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3度目の現物株の取引時間拡大見送り

11月25日、東京証券取引所は現物株の取引時間の拡大を見送ると発表した。2000年、2010年に続き、現物株の取引時間拡大見送りはこれで3度目になる。現在、現物株は前場が9時から11時半まで、後場が12時半から15時までの計5時間である。海外の主要市場の取引時間は7~8時間となっており、東証の取引時間は短い。


現物株の取引時間拡大のメリットは

現物株の取引時間を拡大するメリットは、以下の3点と考えられている。

1)取引時間の拡大により取引機会を増やし、取引量の増加が見込める。

特に日中だけではなく夜間にまで取引時間を拡大すれば、会社員等の個人投資家も取引に参加しやすい。

2)上場会社の適時開示の大半が取引終了後の15時以降に集中しているため、適時開示の状況を踏まえた取引が可能となる。

3)海外主要市場の取引時間とオーバーラップする時間帯が長くなり、海外の取引状況をみながら速やかな取引が可能となる。

これらにより東京マーケットの国際的競争力の低下を防ごうという意図がある。


現物株取引時間拡大は容易ではない

東証が取引時間拡大を狙っても東証単独でできるわけではなく証券会社等の協力が必要となるが、証券会社ではコスト、人員を含めた様々な追加負担が発生するため反対意見が根強い。証券会社は取引に応じた手数料収入というメリットを見込むが、かけたコストほどは取引量の拡大は見込めず、むしろ取引時間が分散されてしまい、メリットがあまりないという意見が多い。

実際、取引の主体である機関投資家は1日の取引量が決まっているのがほとんどであるため、取引量の拡大よりは、急落や急上昇といった価格の急激な変化を抑えるメリットの方が強い印象だ。


本当に取引時間の拡大は必要か

取引時間の拡大への反対は特に対面証券を中心に多く挙がっている。取引時間の拡大には証券会社の協力が不可欠だ。その証券会社が取引時間の拡大に協力するインセンティブは取引手数料の増加になるだろう。取引時間拡大のメリットの「適時開示の状況を踏まえた取引が可能」や、「海外の取引状況をみながら速やかな取引が可能」といったものは、主に価格形成に関するものである。取引量の増加に必ずしも通じるものではない。

取引量を拡大し、中国等に奪われている世界での東京マーケットの国際的競争力を増やすのがメインの目的であれば、取引時間拡大のコスト等の負担は各証券会社に負担させず、東証が負担する必要がある。ニューヨーク市場が24時間営業に移行する等、東証以外に競合が出てきた場合は対策を急ぐ必要があるだろうが、そのような競合が出てくるような気配は見られない。


対策は

価格の急落・急上昇を防止するためであれば、PTSを活用すればよい。PTSとは夜間に株式売買が可能な証券会社が開設する私設取引システムである。PTSにはマネックス証券、Kabu.com証券、大和証券等が参入したが、いずれも2011年には撤退している。現在はSBIジャパンネクスト証券とチャイエックス・ジャパンの2社が残るのみとなっている。このPTSに対し、東証が補助金を出す、またはPTS市場の拡大を東証が支援する等の対応をすればコストも少なくて済むだろう。

東証と証券会社の目線が揃わない現状では、東京マーケットの世界的競争力の強化を図るにはまだまだ時間がかかりそうだ。

(ZUU online)

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