総括
FX「緊張の夏、米国成長減速の中パウエル議長登場、パリ燃ゆ」
ドル円=158-163、ユーロ円=171-176、ユーロドル=1.05-1.10
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨最下位(最下位)、株価3位(3位)、ドル円久々の2日連続陰線、5日線下向く。7月相場の流れ」
(久々の2日連続陰線、5日線下向。7月相場の流れ)
ドル円は6月4日以来の2日連続陰線、また6月10日以来で5日線が下向きドル上げのリズムに変化が生じている。
ドル円はデータ通りに上昇した6月と異なり、前回も触れたが7月は伸び悩む。6月上げの7月下げのデータがある。8月はドル上げだ。11月や12月もドルは下げやすいことからして、お盆前やお正月前には
ポジション調整があるようだ。外債の利金の円転もある。輸出は上半期最後の追い込みをかけて年度の収益を確定させたいところ。貿易赤字と外貨投資増の円安の流れは継続だが、季節的なリズムもあり一服する。(さらに詳細は動画でも解説したい)。米金利が低下したからとも言われるが、そういうこととは関係なく毎年ある7月の風物詩。
ただ円の年間順位は最下位、日経平均は円安で強く年初来22.26%高で世界3位。10年国債利回りは1.07%、日銀金融引き締め思惑で利回り上昇も、世界的な金利低下で伸び悩む。
(今週の見どころ)
さて今週は、日銀支店長会議、日銀地域経済報告、日銀と債券市場参加者会合などがある。政策金利引き上げ、国債買い入れ減額の踏み台となる。ただこのところの、日銀短観や5月家計調査では消費は弱い。
円安抑制のための金融正常化で景気回復やリスク選好の金融市場の腰を折りかねない事態も想定したい。
(過度な動きは実需の集積)
財務省はしきりに過度な動きには介入で対処するとしているが、円安を招いているのは貿易赤字という実需、NISAなどの外貨投資、横並びの運用になりやすいか機関否投資家の動きだ。投機筋ではない。
(円安で年金、企業収益、税収、対外純資産が最高。ただ円安が嫌われている)
公的年金の積立金運用を行っているGPIFの2023年度の運用実績は収益率が22.67%のプラスとなり、45兆4153億円の黒字となった。GPIFは、内外の株価の上昇と円安が寄与しているとした。円安で年金、企業収益、税収、対外純資産が最高となっているが、円安を嫌う声が強い。物価の上昇要因が円安にあるとされているからだが、日本の物価は日銀がいうように、まだ2%の安定軌道には乗っていない。海外で大騒ぎしたコロナ禍での10%に近づいた物価と比べれば低く、現在も海外が目指している2%の物価である。円安を急激に抑制すれば、年金、企業収益、税収、対外純資産の純増も消え、再び「失われた20年」のようなデフレ、マイナス成長となってしまうが、ほんとうに、それが日本国民の望むところなのだろう。円安で収益増の公的部門は多いのだから海外が実施してきたようにその収益を還元すべきだろう。
*米ドル「通貨3位(2位)、株価(NYダウ)14位(14位)、成長減速、インフレ低下の流れでパウエル議長登場)」
(ドルはけっして独歩高ではない。それもG7で為替が議題となりにくい要因)
対円でみると分かりにくいが、ドルは日銀の介入以降やや弱い。GWの介入後はドルは12通貨中、9位。先週は最弱であった。年間ではまだ3位だが、円以外の通貨とはドルは小動きでけっしてドルは独歩高ではない。それは米経済指標の弱さ、ゆっくりとしているがインフレが低下傾向にあり、長期金利も低下している。一方株価は、利下げ観測もあり底堅い。
(パウエル議長は慎重だった)
