今年元旦に石川県の能登地方を襲った震災は、地域医療にも深刻な打撃を与えた。そんな震災地にあって、直ちに医療活動を再開したのが恵寿総合病院(石川県七尾市)だ。神野正博理事長は「被災地の医業承継は元通りに戻す復旧ではなく、地域の将来を見すえた復興の視点が必要だ」と話す。
「元通りに戻す」医業承継は難しい
日本記者クラブの会見で、M&A Onlineの質問に答えた。それによると「震災後に能登地方で廃業を決めた医院もある。震災がなくても地元医師の高齢化が進み、後継ぎの子供たちが医者になっていても戻ってこないケースも多い。過疎地の医業承継はなかなか難しく、医師の減少は避けられない」と言う。
より厳しい状況に陥っている被災地の医療を立て直すには「以前と同じ状態に戻す『復旧』では厳しい。これからの人口減少や高齢化などを想定しながら、ある程度は医療機関を集約して地域医療を組み直す必要がある」との見方を示した。具体的には「専門病院は七尾市や金沢市に集約し、あとは地域でかかりつけ医の役割を果たす新しい病院をどう配置していくかを考えるべきではないか」としている。
震災などにより廃業した地域医院のM&Aによる第三者医業承継については、「どこの病院も医師不足に悩んでいる。買収しても医師を常勤させることができないので、なかなか難しいだろう」と見ている。その上で「過疎地の医療体制を立て直すには、医療機関の努力だけでは厳しい。医師の都市部や特定の診療科への偏在を解消する対策に、社会全体で取り組むしかない」と指摘した。
恵寿総合病院は2011年の東日本大震災を受けて、医院本館の免震化や水道水と井戸水による上水の二重化、2カ所の変電所から電力供給を受ける2回線受電などの対策を強化してきた。その結果、震災下でも病院機能の維持が可能に。震災翌日の1月2日から分娩や緊急手術を再開、4日からは通常通りの外来診療を開始した。11日には被災した全病棟を復旧している。
文:M&A Online