楽観視できない日本の財政赤字

では、なぜ日本の国債が信用を維持しているかといえば、国債のほとんどを国内で消化できているからである。つまり、国内で国債を買ってくれる人がいる限り、破綻はしないという理屈である。これを、国内投資家の国債選好志向などというが、決して褒められることではない。というのも国債の運用率がよいので積極的に国内投資家が国債に投資しているというのであればよいが、そうではなく、日本の金融機関が単にリスクをとりたくないので、安易に国債を購入しているにすぎないからである。

国としては、国債を発行すれば、黙って国内金融機関が国債を買ってくれるので、助かることは確かだが、経済成長という観点からは、ある程度リスクをとっていかなければ経済成長はありえない。とはいえ、海外からの国債売りが出たとしても、国内で吸収は可能なので、今回の国債格付けの引き下げは、大きな混乱にはなっていない。ただ、長期的な展望で見ると、楽観視することは危険である。

というのも、プライマリーバランスが、平成26年度でマイナス18兆円にものぼるからだ。プライマリーバランスとは、税収で一般歳出を賄えている状態をいうが、これが赤字の場合、借金が増え続けることになる。一般家庭で例えるなら、給与が20万円しかないのに、家賃や食費等に38万円かかるので、銀行に「18万円貸してください」と言っているような状態である。いくらその人に信用があったとしても、普通なら、銀行はお金を貸してくれない。


行き過ぎた日銀の国債買い入れは民間企業の資金調達圧迫へ

日本は、今そのような状況にあるということを認識しなければならない。ただ、日本の場合、日銀が国債を買い上げてくれるので、いわば、絶対的な保証人がいるようなものである。それであれば、なんら影響はないのかというとそうではない。今後、借金が増大しつづければ、いくら国内での吸収率が高いとはいえ、リスク許容度の限界に達し、金利が上昇する可能性がある。そうすると、円に対する信認も失われるので、インフレが起こり、日銀といえども対応できなくなるおそれがある。

また、国債の格付けは、当該国の他の債券の信用の上限を画するので、民間企業が発行する債券の格付けも下げられることになる。そうすると、債券による資金調達が困難あるいは利率の負担が増大する可能性がある。わが国の資金調達構造は、社債よりも銀行からの借り入れが多い状態ではあるが、資金調達先の柔軟性が失われると借入金の金利にも影響を与える。

したがって、今回の国債の引き下げは、大した影響はないと見る動きもあるが、長期的には民間企業の資金調達に大きな影響を及ぼすおそれがあり、決して軽視するべきではない。

(ZUU online)

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