弱い指標が続く。5月の個人消費支出(PCE)価格指数、6月雇用統計、ISM製造業、サービス業、などだ。インフレも5月は前年比で3.4%から3.3%へ低下した。 ただパウエルFRB議長は依然、慎重だ。インフレ鈍化を示す指標に言及し、「われわれが現在確認している水準が基調的なインフレの実状を正確に示しているかどうか理解したい」と指摘。インフレ鈍化を巡り「一層の確信を持ちたい。率直に言って米経済は好調なため、時間をかけて対応できる」と述べた。
(今週もパウエル議長に注目。CPIもあり)
パウエル議長は、今週、米上下院金融サービス委員会で金融政策や経済情勢に関する半期に一度の証言を行う。依然、利下げに慎重な姿勢を示すか、あるいは利下げを示唆するか。 フェドウオッチによると、先物市場は現在、FRBが9月に0.25%の利下げを実施する確率を約72%と織り込んでいる。1週間前は57.9%だった。
また今週は、6月消費者物価が発表される。予想は前年比で3.1%、5月は3.3%。
(成長減速、インフレ低下の流れ)
現在、アトランタ連銀の2Q・GDPナウは1.5%、セントルイス連銀は0.68%と低い。クリーブランド連銀6月CPIナウは3.12%。NY連銀サプライチェーンインデックスは-0.03。成長減速、インフレ低下の流れだ。
(トランプ氏が再選対策)
バイデン大統領とトランプ前大統領の討論会が開催され、バイデン大統領の健康不安が危惧されている。トランプ氏が再選されると過激な主張で内外で混乱が生じる。ただ長く通用するとは思えない。トランプ氏が再選され市場が混乱しても、また現状の市場主義に戻ることを仮定し、悲観的な動きとなれば、株、為替、債券でも逆張りしたい。ちょっと、ソロス氏の再帰論をまねているが、ギリシャ危機で私がギリシャや周辺国の債券を買ったような正常化への逆張りを狙いたい。
*ユーロ「通貨5位(6位)、株価7位(6位)DAX)、ゆっくりと利下げか、フランス情勢は」
(今朝、ユーロ下落、フランス総選挙で左派連合が首位、ハングパーラメント懸念で)
フランス総選挙は左派連合「新人民戦線」が首位に立つ見通しだ。 フランス国民議会(下院、定数577)選挙の決選投票が7日、行われた。調査会社の出口調査によると、左派連合「新人民戦線」が首位に立ち、マクロン大統領率いる与党連合が2位、極右政党「国民連合」は3位。
仏ルモンド紙などの獲得議席予測によると、左派連合が172~192議席、与党連合が150~170議席、国民連合が132~152議席で続いている。
先週のユーロドルは2週連続陽線、日足でも7日連続陽線と強かったが、左派連合が選挙で首位に立ち、議会のハングパーラメント、年金改革反対で財政赤字拡大も危惧される。
(CPI低下、次回政策金利は)
6月のユーロ圏の消費者物価は、前年同月比2.5%上昇した。伸び率は3カ月ぶりに鈍化した。食品などの価格高騰が落ち着く半面、人件費に敏感なサービスは4.1%上昇した。
ECBは6月の理事会で4年9カ月ぶりの利下げに踏み切った。先行きもインフレは2025年末にかけて落ち着くとの想定だが、サービス価格の高止まりなどを踏まえ追加利下げは急がない構えだ。
ラガルド総裁は、インフレ抑制を確信する「十分なデータの収集には時間がかかる」と強調した。次回7月18日の理事会では利下げを見送る公算が大きい。
(今週の指標は)
主だったものは独の5月貿易収支、総選挙後のフランスの新しい政治バランスがどうなるか
(ラガルド総裁の発言詳細)
ラガルド総裁は、ユーロ圏でサービス価格の上昇が続いているものの、6月のインフレ鈍化は正しい方向への一歩になるとの見方を示した。
ラガルド総裁は、ECBが指標に用いているHICPは「正しい方向に向かっている」と言及。ディスインフレの道を「かなり進んでいる」とし、ユーロ圏のインフレ率は1年以内に「2%台前半」に低下し、来年下半期には目標とする2%に達するとの見方を示した。サービスインフレに大きな変化が見られていないことについては、賃金がようやく物価に追いついたことが大きな要因と指摘。モノ(財)のインフレ低下によって部分的に相殺されているとし、最終的には均衡が取れるため、サービスインフレ率が2%まで低下する必要はないと見なしていると述べた。市場では9月と12月に追加利下げが実施されるとの見方が出ている。
