

その後、今年8月に800万ユーロ(約11億円)で香川を買い戻しているものの、およそ5億6,000万円 の差益を得ているわけだ。

セレッソ大阪にとっても海外への選手放出は悪い話ではない。国内のライバルクラブに放出するよりも、円安により選手売却益は多く出やすくなっており、またファン心理的にも納得しやすいだろう。

一方で、円安の影響により移籍期限終了間際まで決まらない場合、チームの再構築が遅れ、事態はさらに深刻になる可能性もある。また、今シーズン話題になり、動員人数にも大きく貢献した『セレ女』の多くはクラブのファンというよりも、上記選手たちのファンだ。スタジアムを鮮やかに彩った光景は、『桜戦士』たちの移籍とともに散ってしまうのだろうか。今後セレッソの経営陣がどのような判断を下すかに注目したい。

(ZUU online)

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