(EU議長国のハンガリー首相がロシア訪問へ)
7月からEU議長国を務めるハンガリーのオルバン首相が、7月5日、ロシアを訪れプーチン大統領と会談した。オルバン首相はロシア寄りの姿勢で知られ、報道を受けてEUのミシェル大統領が「議長国にはロシアに関与する権限はない」とけん制するなど波紋が広がっている。7月2日にはウクライナでゼレンスキー大統領と会談し、一時的な停戦を検討するよう促している。
*ポンド「通貨2位(3位)、株価11位(9位)、英国の魅力は」
(ポンド堅調)
ポンドはドルを抜いて年初来2位に上昇した。株価(FT)は強くもなく弱くもなく、年初来6.09%高。10年国債利回りは4.14%で米国より若干低いが、ユーロ圏のどの国よりも高いことは資金を引きつけている
(今週は)
今週は 5月国内総生産、 鉱工業生産 貿易収支などの発表がある
(英国経済見通し引き上げ)
英国総選挙で労働党が圧倒的多数で勝利したことを受け、ゴールドマン・サックスは党の財政計画が景気押し上げにつながると期待し、英国の経済成長見通しを引き上げた。「労働党の財政政策政策が短期的には需要の伸びを若干押し上げると引き続き予想しているため、2025年と2026年の英国のGDP成長率予想をそれぞれ0.1%ポイント引き上げる」と述べた。労働党は議会任期終了までに年間140億ポンドの支出を増やす必要があるかもしれないと推定されている。
(今後1年の賃金上昇率予想を下方修正=中銀調査)
英中銀調査によると、国内企業は今後1年の賃金の伸びが鈍化すると予想している。3カ月移動平均に基づく1年後の賃金上昇率予想が0.3%低下して4.2%となった。これは2022年5月の調査開始以来の低水準となる。企業は今後1年間に販売価格を緩やかなペースで引き上げると見込んでいる。消費者物価の伸びも緩やかになると予想している。
(労働党、経済立て直し、英国の魅力は)
次期首相の労働党のスターマー党首は、選挙運動で与党・保守党の「14年間にわたる経済の失敗」を批判してきたが、低迷する経済を手早く立て直す手法がが次期政権にあるわけではない。
労働党は大規模な増税はしないと公約しており、次期政権の財源は乏しい。スターマー首相は経済成長を阻む障壁の撤廃を進める方針も示しているが、課題は多い。
公共投資の拡大は経済成長に寄与するとみられるが、労働党が掲げる移民の削減は経済成長にマイナスになる恐れがある。
ただフランスや米国ではポピュリズムが台頭しており、投資家は英国の政治リスクが相対的に低いことに魅力を感じ始めている。
そうした認識の変化が最近の英国株のアウトパフォームにつながっていると指摘。「政治的な観点から見ると、英国ははるかに良い状態にあるように見える」と述べた。
*豪ドル「通貨4位(4位)、株価16位(16位)、豪ドル強い。RBAは利上げも検討中」
(豪ドル堅調)
7月第一週は3位、年間でも4位と強い。年間では対円で13%高と強いが、対ドルでは0.9%の下落で、RBAにとって為替相場は問題がないのだろう。ただインフレ高止まりで、高金利が続いているので株価(全普通株指数)は3.07%高と冴えない。10年国債利回りは4.35%でほぼ米国債と同水準。インフレが高くとも海外から債券へ資金が流入するのは、歴史的に財政赤字拡大には厳しい姿勢をとっていることがある。
(強い5月小売売上)
5月小売売上は 前月比0.6%増、予想の0.2%増を上回った。インフレが続いているにもかかわらず、小売売上高は予想を上回ったのは値引きや前倒しセールが効果を出した。
(8月の利上げの可能性は36%程度)
RBA議事要旨(6月18日)では、インフレ抑制のために追加利上げが必要かどうかを検討したが、労働市場の下振れリスクなどを踏まえ金利据え置きを決定した。議事要旨では、現在4.0%のインフレ率を目標の2-3%に抑制するために利上げを検討していたことが明らかになった。「インフレが目標値に戻るのが想定よりも遅れたり、総需要と総供給のギャップが十分なペースで縮小していないと判断された場合にこうした状況になる可能性がある」としている。
その上で、経済が依然としてほぼ想定通りの軌道にあり、インフレ率が2026年に目標水準に戻ると見込まれる中、生産の伸びが軟調で労働市場への下振れリスクがあることから金利据え置きが適切と判断した。
市場は、8月の利上げの可能性を36%程度織り込んでいる。7月末に発表される2Q消費者物価が注目。
(今週の焦点)
今週は、7月ウエストパック消費者信頼感指数、6月NAB企業景況感指数、7月消費者インフレ期待などに注目したい
(豪中関係)
6月は経済関係改善で中国の李強首相が訪豪したが、 中国の習近平国家主席は、より成熟し安定した有益な豪中の包括的戦略的パートナーシップの構築を促進するため協力する用意があると述べた。豪のモスティン新総督への祝電で、中豪関係の健全で安定した発展は両国と両国民の基本的かつ長期的な利益にかなうと同時に、地域および世界の平和と安定、発展、繁栄に資すると述べた。
*NZドル「通貨7位(8位)、株価17位(18位)、インフレ抑制で政策金利は据え置きか」
(NZドルは年間では強くもなく弱くもない)
やや豪ドルに遅れをとる。年間7位。対円では10.86%高、対ドルで2.77%安。10年国債利回りは4.74%と高い。株価(NZ50)は年初来0.21%高と冴えず。
(2Q企業信頼感指数弱い)
2Q企業信頼感は前期からさらに悪化した。 業況全般が「改善する」と回答した企業から「悪化する」と回答した企業を引いた割合はマイナス44%で、前期のマイナス25%から拡大した。高金利が引き続き需要の重しとなった。企業信頼感は2021年3Qからマイナスとなっている。今後1年は金利上昇と不確実性の強まりから国内景気が引き続き減速する可能性を示唆していると分析した。
(今週は政策金利決定、さらにCPI、雇用統計と続く)
NZ中銀は、7月10日に政策金利を5.5%に据え置く予想だが、タカ派的なガイダンスを微調整するためのデータ証拠が不足している。今後、非貿易インフレは2Qに中銀予測ほど減速しないと予想しており、ハト派への転換は少なくとも秋まで延期されるだろう。また、マクロ評価とフォワード ガイダンスに大きな変更が見られる可能性は低い。今回の会合では経済予測の更新は行われず、8月14日の政策発表時に発表される。
焦点は引き続きインフレ、特に非貿易財の固定化と労働市場の動向にある。これら2つのテーマに関して、中銀は7月16日(CPI)と8月6日(雇用統計)に発表されるデータをまだ待っている。
5月の会合で、中銀は金利予測を若干上方修正し、先進国で最もタカ派的な中銀の1つとしての立場を再確認した。新しい道筋は、金利引き上げの確率をやや引き上げ、2024年4Qの平均予測は現在の5.50%に対して5.65%となった。さらに重要なのは、政策金利が2025年3Qより前に5.50%を下回ることはないと予想されていることだ。
(NZドルの変動要因)
中銀のタカ派姿勢は、今夏のNZドル高を支持する重要な論拠であり続けている。NZドルはEUの政治的混乱から距離を置いていることから恩恵を受けることができる一方で、中国関連の感情との相関関係や11月のネイ国大統領選挙でトランプ氏が大統領に当選するという賭けに敏感である。
それでも、過去10日間のトランプにとっての2つの好材料(テレビ討論会と米国最高裁判所の判決)にもかかわらず、NZDドルは上昇している。これは、米国のマクロ経済とFRBの政策期待が依然として米国選挙よりも大きな原動力となっていることを示している。